幕張メッセで、16日(水)〜18日(金)までの3日間、メディア総合イベント「Inter BEE 2022」がスタートした。11月1日(火)〜12月23日(金)の期間でオンライン会場もオープンしており、昨年に続いてリアルとオンライン会場を組み合わせての開催となっている。後編では、StereoSound ONLINE編集部が、Hall7〜8とHall4で見つけた注目展示について紹介する。

ソニーマーケティング

画像: ソニーマーケティング

 ソニーマーケティングブースで異彩を放っているのが、クリスタルLEDを使ったバーチャルウォールだろう。

 これはバーチャルスタジオで使われているシステムで、LEDディスプレイに背景を写し出し、その前で俳優が演技をすることで、ロケに出かけなくても、あたかもその場で撮影したかのような映像を作成できるものだ。クリスタルLEDのバーチャルウォールを常設した空間として、清澄白河BASEが運用を開始しているが、今回展示されていたクリスタルLEDはピッチがより狭い(1.2mm)タイプを展示しているとのことだった。

画像: 開発中のコーデックを使った映像

開発中のコーデックを使った映像

 映像圧縮に関して、開発中の次世代コーデックの技術展示も行われていた。HEVC(H.265)をベースに、ソニー独自の改良を加えた方式とのことで、4K映像を100Mbpsまで圧縮しても映像劣化が気にならないクォリティを目指している。さらに2フレーム以下の低遅延も可能だ。

 もちろんH.265の仕様に準拠しているので、再生側は同方式に対応していれば問題なく視聴できるそうだ。ソニーではこの技術を配信用に展開したいと考えており、スイッチャーボックスなどへの採用も視野に入れているようだ。

メモリーテック/クープ

画像1: メモリーテック/クープ

 クープは、今年10月に株式会社キュー・テックと株式会社ポニーキャニオンエンタープライズが合併して誕生した新会社だ。幕張メッセHall7に設けられた同社ブースでは、キュー・テックが培ってきた様々な技術を応用した展示が行われている。

 その第一は、8K主観評価用標準動画像集「QT-8000」だ。キュー・テックでは4K用の素材も発売していたが、今回は8K映像をデモ。素材としては8Kデジタルカメラで撮影したものが中心だが、35mmフィルムを12Kでスキャンし、そこから8Kにダウンコンバートした素材も含まれている。

 そのスキャンにはプラサド・コーポレーション「OXScan」が使われている。これは16mm/35mmフィルムを12Kでスキャンし、8K/4K/2Kで同時出力できるスキャナーで、16ビットRGBでのサンプリングを行う。会場ではその映像をソニーの8K液晶テレビ「KJ-85Z9H」で再生していたが、ディテイル再現はもちろん、色のグラデーション、コントラスト再現など、惚れ惚れするほどの映像を確認できた。

画像2: メモリーテック/クープ

 最新映像の一方で、過去の貴重な素材を現在のシステムで楽しめる提案も行われている。それが「FORS AI」で、既存素材のカラライゼーション、IP変換技術、アップコンバート技術で構成されている。

 実はこの技術を用いて作られたパッケージソフト『森高千里 LIVE ROCK ALIVE COMPLETE BOX』は、11月23日にワーナー・ミュージック・ジャパンから発売が決定している。

 このソフトはD2テープに記録されたSDクォリティ(水平720×垂直486画素)のインターレース(60i)素材を使って作られている。まずそのSD/60i素材を独自技術でi/p変換する。その際に自社開発したAIで処理を行っているそうで、被写体の質感や動きについても違和感のないプログレッシブ映像が得られるそうだ。続いてそのプログレッシブ映像について、FORSの基準に準じた環境で色ノイズ対策等の処理を加え、水平1440×垂直1080画素(アスペクト比4:3)のプログレッシブ信号にアップコンバート、ブルーレイディスクに収録している。

 会場のモニターで確認した映像は、元がSD素材とは思えない安定感で、森高千里の肌の艶、衣装の色もひじょうにクリアーに再現されている。80〜90年代の音楽コンテンツはSDビデオで撮影されたものも多く、単純にアップコンバートしてしまうと輪郭が強調された不自然な映像になったり、ノイズが目立ったりといったこともある。今回の提案はそれらを高画質に楽しめる技術として期待できそうだ。

画像3: メモリーテック/クープ

 またカラライゼーションについても、1958年公開のモノクロ作品『知と愛の出発』を使ってパッケージ化が進められている(DVDで2023年2月3日発売予定)。こちらはフィルムから5Kでスキャンしたモノクロ映像を元に、グレインの調整やフリッカー低減等のリマスター作業を加え、そこにAIでカラライズ処理を加えるそうだ。ただし、そのままでは色が乗りすぎるので、最終的にはカラリストが調整を加えて仕上げている。

 モノクロ映画のカラライズについては、撮影時の狙いや監督の意向・演出も考慮しなくてはならないので、単純には進めにくいだろう。しかし資料映像、ドキュメンタリーなどはカラー化することでより現実味のある映像に生まれ変わる可能性もある。同社ではそういった素材を中心に、FORS AIを展開していきたいと考えているようだ。

IP PAVILION

画像: IP PAVILION

 IP PAVILIONブースは、Hall8の出展者による展示で、中継車〜中継現場〜共通基盤〜制作サブ〜マスターといった具合に、映像制作に応じたコーナーがあり、それをメディアオペレーションセンターで運用管理・監視するという流れが紹介されている。

 そこで展示されていたのは汎用のIP技術(標準規格=SMPTE ST 2110)に対応した製品という。つまりこれらを活用することで、放送局のシステムをIPでつなぐことができるというわけだ。このIP化を進めることで、機材の集約や拡張、遠隔操作といったメリットを享受できるとのことだった。

フォステクス

画像: フォステクス

 フォステクスブースには、昨年のInter BEEでも展示されていたアクティブモニタースピーカー「RS10A」がデモされている。自社制作のユニットを搭載した3ウェイ3スピーカーで、背面にデジタルアンプを内蔵している。価格は1台¥1,800,000で、受注生産モデル。納期は3〜4ヵ月を見込んでいる。

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