FLESH FOR FRANKENSTEIN with 4K DIGITAL RESTORATION
Paul Morrissey of the Andy Warhol stable made this pic back to back with Blood for Dracula, with an added gimmick of 3-D and more skillfully directed. Morrissey plays some variations on the old Prometheus myth. He adds plenty of gore, with some dollops of sex.
Release Dates (Theater):Los Angeles opening: May 7, 1974/New York opening: May 15, 1974
Domestic Total Gross:$ 7,000,000
(Worldwide: $20,000,000 1974 - 1976)
FILM
まずは「ファクトリー(The Factory)」に触れなくてはならない。「ファクトリー」とは、かのアンディ・ウォーホルの作品を生み出したアートスタジオである。創設は1962年、マンハッタンはミッドタウンの東47番街の231番地にあるビルの5階だった(84年の閉鎖まで、マンハッタンを転々とする)。当初はアートスタジオとして機能していたが、やがてニューヨーク中のクリエイティブが集まる、サロン的な役割を持つ場所へと変わっていく。「ファクトリー」でウォーホルは、自分の取り巻きを使い、多くのショートムービーを制作した。そこにいたのが、本作の監督ポール・モリセイである。数本の短編映画を監督していたモリセイは、1965年に初めて「ファクトリー」に加わった。映画製作者としてだけでなく、やがて監督としても活動し始める。トランスジェンダーのホリー・ウッドローンを主演に迎えた『トラッシュ』(1970/映画界で初めてのトランスジェンダー主演映画)や『ウーマン・イン・リボルト』(1971)、名作『サンセット大通り』をパロった『ヒート』(1972/ウォーホル製作のモリセイ・トリロジー最終作)といった作品は、アンダーグランド映画界だけでなく、一部の評論家からも高い評価を受けることとなった。
私はマンハッタンで生まれて、ブロンクス育った、敬虔なるカトリック教徒なんだよ(笑)。陸軍にも従事したこともある。昔から映画製作に興味があって、1961年に初めて自分の映画を作ったんだ。狂った司祭を主人公にした短編だ。そしてイースト4thストリートとバワリーにニッケルオデオン(小規模な映画館)を開き、ジョナス・メカスやブライアン・デ・パルマのデビュー作などを上映した。アンディ(ウォーホル)はある月曜日の夜にニッケルオデオンに来て、私は「ファクトリー」に来るように説得されたんだ。「ファクトリー」にいたのは10年くらいかな。アンディと一緒に監督した『チェルシー・ガールズ』(3時間30分のセミ・ドキュメンタリー)が評価されて、商業的にも成功した。これを機に私は監督として単独デビューしたのだが、彼は「私は演出に口を出さない。だから私のアドバイスも受けるな」という条件を出したんだ。(ポール・モリセイ/2013年インタビューより)
1972年、ロマン・ポランスキーが『ポランスキーの 欲望の館』を撮影中、同作のプロデューサー、カルロ・ポンティが彼に尋ねた。3Dでホラー映画を作ることができる監督はいないか? そのときポランスキーは、モリセイを推薦した。ポンティとラインプロデューサーのアンドリュー・ブラウンズバーグは、すぐさまモリセイに連絡、2本の映画の製作を依頼した。総製作費は60万ドル。撮影期間は6週間。モリセイは3週間で2本の映画の脚本を書き上げた。1本は『処女の生血』、そしてもう1本が本作である。製作ブラウンズ、製作総指揮ポンティ、監修ウォーホル(実際は名前貸し)、撮影はイタリア/ローマのチネチッタスタジオ。共通の出演者として「ファクトリー」のジョー・ダレッサンドロ、ヨーロッパで活躍をしていたウド・キアをキャスティング。『悪魔のはらわた』が73年3月、『処女の生血』が同年5月クランクインとなる。
いつも私は自分の作品の脚本を書いたが、それは基本的なストーリーラインを形成するだけで、台詞は即興で行うことを俳優に要求した。だが、ウド・キアは即興に不慣れだったため、毎日セットで台詞を決めてから撮影することにした。そうした理由もあり、2本の映画を3D撮影するのは、予算の面でも、日数の面でも不可能だった。そこで、まず『悪魔のはらわた』をコントロールのしやすいスタジオセットで3D撮影することにした。ヨーロッパの怪奇的な雰囲気を出したかった『処女の生血』は、オールロケーションを行って通常の方式で撮影した。『悪魔のはらわた』に日数がかかったとしても、通常の撮影ならばスケジュールを調整しやすい。2本とも撮影監督をルイジ・クヴェイレル(『殺人捜査』『サスペリア PART2』)、悪魔のようなフリークアウト効果を狙った特殊効果をカルロ・ランバルディ(『エイリアン』『E.T.』)がやっている。3D撮影は初めてだったが、とても興味深い撮影となったよ。ルイジと相談して、屋外シーンはできるかぎり直射日光下で撮影することにした。顔を光で彫刻して、背後に深い影を落とすんだ。スタジオセットでも同様に撮影した。強い光によってレンダリングされる俳優の外見の人工性は、作品にとって不可欠なものだった。(ポール・モリセイ)
舞台はセルビア。伝統ある貴族一族の末裔であるフランケンシュタイン男爵は、実姉と結婚し、ふたりの子供があったが、家族に興味がなく、地上最高の優秀な人種を造り出すことを生き甲斐としていた。それは人間の優れた部分を結合して、完璧な人造人間の男と女を造り、ふたりを交合させて至高の子孫を誕生させるというものであった。女の人造人間は完成、あとは男の人造人間の首を結合するのみ。ある夜、精力絶倫な男の首を求めて町へ繰り出した男爵は、理想の男を発見、斬首した首を人造人間に結合した。ところが、その首は狙った男のものではなく、男の友人である神学生の首だった。ここから話は二転三転、モリセイならではドラマツルギーを楽しめる。
全米配給は『ディープ・スロート』『悪魔のいけにえ』の配給で知られるブライアンストン・ピクチャーズ。『悪魔のはらわた』は、1974年4月、ロサンゼルスで3Dプレミア上映され、翌月にはニューヨークの2館で上映。映画はロングラン上映となり、10月には35館に拡大されている。さらに1982年、3Dブームに乗ってリバイバル上映されて好成績を残している。日本公開は1974年8月。
(本盤は2021年11月に限定リリースされたが、UHD BLU-RAYのみ色彩が過飽和になるエンコードエラーがあった。そのためヴィネガー・シンドロームは小売店から商品を回収、交換用ディスクを制作している。ここでは修正済みのディスクを使用している。2022年1月リリース分からは修正ディスクが収まっているが、2021年11~12月に購入された方は、ヴィネガー・シンドローム宛てにメールで送り、レシート等の購入証明を提示することで無料で修正ディスクが送られてくる)
VIDEO
撮影監督は(前述した)『殺人捜査』『ボッカチオ』『サスペリア PART2』のルイジ・クヴェイレル。スペースヴィジョン3D撮影作品。スペースヴィジョンは専用トライオプティスコープ・レンズを使用して、35mmフィルムの上下に映像を記録するシステム(オーバー/アンダー形式)。一般的に上部のフレームは右目用、下部は左目用(主眼)に使用される。このように35mmフレームを水平方向に2分割するため、スペースヴィジョン撮影作品はすべて2.35:1のアスペクトとなる(下欄写真参照)。今回のUHD BLU-RAY化においては、2分割された35mmオリジナルカメラネガを4Kスキャン/4Kデジタルレストア。その後、HDR(HDR10)とSDRでグレーディング。HDRグレードされたネイティヴ4K映像の上部フレームを、UHD BLU-RAY用にデジタルキャプチャ。SDRグレード版は同梱2D BLU-RAYに採用。また3Dフィルムアーカイブに関しては、3Dバージョンの視差を含めた復元作業を行い、デジタルステレオスコピック3D版、アナグリフ3D版(アナグリフメガネ同梱)を作成している。UHD BLU-RAYの映像平均転送レートは82.5Mbps(MPEG-H/HEVC)。リマスター2D BLU-RAYは34.9Mbps(MPEG4/AVC)。ステレオスコピック3D BLURAYは19.7 Mbps(左目用 MPEG4/AVC)+10Mbps(右目用 MPEG4/MVC)となる。
ネイティブ4K/HDR10グレードによるUHD BLU-RAY映像は、アセテートフィルムならではの湿性の質感を備え、超高精細と言わないまでも細部情報を掘り起こすようなディテイル描画力を誇っている。3D撮影による立体視を意識させるショットも多いが、複雑なフレーミングや急速なカメラの動きとは無縁のため、ひとつひとつの画像がとても観やすい。(当然だが)深度操演も優秀だ。2013年国内版BLU-RAYや2017年独版BLU-RAYからの改善は明快。粒子感は中庸。低照度ショットのノイズも制御されている。大顔絵、セット美術や衣装、風光明媚なロケーション風景も細密に描かれており、国内版や独版BLU-RAYに見られた過度なDNRや輪郭補正(輪郭の縁取り)の痕跡は皆無。怪奇ファンが期待するゴア効果ショットや、研究室のディテイルは注目に値しよう。
HDRの効果は、大胆な赤、植生の緑、研究室に点在する青や黄、くっきりとした明度を持つ白、深い黒を際立たせている。UHD BLU-RAYと同梱リマスターBLU-RAYの比較では、前者の画像はウォームトーンが拡張、色彩の描き分け、濃淡も改善されている。本盤は2021年11月に限定リリースされたが、色彩が過飽和(特にオレンジ系色)。
驚いたことに、もっともハイクオリティな映像を魅せたのがステレオスコピック3D。3D機能搭載のテレビやプロジェクターをお持ちの方には朗報、リマスター3D映像は非常に優秀なものとなっている。(アナグリフ3D版を含む)3Dリマスターは、ニューヨークの3Dフィルム・アーカイヴ社が担当。オープニングタイトルはいくぶん破綻するものの、以降の映像は両眼視差やクロストークのストレスから解放される。垂直視差エラーの影響を受けやすいといわれたスペースヴィション方式だが、3Dステレオグラフィックの厳正な補正が施されたのだろう、49年前の3D映像とは思えない出来栄えで、立体視への視線誘導も洗練されている。怪奇趣味の飛び出し演出、前景/中景/後景の深度とバランスも絶妙。粒子感は2D BLU-RAYより減少、DNRのサジ加減も適正だ。
当初、3D映画を作ることに興味を持っていたのは、私とロマン(ポランスキー)だった。だがアメリカで上映するための配給会社が見つからなかった。『ポランスキーの 欲望の館』の撮影が始まると、ロマンの興味は薄らいだようだったが、カルロ(ポンティ)が乗り気でね。かつてのモンスター映画のパロディを3Dで作ろうと、企画を推し進めたんだ。3Dの知識はほとんどなかったから、トライオプティスコープ・レンズの設計者でもあるロバート・ベルニエールをアドバイザーに雇ったんだ。ところがポール(モリセイ)とルイジ(クヴェイレル/撮影監督)ですべての撮影を行ってしまった。設計者を完全に無視してね。いくつかのエラーはあったが、前景要素と背景要素の両方に信じられないほどの深さがあり、ポップアウト(飛び出し)効果も素晴らしかった。ポールのことを過小評価する人たちが多いが、彼の映画製作に対する熱意と知識の豊かさを知れば、それが大きな間違いだとわかるだろう。(アンドリュー・ブラウンズバーグ)
AUDIO
音響エンジニアは、録音に『ひまわり』『カサンドラ・クロス』『グッドモーニング・バビロン!』のカルロ・パルエミリ、ダビングミキサーに『続・夕陽のガンマン 地獄の決斗』『愛の嵐』『ソドムの市』『カサノバ』のファウスト・アンシラリ。35mm磁気録トラックからレストアされた2.0モノーラル音声を収録。音声平均転送レートは2Mbpsを記録(全バージョン共通)。
サウンドトラックのピークには歪みが残り、発声にはいくぶん歯擦音があるものの、それ以外の点では明瞭な怪奇ソニックを響かせる。研究室の閉所恐怖症感覚の効果音操演が効果を上げる。楽器数を絞り、楽器の音質を立たせた音楽はクラウディオ・ジッツィによるもの。フランスを中心に活躍するミュージシャン、ジャン=ピエール・ポジとして知られ、『ポランスキーの恐怖の館』のスコアでも知られている。興味深いのは、本作ではジョルジュ・ドルリューを思わせる楽曲も披露、青々としたロマンチックな調べからオールドスクールなホラー感覚の楽曲まで聴き応えがある。
FINAL THOUGHTS
『悪魔のはらわた』『処女の生血』は70年代ホラー映画を語る上で不可欠な作品だ。いずれも扇情的なスタイルを貫いているが、当時の社会情勢、性の解放や個人主義にみる道徳的欠落を辛辣なユーモアとともに皮肉った傑作である。『悪魔のはらわた』『処女の生血』の成功の後、モリセイは初のメジャー作品『バスカヴィル家の犬』(81年/シャーロック・ホームズ・シリーズの長編小説の映画化)を監督するが、これが酷評され興行的にも大失敗。その後、モリセイは「ファクトリー」を離れて低予算映画を監督するが、悲しいかな、もはやそれまでの勢いは彼にはなかった。
『悪魔のはらわた』『処女の生血』をUHD BLU-RAYリリースしたヴィネガー・シンドロームの功績は大きい(『処女の生血』は2021年10月限定リリース/その後に追加生産され、2021年1月に再リリース)。『処女の生血』の完成度も高かったが、さまざまなバージョンを取り揃え、映像特典も充実、より高い完成度を魅せる『悪魔のはらわた』に軍配が上がろう。
SPECIAL FEATURES
- NEW 4K SCAN/RESTORATION OF THE FILM FROM THE ORIGINAL 35MM CAMERA NEGATIVE
- HDR(HDR10)PRESENTATION OF THE FILM
- Three viewing options: Digital 3-D (Blu-ray only, requires a 3-D capable TV and player), Anaglyph 3-D (Blu-ray only, works on all TVs with included 3-D glasses) and regular Flat 2-D.
- Audio commentary with film historians and authors Samm Deighan, Heather Drain and Kat Ellinger
- "Trans - Human Flesh & Blood" - an archival interview with writer/director Paul Morrissey
- "The Ecstasy of Frankenstein" - an interview with actor Udo Kier
- "In the Flesh" - an interview with actor Joe Dallesandro
- "Dimension in Fear" - an interview with Producer Andrew Braunsberg
- "Andy's Shadow" - an interview with film historian & author Stephen Thrower
- "Building the world of Frankenstein" - an interview with art director Gianni Giovagnoni
- "Don't Say a Word" - an interview with actress Liù Bosisio
- "Feed My Frankenstein" - an interview with assistant director Paolo Pietrangeli
- Original theatrical trailer
- Radio spots
- Promotional still gallery
- Audio Recollections with Paul Morrissey
- Screen Test footage with Paul Morrissey
- Raw Q&A footage from 2012 with Paul Morrissey
- Reversible cover artwork
- English SDH subtitles
- REGION-FREE COMBO RELEASE
DISC SPECS
Title | FLESH FOR FRANKENSTEIN |
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Released | Nov 26, 2021 (from Vinegar Syndrome) |
SRP | $52.99 |
Run Time | 1:35:11.956 (h:m:s.ms) |
Codec | HEVC / H.265 (Resolution: 4K / HDR10) |
Aspect Ratio | 2.35:1 |
Audio Formats | English: DTS-HD Master Audio 2.0 Mono (48kHz / 24bit) |
Subtitles | English SDH |
4K画質評価
解像感 | ★★★★★★★★ 8 |
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S/N感 | ★★★★★★★★ 8 |
HDR効果 | ★★★★★★★★ 8 |
色調 | ★★★★★★★★★ 9 |
階調 | ★★★★★★★★ 8 |
音質評価
解像感 | ★★★★★★★ 7 |
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S/N感 | ★★★★★★★ 7 |
サラウンド効果 | N/A |
低音の迫力 | ★★★★★★ 6 |
SCORE
Film | ★★★★★★★★★ 9 |
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Image | ★★★★★★★★ 8 |
Image 3D | ★★★★★★★★★★ 10 |
Sound | ★★★★★★★ 7 |
Extras | ★★★★★★★★★★ 10 |
Overall | ★★★★★★★★★★ 10 |