スタイリッシュでありながら幅広い音楽再生に対応
モニターオーディオのユニットは、「プラチナ」、「ブロンズ」などの主軸シリーズの名称にかかわらず白銀の面容を保ってきている。それが最新のMonitorシリーズではユニットがブラック処理になったことが一大特徴となる。
Monitor50は小型で正方形の正面なので目の錯視により横長に見えることもあるけれど、2つのユニットを対角線配置し、25㎜径のC‐CAMトゥイーターはオレンジの縁取りが施されていてアカ抜けた印象。2ウェイ構成のリアバスレフ方式のシステムだ。
C‐CAM振動板はアルミニウムとマグネシウムの合金が基材であり、その表面にセラミック処理をして剛性を高めたもの。シリーズ機に採用されている看板技術だ。その表面をブラック処理したのだが、音質的な変化は訴求されていない。140㎜径のウーファーについては、やはり看板技術であるMMPⅡドライバーを採用。MMPはメタル・マトリックス・ポリマーの略称。ポリプロピレンのベースに金属粒子を充填させた独自の振動板材料だ。見かけを黒くしただけでなく、この最新のモニターシリーズ用に改良したとしている。スピーカー端子はシングルワイヤリング仕様。
Monitor300は2.5ウェイのリアバスレフ型。クロスオーバー周波数は700Hzと33kHz。2つのバスレフポートは165㎜径低域ユニットの軸上背面に個別に設けられている。低域/ミッドユニットも165㎜径であり、低域ユニットが3本直列配置されたような見かけだ。低域各ユニットの振動板はMMPⅡ。高域は25㎜径のC‐CAMトゥイーターを採用。スピーカー端子はバイワイヤリング仕様だ。
コンパクトでありながら表現力豊かな「Monitor50」
まずはMonitor50をEL34の3パラプッシュプルであるエアータイトATM3で試聴。ユニット配置は1セット鏡像対称なので、ここではトゥイーターを外側にして設置。湿り気や淀みのない明快な語法。それに加えて繊細な表情やラテン系の癖っぽいリズムが浮かび上がってくるのだ。定位も良好。重厚感については両スピーカーの間隔を狭めるといいし、アンプは規模の小さなものでも量感を得やすいと思う。大振幅を大電流出力で強く支配する、という鳴らし方とは別の道があるわけだ。
モニターシリーズ中フラッグシップ機としての位置づけの「Monitor300」
Monitor300はさすがにスケール感がありDレンジのゆとりを感じさせるが、中高域の弾力感や解放感、ときにエネルギッシュに畳みかける点はモニターオーディオの中堅機らしい特徴だ。サックスのソロなど、音像が前に出てきて中域の応答性の良さを誇示するとともに、サブトーン(雑味)がきれいに散じるわけで、過渡特性はなかなか優秀だ。コンボジャズもクラシックの大編成も快活に音を放射し、主たるパートはよく輪郭を形成して迫ってくる。爽快な表現志向なのだが、じっくりエージングすることで時代の求める全方位的な音楽形成能力を発揮するようになるだろう。