ルパン三世の少年時代がついに『LUPIN ZERO』として映像化！　1960年代の日本を舞台に、少年ルパンが大活躍する。2022年12月より配信

2022-12-05

レビューポータブル LUPIN ZERO ルパン三世モンキー・パンチ酒向大輔大河内一楼早見沙織

　まだ世界を股に掛けた大泥棒ではない、何者でもなかった少年時代のルパン。モンキー・パンチの原作で描かれた「少年ルパン編」に着想を得て、後のルパン三世となる少年のはじまりを描くのが『LUPIN ZERO』。12月の配信開始に先立って、第1話と第2話のオンライン試写を見ることができたので、その内容を紹介しよう。

　制作スタジオは、これまでも数多くの『ルパン三世』シリーズを手掛けてきたテレコム・アニメーションフィルム。キャストには、ルパン役が畠中祐、次元大介役が武内駿輔、このほか、早見沙織、行成とあ、などの若手人気声優が起用されている。

　監督は酒向大輔、シリーズ構成に大河内一楼、キャラクターデザイン：田口麻美、設定考証：白土晴一らの実力派スタッフが名を連ねており、音楽は『あまちゃん』や『犬王』で知られる大友良英が担当。メインテーマの「AFRO“LUPIN'68”」など『ルパン三世　PART1』の音楽を担当した山下毅雄の楽曲アレンジも含め、魅力あふれる楽曲を提供している。そして、エンディングテーマ「ルパン三世主題歌II」を歌うのは、シンガー・ソングライターの七尾旅人。これらの面々が誰も知らないルパン少年の物語を作り上げている。

高度成長期の活気に満ちた日本を舞台に、少年ルパンの活躍を描く

　原作まで読んでいる熱心なファンなら、ルパンが日本人の母を持ち日本で暮らしていたことはご存じだろう。舞台となるのは1960年代、高度成長期の日本。原作の連載が始まった当時の日本が舞台だ。ルパンは中学生ながらも祖父のアルセーヌ・ルパンから盗みのテクニックを仕込まれており、手癖の悪さはすでに超一流。しかし、父であるルパン二世への反発もあり、泥棒稼業を継ぐかどうかは決めきれていない。将来何をするにしても、誰かに言われてではなく、自分の意志で決めたいと思っている。

　第1話は、そんな中学生のルパンの学校生活から始まる。成績は抜群に優秀だが、素行は不良。そんな型破りな中学生だけに毎日の生活には退屈しきっていた。そこで出会ったのが、同級生の次元大介。彼は幼い頃から父とともに戦場を渡り歩いてきた経歴を持ち、プロとして裏稼業まで行なっている。そんな次元にルパンは興味を示すが、まだまだ子供のルパンを次元は相手にしない。ある日、ナイトクラブで遊んでいたルパンはクラブの歌手である洋子に一目惚れし、次元も巻き込み彼女が関わる事件に首を突っ込んでいく。

　こういったストーリーで次元との出会いが描かれるが、1960年代の中学校やナイトクラブなど、当時の日本が実にリアルに再現されていて、なかなか魅力的だ。次元は不良相手に拳銃をぶっ放すし、煙草も吸う。中学生がナイトクラブで豪遊するなど、後のルパンや次元の姿に通じる少年時代だ。フィクションではあるが、当時の日本にはまだまだこういう悪ガキが溢れていた時代でもあった。畠中祐と竹内駿輔もなかなか好演で、ルパンらしさ、次元らしさを感じさせつつ、ルパンの子供っぽさ、次元の青臭い大人ぶった姿がよく伝わる。

　第2話では、次元が父の代理で請けた仕事にルパンが首を突っ込み、秘宝の争奪戦が描かれる。逆転また逆転もストーリーも楽しいし、海外からやってきた奇妙な少女も争奪戦に加わるなど、ルパンシリーズらしい魅力がいっぱいだ。そして、争奪戦の舞台となる東海道本線の特急にも注目したい。列車好きには有名なボンネット特急がリアルに描かれ、客車や食堂車などもかなり精密に再現されている。こうした当時の日本、活気に満ち、今ほど安全ではないが活力に満ちていた時代を生き生きと描写しているのも素晴らしい。かつての日本を知らない若い人には新鮮に映ると思うし、ルパンの少年期にはぴったりの舞台だとも思う。

全6話で描かれる、ルパンのはじまりの物語

　12月から配信される『LUPIN ZERO』は全6話構成で、今後はどのキャラクターが登場するのかも楽しみだし、少年であるルパンが自分の将来を決めることになる事件とはどんなものかも気になるところ。見慣れたルパン三世も魅力的なキャラクターだが、新たに描かれる少年時代もまた魅力的。なかなか楽しみなアニメシリーズとなるだろう。12月の配信を楽しみに待ちたい。