DMP=「ダイレクトストリーム・メモリー・プレーヤー」と命名したディスクトランスポートの後継機として登場したのがこのパーフェフェクトウェイブSACDトランスポートだ。ハイレゾオーディオファイル仕様を含むディスクドライブというだけでなく、前面のUSBスロットにて各種ハイレゾ音源にも対応。またHDMI端子によるIS(インターICサウンド)形式の信号出力も可能だ。
SACD/CD Transport
PSオーディオ PerfectWave SACD Transport ¥900,000(税別)
●再生可能ディスク:SACD、CD、CD-R、CD-RW、DVD-R、DVD-RW
●再生可能な音楽ファイル:MP3、WMA、AAC(〜48kHz/320bps)、WAV、FLAC、AIFF(〜192kHz/24bit)、ALAC(〜96kHz/24bit)、DSD(〜5.6MHz)
●デジタル出力:I2S×1(PCM、DSD)、RCA同軸×1(PCM)、BNC×2(PCM、DoP)、XLR×2(PCM、DoP)、RJ45(Ethernet)
●寸法/重量:W430×H100×D360mm/9.97kg
●備考:リモコン付属、写真のブラック仕上げの他にシルバー仕上げあり
●問合せ先:完実電気(株)☎050-3388-6838
これはPCM信号をデータや各種クロックに分離した状態で直接外部のD/A変換部に送るというもの。受信側のDIR(デジタル・インターフェース・レシーバー)によるジッター対策の影響を受けず、鮮度の高い再生音の点で有利とされている。SACDのDSD信号はそのままネイティヴ出力することが可能だ。通常のデジタル出力であるSPDIFについてはRCA、BNC、XLRの出力端子を装備する。
トランスポート側のジッター対策は、デジタル・レンズ機能と命名した対策を訴求する。その基本は特殊なものではなく、大容量メモリーのバッファーを駆使して時間軸の曖昧さやデータの欠落を補うというもの。出力されるデータの補正の完璧さと再生時からの遅延を極小にすること、そして瞬時のアクセス性など、音質と操作性との両立も関係してメーカーの意欲が問われる場面だ。
電源部はトロイダルトランスによるリニア(アナログ)電源であり、各部に独立性の高い電源を供給している。ディスクドライブは2mm厚のスチールカバーに収まり、ディスクトレイは厚いアルミダイキャスト仕様で振動対策している。
まずはリファレンスDACのアキュフェーズDC950と同軸接続して試聴。分離が良くソリッドな音像が3次元的に屹立して、音場の佇まいが明快に提示される。鮮度志向でありながら微細な表情と余韻がよくなじみ、各種の音楽ジャンルで快活な表情を聴かせる。アキュフェーズのDP950+DC950と比較すると、濃密で豊潤な個性が対比としてあきらかになり、トランスポートでの音作りがわかる。フラメンコギターの腕利きデュオがロックを演奏する「パタ・ネグラ」は、鮮烈な弾弦と過剰エコーの活性がPSオーディオのトランスポートで相性も抜群。
次にPSオーディオのパーフェクトウェイブD/Aコンバーターとの純正組合せを試す。これは同軸伝送よりも、HDMIケーブルによるIS伝送の方が精密緻密で鮮度感が際立ってきた。余韻の消え際にいたるまでその3次元展開と濃淡模様がさらに明瞭となった。こうして過渡特性と高い純度感を際立たせつつ全方位的な表現域を得ているのは、トランスポート段階で音声データの精度を確保しながら独自の音質志向にたぐりよせる技によるだろう。この精密にして開放的な音は、体調まで賦活するような魅力を備えている。