シャープは、固形状のものでは世界初という、密閉された空間の湿度を自在に調節・維持できる調湿材「TEKIjuN(適潤)」を開発したと発表。都内で会見を開いた。

画像1: シャープ、密閉空間の湿度を、モノの保存に適した最適湿度に調整・維持できる調湿材「TEKIjuN(適潤)」を開発。今春より市場へ投入

 これは同社 研究開発事業本部が開発したもので、同事業部の掲げる、世界初・世界一の独自技術の開発によって、新しいエコシステムを構築し、社会へ貢献できる新規事業を創出する、という理念に沿って実用化される材料。

 同事業部では、これまでにも快適な生活を支える技術として、適正な温度を保つ「TEKION LAB」という製品群を開発・市場に投入しており、今回のTEKIjuNはその第2弾となるものだ。

 TEKION LABにおいては、適正な温度を保つことに主眼をおいて開発していたが、その過程で、品質を保つには、それぞれのモノに最適な湿度環境が必要である、という気づきにつながったという。調査を行なってみると、簡易的な方法で最適湿度を保つ=調整する手段がないことが分かり、それを実現するために、今回発表された技術の研究開発が始まったということだ。スタートは2015年。

 開発メンバーは、湿度を調節・維持する材料に着目。いろいろと調べた結果、人の肌に天然の保湿成分があることに気づき、それをヒントに、湿度を目標の数値に調整・維持できる液体の調湿材の開発に成功したということだ。残念ながら、その成分やノウハウについては会見では開示はしてくれなかったが、その製品化へ向けての詳細は説明してくれた。

画像2: シャープ、密閉空間の湿度を、モノの保存に適した最適湿度に調整・維持できる調湿材「TEKIjuN(適潤)」を開発。今春より市場へ投入

 液体状態の調湿材の開発には成功したが、液体のままでは使用時に不便が伴う。そこで、固形化(=これがTEKIjuNとなる)の方法を考えて、2種類の製品を考案。今春以後に、市場へ投入するという。

 一つは調湿材を樹脂に含侵させて(?)固形状にするもの。見た目はトイレの芳香剤のような、ビーズタイプの製品TEKIjuNビーズだ。もう一つはそのTEKIjuNをパウダー状にして、不織布に織り交ぜたTEKIjuNシートとなる。

画像: ▲一番左の小瓶が液体の調湿材。手前のビーズが、今回固形化に成功したTEKjuNのビーズタイプ。後ろの兜や鶴は、TEKIjuNシート

▲一番左の小瓶が液体の調湿材。手前のビーズが、今回固形化に成功したTEKjuNのビーズタイプ。後ろの兜や鶴は、TEKIjuNシート

 TEKIjuNビーズは、密閉空間での使用を想定した商品で、その空間内の湿度を狙った数値に保つ――一定にする――ことができるため、たとえば、そのモノの保存に適した湿度を実現するように材料の配合を変える、という応用が可能だという。楽器や電子機器(デジタルカメラ)では約40%、野菜は約90%が最適湿度ということなので、ある程度簡易的な密閉容器の中に、そのモノと最適湿度に調整したTEKIjuNビーズを一緒に入れることで、最適湿度が保たれる、ということだ。

画像: ▲密閉容器の中の湿度を、モノに合わせた湿度に調整できますよ、というデモ。カメラは一般的に40%前後がよいということで、左の容器では40%に調整されていることがわかる

▲密閉容器の中の湿度を、モノに合わせた湿度に調整できますよ、というデモ。カメラは一般的に40%前後がよいということで、左の容器では40%に調整されていることがわかる

画像: ▲右がTEKIjuNを入れて最適湿度を保った容器(6日間経過)。野菜の瑞々しさが残っている

▲右がTEKIjuNを入れて最適湿度を保った容器(6日間経過)。野菜の瑞々しさが残っている

▲コルクをTEKIjuNビーズで囲えば、適正湿度に保つことができますよ、という見本

 一方のTEKIjuNシートは、開放空間(密閉されていない)での使用を想定していて、たとえば障子に使えば、窓の結露を防ぐことができたり、屋外の配電盤などの金属ケース内に設置すれば、ケース内の湿度を制御できることで、多湿による機器の損傷=故障を防ぐことができる、としている。もっと広く、建設・電設・輸送分野などにおける結露抑制シートとしての訴求も想定しているそうだ。

画像: ▲TEKIjuNをパウダー状にして不織布に混ぜ込んでシート状にしたもの

▲TEKIjuNをパウダー状にして不織布に混ぜ込んでシート状にしたもの

画像: ▲窓の付近で使えば結露が防げます(左側)というデモ

▲窓の付近で使えば結露が防げます(左側)というデモ

 シャープとしては、SDGsの掲げる省エネルギー、快適で衛生的な住環境の創出、廃棄ロスの低減といった項目へ寄与する製品として、今後広く市場に投入していきたい、としている。

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