現代社会において、より顕在化してきた“生きづらさ”に焦点を当て、藤井道人(プロデューサー)&山口健人(監督)がタッグを組んで贈る、新たな恋愛ストーリー。生きる世界は一つじゃない。ヒロイン・莉奈の生きざまを通して別の視点を提供する注目作。ここではヒロイン莉奈を演じた穂志もえかにインタビューした。
――よろしくお願いします。今回穂志さんが演じられた莉奈は、女の子の心を素直に表現しているようで可愛らしかったです。
ありがとうございます。でも、あまりそう思われない子だと感じていたので、そう聞いて少し不思議な感覚です。
――今回の出演の経緯を教えてください。
オーディションだったので、その結果として莉奈役を頂けたのは、すごく嬉しかったです。今回は、事前に台本を全部頂けたので、莉奈は私だと思いながら読んでいて、絶対私がやるべき、という結構強気なマインドでオーディションに臨んだことが影響しているのかもしれません。
――これは私だと感じたものは?
恐らく莉奈は、どこのコミュニティにいても、白い目で見られたり、浮いてしまう人だろうなと思ったんです。しかも、悪い子ではないのに、悪いほうに取られてしまう。人と違うと感じていたり、周りに合わせられない……。どこへ行ってもそういう違和感を覚えながら生きているところが、一番強いでしょうか。
――私には、お芝居というより、莉奈がそこにいるように見えました。
嬉しいです、ありがとうございます。
――今回、役作りはどのように行なったのでしょうか?
監督と話し合いを重ね、台本を読む度に、徐々に莉奈と一体化していくような感覚があったので、ずっと彼女の一番の味方でありたいなっていう気持ちでお芝居をしていました。今回は、特に作るというよりかは、割とそのまま(自分)に近い状態でカメラの前に立っていたように思います。
――ご自身と遠い・近いというのは?
もちろん、全部が似ている、同じということはないですけど、自分の持っている一要素から広げていけそうだな、という感覚はありました。
――それは監督の持つ莉奈像とは近いものでしたか。
そうですね。現場に入るまでに、監督とたくさんお話できたことが、本当に良かったと思いますし、台本を読んで感じたものを積み重ねていって、莉奈という要素をまとめられたと感じています。
――それがあって、自然な雰囲気に感じたのだと思います。
私自身を見られている感じが強くて、結構恥ずかしかったですね。私自身ではないんだけれども、自分と一体化している感覚があったので、なんだか丸裸にされているようでした。
――そんな莉奈が、修一(黒羽麻璃央)と一緒に暮らし始めます。その決め手は?
この人だったら一緒に過ごせるかな、と感じたんでしょうね。まず、莉奈は普段から自分のことを気にかけてもらえることが、なかったと思うんです。だから、修一と会話ができたことで、莉奈は心を開いていったのかな、と。最初のほうは、自分のことを面白がってくれる存在みたいに感じていたと思います。
――しかし、段々とすれ違いも増えていき、喧嘩も多くなりますが、その時の表情・仕草がとてもナチュラルに感じました。
私は、プライベートでも思っていることがすぐに顔に出てしまうので、すごく分かりやすいって言われることが多いんです。そうした部分が、莉奈としても表現できたのかなと思います。
――そんな修一と中盤でひと悶着あります。
莉奈にとっては限界だったのでしょう。自分を認めてくれていると思っていたのに、実はそうではなかった。同時に、自分には別のコミュニティもできていたから、そういう行動に出たのだと思います。
――生きづらさを感じていた人にも、実は……という展開を迎えます。
何かに秀でた才能を持っていても、それを活かし切れていない、見つけられていないなど、もったいないことって、実はすごくあると思っていて、環境が整ったり、引っ張ってくれる人がいたら、もっともっと面白い方向に行けるのにと思う瞬間は、日常にもありますよね。見えているものだけが全てではないということを、莉奈を見ていてすごく感じました。
いま、生きづらさを感じている人には、みんなとは違うもの、違う方向で、実はできることがあると思ってほしいですね。
――私は、莉奈を見ていてそんなにヤバいやつとは思いませんでしたけど。
本当ですか!? 私は、この作品を観ていただいた方の中には、莉奈のことを嫌いって思う人が、相当数いるんじゃないかなって思っています。自分でも、完成した本編を観て、なかなかにハチャメチャな女の子だなって感じましたから!
――すれ違いや人心・環境の変化という面では、穂志さんが出演された『少女邂逅』を思い出しました。
『少女邂逅』では、私の演じた小原ミユリが変わっていかないといけないという状況でしたけど、本作は、莉奈が変わるというよりかは、周りの環境が変わっただけだと感じています。
――話は飛びますが、二人が喧嘩するシーンの穂志さんのお芝居は素晴らしかったです。
ありがとうございます。そう仰っていただくことが多いんですけど、私はちょっとまだ、客観的に観られなくて……。
――アドリブは。
少し入っています。一言二言、自分で足しました。
――撮影で覚えていることは?
とにかくしんどかったです。撮影時は、本当に喧嘩しているぐらいの熱量と疲労感があったし、監督がなかなかカットをかけなかったので、莉奈の憤りを全部発散しているような感覚がありました。
――莉奈あってこそのシーンですね。
そうですね。莉奈のキャラクターじゃなかったら、もう少し抑えていたかもしれません。
――その流れで、トイレに駆け込むところはドキッとしました。
そのシーンも大変でした。本編では短い場面ですけど、実は、修一役の黒羽さんが外でずっと謝り続けていたんです。監督からは“莉奈が許す気になったら出てきて”と言われていたので、私、大分出ていかなくて。黒羽さんがいろんな謝り方をしてくれて、本当はとっても長い撮影だったんです。トイレから出てきても、感情が高ぶりすぎてセリフを忘れてしまい、NGを出してしまって……。
――ネタバレしないようにお聞きしますが、ラスト、莉奈が取った行動については、どう捉えていますか?
私は希望がある、と思っています。余韻を楽しんでほしいです。
――話は変わりますが、前回お話を伺った際、これからは女優として生きていきたい、と仰っていました。この4年を振り返っていかがですか?
本当に、いい出会いがたくさんありました。『SHOGUN』という作品で約8ヵ月間カナダでの撮影を経験し、国境を越えたものづくりにすごくやりがいを感じたので、これからもそういう機会が得られれば、積極的にチャレンジしていきたいです。
映画『生きててごめんなさい』
2月3日(金)よりシネ・リーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて全国順次公開
<キャスト>
黒羽麻璃央 穂志もえか
松井玲奈 安井順平 冨手麻妙 安藤聖 春海四方 山崎潤 長村航希 八木アリサ 飯島寛騎
<スタッフ>
監督:山口健人 企画・プロデュース:藤井道人 エグゼクティブプロデューサー:鈴木祐介 プロデューサー:河野博明、雨無麻友子 脚本:山口健人、山科亜於良 撮影:石塚将巳 照明:水瀬貴寛 録音:岡本立洋 美術監督:相馬直樹 美術:中島明日香 小道具:福田弥生 助監督:渡邉裕也 キャスティングプロデューサー:高柳亮博 制作プロダクション:スタジオねこ 配給:渋谷プロダクション 製作:「イキゴメ」製作委員会
JAPAN/DCP/アメリカンビスタ/5.1ch/107min
(C)2023 ikigome Film Partners
■穂志もえか プロフィール
1995年生まれ。千葉県出身。上智大文学部卒。特技はバレエ、アルゼンチンタンゴ。
2017年に女優デビュー。映画『花束みたいな恋をした』(土井裕泰監督)、『街の上で』(今泉力哉監督)、『窓辺にて』(今泉力哉監督)などに出演。
ドラマでは「大豆田とわ子と三人の元夫」主人公・大豆田とわ子(松たか子)の勤める住宅建設会社経理部員・羽根子や「#グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」主人公あかね(松本穂香)の友人・ちこなどキャラクターの強い役を演じた。
現在、TBS系金曜ドラマ「100万回言えばよかった」に出演中。主要キャストの一人として真田広之も参加しているアメリカのテレビシリーズ「SHOGUN」の放送も控える。
ヘアメイク:川又由紀(HAPP’S)
スタイリスト:前田勇弥
衣装:ブラウス(¥18,150)、パンツ(¥18,920)
グラムトーキョー(LAYMEE):03-3746-9950