情報ネットワークが高度に進歩した近未来を舞台に、全身を義体（サイボーグ）化した草薙素子と彼女が所属する公安9課の面々がさまざまなサイバー犯罪に立ち向かう『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』。押井守監督による映画版をはじめ、さまざまなアニメ作品が制作されてきた人気シリーズだ。
今回、『攻殻機動隊 S.A.C.』シリーズの神山健治と、『APPLESEED』シリーズの荒牧伸志が共同監督として制作した新作『攻殻機動隊 SAC_2045』が、NETFLIXで4月23日から全世界で独占配信がスタートする。先行プレビューを見た筆者がその魅力をいち早くお届けする。
『攻殻機動隊 SAC_2045』は、士郎正宗の原作コミックを起源とし、活躍する時代を2045年としたまったく新しい作品だ。高度な情報ネットワークの進歩により、人々は自らに備えた電脳でネットワークと直接つながることが当たり前となり、サイボーグ化の技術も進み、身体の一部または全身を義体化することも普及した世界は共通。
大きく異なるのは、経済災害「全世界同時デフォルト」が発生、AIの爆発的な進化によって世界は計画的で持続可能な戦争“サスティナブル・ウォー”に突入しているという、時代背景が設定されていること。計画された戦争が常に世界のどこかで起こっている。そんな時代に、草薙素子や公安9課の面々が再び結集し、国家間の争いに起因するさまざまな事件に立ち向かっていくストーリーとなる。
もうひとつの大きな特徴は、『攻殻機動隊』シリーズとしては初のフルCGアニメーション作品ということ。ちなみに音響はドルビーアトモス。アニメ作品としても最先端の映像・音響で制作されているのだから期待度は満点だ。先行プレビューで見た映像は、フルCGの映像ながらもセルアニメ的な感触を活かしたタッチとなっており、公安9課をサポートする思考戦車“タチコマ”や車などはもちろんのこと、建物なども3DCGで描かれている。
キャラクターデザインは、これまでのシリーズを踏襲したものになっているが、草薙素子はかなり可愛らしい外見になったと感じた。バトーやトグサといった男性は元のイメージのままなので、やや違和感を覚えたが、よくよく考えると原作コミックの絵柄に近づいた印象とも言える。プレビューを見ていると、士郎正宗のカラーページのタッチに近い映像になっているとさえ思う。もちろん、草薙素子役の田中敦子やバトー役の阪脩、トグサ役の山寺宏一など、キャストはこれまでのシリーズと同じ。そして、新たな公安9課のメンバーとして、女性キャラクターの江崎プリン（キャスト：潘めぐみ）が加わっているのにも注目だ。
オープニングは、millennium parade × ghost in the shell:SAC_2045による「Fly with me」。お約束とも言える全身義体の製造シーンをモチーフとしていて、骨格とメカニズムを覆う柔組織を3Dプリンターで成型していく映像が新しい。近未来的で、ある意味幻想的とも言えるテーマ曲とともに、作品の世界観をストレートに伝えてくれる。
見どころであるアクションシーンは、主要なキャラクターにはモーションキャプチャを採用。何人ものモーションアクターが参加しており、キャラクターごとに個性の異なる動きを見せてくれる。例えば、草薙素子は女性らしいしなやかな動きでスピーディーな格闘をするし、バトーはパワー自慢の豪快な動きだ。また、電脳に格闘技の技をインストールして戦う場面もあり、草薙素子のボクシング、トグサの中国拳法といった本格的な動きも見ることができる。
このほか、タチコマたちの動きも見物で、4脚に備えた駆動輪による自由自在な走行はもちろん、ワイヤーを打ち出してビルからビルへと飛び移るようなアクションも多用する。ドルビーアトモスの自由自在な音の定位や移動と合わせて、アクションの迫力や臨場感が倍増している。
ドルビーアトモスの音響はまさにアクション映画そのものと言える臨場感溢れるサウンドで、銃撃や大火力の兵器による攻撃が前後左右に飛び交い、街中では人々のざわめきが周囲を取り囲む。シリーズではおなじみの電脳による通話も、頭上から包み込むような感触で聴こえてくるなど、『攻殻機動隊』らしさがしっかりと音でも表現されている。
物語も、大国の陰謀やネットワーク技術を悪用した謎の事件が相次ぎ、続きが見たくて止まらなくなる展開だ。そして、謎に包まれている“ポスト・ヒューマン”と呼ばれる存在の生まれた理由や目的もおおいに気になるところ。4月23日（木）のスタートが待ち遠しい。
フル3DCGの最新鋭の映像と音で展開する『攻殻機動隊 SAC_2045』は、シリーズのファンはもちろんのこと、サイバーパンクSFやサスペンスが好きな人にもおすすめできる作品だ。自宅の薄型テレビやホームシアターシステムで存分に楽しんでほしい。
NETFLIXオリジナルアニメシリーズ『攻殻機動隊 SAC_2045』
Netflixにて、4月23日（木）全世界独占配信（※中国本土を除く）
＜メインキャスト＞
草薙素子：田中敦子／荒巻大輔：阪 脩／バトー：大塚明夫／トグサ：山寺宏一／イシカワ：仲野 裕／サイトー：大川 透／パズ：小野塚貴志／ボーマ：山口太郎／タチコマ：玉川砂記子／江崎プリン：潘めぐみ／スタンダード：津田健次郎
＜メインスタッフ＞
原作：士郎正宗「攻殻機動隊」（講談社 KCデラックス刊）／監督：神山健治 × 荒牧伸志／シリーズ構成：神山健治／キャラクターデザイン：イリヤ・クブシノブ／3Dキャラクタースーパーバイザー：松重宏美／プロダクションデザイナー：臼井伸二・寺岡賢司・松田大介／モデリングスーパーバイザー：田崎真允／リギングスーパーバイザー：錦織洋介・井上暢三／エフェクトスーパーバイザー：清塚拓也／ライティングコンポジットスーパーバイザー：高橋孝弥／編集：定松 剛／音楽：戸田信子 × 陣内一真／サウンドデザイナー：高木 創
オープニングテーマ：「Fly with me」millennium parade × ghost in the shell: SAC_2045
エンディングテーマ：「sustain++;」Mili
音楽制作：フライングドッグ／制作：Production I.G × SOLA DIGITAL ARTS／製作：攻殻機動隊2045製作委員会
（C）士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊2045製作委員会
