観ていて酔いが回ってきそうなほど多量な血液噴射、刃物で物を刺すときの切れ味が鋭すぎる音、殴り合いの時に起きるごつごつした響き、わんこそばのように絶え間ない暴力。これほど凄惨な映画は、久しく観ていなかった。
第47回トロント国際映画祭ミッドナイトマッドネス部門に正式出品された『オオカミ狩り』が4月7日より東京・新宿バルト9ほかで全国公開される。主な舞台は、フィリピンに逃亡した極悪犯罪者たちと護送官の刑事を乗せた貨物船「フロンティア・タイタン号」。 それぞれの思惑がこの船の中で交錯し、とてつもない密室サスペンスとなっていく。白目たっぷりの射るような視線で睨みつける全身タトゥーの男、国際手配犯ジョンドゥのすごみも圧倒的だ。いっぽう、ナイフを自在に操るドイルは同じ犯罪者でも寡黙、しかし内に秘めた情念は熱い。息詰まるようなアクションはもちろん、“数十年の歳月の後に目覚めた怪人”の存在に、韓国やフィリピンと大日本帝国との関係に思いを馳せずにはいられなかった。
監督のキム・ホンソンは、2017年にフィリピンへ逃亡した韓国人犯罪者47名の集団送還のニュースから着想を得て、この作品にとりかかったという。出演はソ・イングク、チャン・ドンユン、ソン・ドンイル等。ソ・イングクはこの撮影のために16kg増量したという。さわやかなイメージをかなぐり捨て、悪に徹した快演をみせる。
映画『オオカミ狩り』
4月7日(金)新宿バルト9ほか全国公開
配給:クロックワークス
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