THE THING with DTS:X/4K DIGITAL RESTORATION
This remake of the 1950s classic is primarily a showcase for the gory special effects of Rob Bottin. There are creepy moments, but most of them result in another of Bottin's admittedly amazing creations. If you like gore and can often be seen reading Fangoria magazine, this is a must-see.
Release Dates (Theater):June 25, 1982 (Domestic)
Domestic Total Gross:$19,629,760
(Worldwide: $19,632,053)
FILM
UFOが北極の基地に墜落、回収された氷詰めの異星生物が基地内でよみがえり、人類を餌食にする。ジョン・W・キャンベル・Jr著『影が行く』を巨匠ハワード・ホークスがプロデュースして映画化したSFホラー『遊星よりの物体X』(1951)のリメイク作。70年代半ばに『遊星よりの物体X』を含む23本のRKOピクチャーズのリメイク権を購入したユニバーサルは、当初の監督候補にトビー・フーパー、ジョン・ランディスらを挙げていたが、しばらく企画は棚上げにされていた。
だが1979年『エイリアン』のヒットで企画が動き出し、『ザ・フォッグ』『ニューヨーク1997』の演出で知名度を上げていたジョン・カーペンターに白羽の矢が立つことに。自他ともに認めるホークス・ファンのカーペンターによれば「『要塞警察』の監督を終えた76年に一度アプローチがあったが、すぐに立ち消えになった。『遊星よりの物体X』は大好きな作品のひとつだったから、『ハロウィン』の製作中も映画化の話が頭から離れなかった」という。だが2度目のオファーがあった時には、「プロデューサーから渡された脚本が気に入らず、オファーを受けることに消極的になった」と語っている。ちなみに最初の脚本は『2300年未来への旅』(著)の作家ウィリアム・F・ノーランが草稿を書き、フーパーと『悪魔のいけにえ』の脚本家キム・ヘンケルが改訂を加えたものだ。そんなカーペンターが保留していたオファーを承諾することになったのは、『がんばれ!ベアーズ』の脚本で注目されたビル・ランカスターによる脚本(第2稿)の仕上がりが「古いハリウッド映画のような修辞技法が使われていて素晴らしかった」からだという。
1950年代は米ソ冷戦を反映して異星人の地球侵略モノが続々と作られたが、ホークス版の魅力は異星生物の知性と繁殖力の恐怖を、北極基地という密閉空間で描いてみせたところにあった(監督は新人クリスチャン・ネイビー/ホークスが演出にも関わっている)。このホークス版に対して、ランカスターが脚色したカーペンター版は原作により近い仕上がりとなっている(撮影後のポストプロダクションでは、サスペンスのテンポを損なわないように、いくつかのシークエンスがカットされた)。こうしてクランクインした『遊星からの物体X』は、カーペンターにとって大規模な予算を得て製作する初のメジャー・スタジオ作品となった。
スターログ No.58(1982年5月)
『E.T.』や『ブレード・ランナー』と同時期に公開された本作は、残念ながら高い評価を得られず、興行面でも期待外れの結果となってしまった。だが後年、作品の評価が高まり、ウィリアム・フリードキンは「ジョンは数え切れないほどの華麗な作品を監督しているが、あまりにも過小評価され過ぎている。パラノイアや不信という『遊星からの物体X』のテーマは普遍的で、COVID-19の恐怖も容易に想像させる」と語り、情熱的なカーペンター・ファンのギレルモ・デル・トロに至っては「比類なきゲームチェンジャー、いちばんのお気に入りだ」とコメントを寄せている。
VIDEO
撮影監督は70~80年代のカーペンター作品や、『ロジャー・ラビット』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズで知られるディーン・カンディ。パナビジョン・パナフレックス/35mmアナモフィック撮影。UHD BLU-RAY化においては、2017年4Kレストア・マスターを使用。これはユニバーサルとUKアロービデオの主導のもと作業を行ったもので、L.A.のユニバーサルスタジオ・デジタルサービスで35mmオリジナルカメラネガを4K解像度でスキャニング。主要な4Kワークフロー(パラ消し、フリッカー除去、グレイン・マネジメント、カラーグレーディング)はロンドンのシルバーソルト・レストレーションで実施。最終のグレーディングはL.A.カルバーシティのデラックスにて行われ、カーペンターとカンディが監修・最終承認を与えている。そして今回、同4Kマスターを使用して、ユニバーサル・グローバル・メディア・オペレーションズがHDRグレードを行っている。映像平均転送レートは85.5Mbps。収録アスペクトは2.39:1スコープサイズ(カバー表記は2.35:1)。
光学合成ショット(使用頻度は少ない)、またはアナモフィックレンズならでは微妙なケラレや周辺解像度低下を除いて、総じて映像ディテイルは際立っている。ライトからミディアムな粒子感を持ち、オーガニックであり、BLU-RAY版を悩ませていたDNRの弊害から解放されている。絶妙なバランスの明暗法を使用した挑戦的な映画であり、拡大されたコントラストは、心地よい墨黒、深められた陰影濃淡、デイライトショットや室内の発光体に大胆な明るさを追加している。
HDRカラーパレットは、豊かな色相、微妙な陰影のバリエーションを披露、肌の色合いも魅力的だ。「物語の要素と視覚的なモチーフとして火を利用した(ディーン・カンディ)」というように、火炎放射器やトーチによるフレアやスモーク効果、それを彩るオレンジやマゼンタは観どころのひとつ。だが、なんといっても極めつけは、ロブ・ボッティンの申し分のないクリーチャー・エフェクト、そのグロテスクな質感再現にある。ノルウェイ基地で発見されたグロテスクな変異焼死体、スタン・ウィンストンの協力を得てパペット、アニマトロニクス、油圧システムで作成されたTHE DOG-THINGに始まり、おそらく多くの映画ファンは、このクリーチャー・エフェクトのために本盤を購入するであろうが、それは期待を裏切らぬ出来栄えである。
「ジョンと私はネガティブスペース(被写体の周りや間にある空白スペース)をうまく利用することにした。フレームのすぐ外になにかが潜んでいることを示唆しながら、キャラクターの恐怖感を観客にも体験してもらおうと思った。なにか悪いことが起こる前の、不穏なムードを作りたかったんだ。ゆっくりとしたカメラの動きを多く使ったのもそのためだ。しかもアナモフィックアスペクト(スコープ)ならば、いちどに多くのキャラクターをキャプチャし、フレームに閉じ込められている感覚を効果的に表現できる。ライティングでコントラストを効かせて、強い寒気を感じさせようとした。室内は暖かい光で照らされることが多く、夜の屋外は青を基調としている。室内ショットでは円錐形のオーバーヘッドライトを作って吊るし、光錐角度を下に向けて暗闇の領域を多く作っている。それは私たちが望むムードを作成するためためで、内側の色を暖かく、外側の色を涼しく保ちながら、光のプール(溜まり)を制御したんだ。そしてアイライト(アイキャッチ/瞳に入り込み反射する光)も重要で、身体を乗っ取られた者の目には極力アイライトを排除している。ミステリアスなラストシーンのアイライトにも注目してもらいたい」(ディーン・カンディ)
AUDIO
音響エンジニアは、音響効果監修に『ロジャー・ラビット 』『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART3 』のコリン・C・ムア。『サルバドル 遥かなる日々』『ジャッキー・ブラウン』のデイヴィット・エーウドール。リレコーディングミキサーに『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』『スピード』でオスカー受賞のスティーヴ・マスロウ、前3作品と『ダンケルク』でオスカーに輝いたグレッグ・ランデイカー、同3作品と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で知られるビル・ヴァーニー。35mmドルビーステレオSRマスターを使用、2017年にDTS-HD MA5.1リミックスされたマスターからのDTS:Xリマスター(70mm/6トラック・マスターはDTS:Xリミックスに使用されていない)。音声平均転送レートは6.7Mbps(48kHz/24bit)。
およそ40年前のサウンドトラックゆえに、アグレッシブなサラウンドミックスとは言えないものの、これまでのDTS-HD MAトラックよりも多くの改善を聴取できる。発声は明瞭度が向上、微細なアクセントや物云いのニュアンスの再現も良好であり、室内場面ではいくぶん強めの残響が加えられている。レンジ感は中庸だが、強化されたミッドレンジに支えられた没入度の高い怪奇ソニックを披露、脈打つような筋肉質の低音がムーディーで魅力的。リアチャンネルは指向性効果やアンビエントに多用される。オブジェクト頻度は控え目ながら、サスペンスを高め、焦燥とパラノイアのなかひた寄せる恐怖を響かせるエンニオ・モリコーネのスコアに効果を上げている。
「ジョンはローマに来て、編集前の映像を見せてくれた。彼は熱心だったし、私も彼の映画が好きだったので作曲を引き受けた。だが、彼はすぐにロサンゼルスに戻らねばならず、ほとんど打ち合わせが出来なかった。そこで彼が求める音楽を見つけてくれることを期待して、まったく異なるサンプル曲を作り、ロサンゼルスでの録音に備えた。彼が好むシンセサイザーを使いながら、およそ1時間ほどの量になったと思う。彼はそのうちの1曲を選び、「もっとシンプルにしてほしい」と要望し、私はオーケストレーションを行って20分間の音楽を録音した。これがテーマ曲となっている。彼が使用しなかった曲のひとつは、『ヘイトフル・エイト』に使用している」(エンニオ・モリコーネ)
「私たちは映画の編集を終えていなかったので、エンニオは全体像を見ずに作曲しなければならなかったが、とても素晴らしい音楽を作曲してくれた。シンプルで、重くて鈍く、ゆっくりとした鼓動のような響きを持った音楽は、南極基地のクルーを待ち構える悲劇的な運命を伝えていた。編集を終えてみると、どうしても音楽が必要なある場面に些細なギャップがあったので、私は少しだけ手を加えることにした。それだけだ」(ジョン・カーペンター)
FINAL THOUGHTS
『遊星からの物体X』の公開から16年後、すでに高画質・高音質パッケージとしてレーザーディスク版が登場していたが、極めつけの逸品として米国版THX-LD/ユニバーサル・シグネチュア・コレクションが登場した。本編(両面CLV)/特典ディスク(片面CAV/片面CLV)のカップリングで、『遊星からの物体X』大全という感があり、歓喜抃舞した覚えがある。今回のUHD BLU-RAYの映像とサウンドは、それに勝るとも劣らないインパクトと所有する喜びがあり、カーペンター・ファンや特殊効果ジャンキーはもちろん、多くのシネフィルが満足されるであろう。国内版は11月10日発売。
「多くの観衆に支持されるまで長い時間がかかったが、『遊星からの物体X』は私のお気に入りのひとつだ。この映画がヒットしていたなら、私のキャリアは違っていただろう。その後の監督作品の選択は変わっていたはずだ。しかし仕事が必要だった。自分が演出した映画が嫌いだと言っているわけではない。『クリスティーン』(1983)『スターマン/愛・宇宙はるかに』(1984)『ゴースト・ハンターズ』(1986)を作るのが好きだった。でも、私のキャリアは違っていたはずだ」(ジョン・カーペンター)
SPECIAL FEATURES
- 4K RESTORATION OF THE FILM FROM THE ORIGINAL CAMERA NEGATIVE
- HDR PRESENTATION OF THE FILM
- DTS:X AUDIO TRACK
- Audio Commentary with Director John Carpenter and Kurt Russell
- John Carpenter's The Thing: Terror Takes Shape
- Outtakes
- Theatrical Trailer
- Optional English SDH, Spanish, and French subtitles for the main feature
SCREEN CAPTURES
DISC SPECS
Title | THE THING |
---|---|
Released | US / Sep 07, 2021 (from Universal Studios) |
SRP | $29.98 |
Run Time | 1:48:35.091 (h:m:s.ms) |
Codec | HEVC / H.265 (Resolution: 4K / HDR10) |
Aspect Ratio | 2.39:1 |
Audio Formats | English DTS:X (48kHz / 24bit / DTS-HD MA 7.1 compatible) French DTS 5.1 Spanish Dolby Digital 2.0 |
Subtitles | English SDH, French, Spanish |
4K画質評価
解像感 | ★★★★★★★★ 8 |
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S/N感 | ★★★★★★★★ 8 |
HDR効果 | ★★★★★★★★★ 9 |
色調 | ★★★★★★★★★ 9 |
階調 | ★★★★★★★★ 8 |
音質評価
解像感 | ★★★★★★★★ 8 |
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S/N感 | ★★★★★★★★ 8 |
サラウンド効果 | ★★★★★★★★ 8 |
低音の迫力 | ★★★★★★★★ 8 |
SCORE
Film | ★★★★★★★★★ 9 |
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Image | ★★★★★★★★ 8 |
Sound | ★★★★★★★★ 8 |
Overall | ★★★★★★★★ 8 |