これは、放送局用モニタースピーカーとして有名なLS3/5aと組み合わせるサブウーファー。トールボーイ型の上にLS3/5aを乗せて一体感が得られ音場感を阻害しないねらいだ。従来のAB1よりキャビネットの高さを48㎜伸ばし、内部構造をAB2専用設計の12.4㎝径ユニットSB4424に最適化したという。
低音用のダクトは内側向きで使用。LS3/5a単体では、おなじみの湿度を含んだ豊潤な響きが得られる。スーザン・グラハムの「アーン歌曲集」は艶やかに、ひそやかに声音が制御され、和声の構成感が明示され、減衰音に濃密な表情がともなう。ジャズ系は少し暖色寄りになるけれど打楽器の力点は十分明瞭。ソロ楽器が濃密な響きを放射している。ただし「春の祭典」のような大オーケストラは低域が膨らみピークの伸びに限界が現れる。
そこでサブウーファーを加えると、さすがにつながりがよいまま、最低域が拡張され低域の圧縮感が解きほぐされる。歌の空間的な展望、また表現のスケール感が向上するのも頼もしい。ジャズの低音楽器がリズムを刻む実体感、推進力もたやすく向上。それに大オーケストラの分厚い響きやダイナミックレンジの広さが明らかになるだけでなく、分離感や繊細な質感描写など総合的な音質向上が確かに実感できたのである。これは真空管アンプと相性のいいスピーカーシステムである。