アメリカAmazon Prime Videoで配信がスタートした『スター・ウォーズ/EP4』の4K/HDR版を購入し(19.99ドル)、いざ画質をチェック! というのが前回までのお話。
しかしそこで、せっかくHDR10で配信されているのに、SDRプロジェクター(ソニーのVPL-VW1100ES)で再生したのではもったいないよなぁ、と思ってしまったのが運の尽き。冒頭の宇宙空間や星々はHDRではどうなっているのか? ベイダー卿のヘルメットの質感は? などなど気になる点が続々出てきて、いてもたってもいられない。
こうなったら検証するしかない、ということでソニー「VPL-VW745」を取材用にお借りすることに。VW745はレーザー光源を搭載したネイティブ4Kプロジェクター(SXRDパネルを使用)で、HDR規格もHDR10とHLGに対応済み。
投写距離なども愛機VW1100ESとほぼ同じなので設置が比較的容易ということもあったけど、何より2013年発売のVW1100ESと2017年発売のVW745でどれくらい画質が進化したのか、さらに高圧水銀ランプとレーザー光源で映像の印象はどう違うのかを、自宅で試してみたかったというのも正直なところ。ソニープロジェクターには、上位モデルとして「VPL-VW855」もあるけれど、予算的にまず入手不可能なので、近寄らない方がいいだろうと断念。
VW745をリビングのテーブルに載せ、画面サイズ等を調整していざ『EP4』を再生。タイトルロゴが出た瞬間に、明るさの違いに圧倒される。画質モードは「シネマフィルム1」(HDR)の初期値だが、感覚的にはVW1100ESの1.5倍近く明るい気がする。
にもかかわらず黒はちゃんと沈んでいて、オープニングの星々もはっきりしている。このシーンについては、LDからDVD、ブルーレイでは「見えなかった星が見えてきた」(情報の量の増加)ことに喜んでいたが、4K/HDRでは「星の数云々よりも、個々の輝きがクリアーになって存在感が増した」(情報の質の向上)と感じる。C-3POではないけれど、“レーザー光源に感謝”(Thank the Z-Phosphor)だ。
明るさが上がって黒も締まると言うことは、コントラスト再現が向上しているわけで、その結果画面全体がクリアーで見通しがよくなり、ディテイルまではっきりした緻密な印象につながっている。まさにいいことずくめ。
結局『EP4』を(またもや)まるまる見てしまったのだけど、その間の取材メモは以下の通り。
・映像すべてがクリアー。ディテイル再現が別格
・細かい星までしっかり再現できるのはレーザー光源のメリット
・ベイダー卿のマスクの塗り、光沢感の違いがしっかり出てくる
・色が濃密で、どのシーンでも密度感が高い
・R2-D2やC-3POの表面はもっと単調な金属かと思っていたが、細かい傷や色落ちがあるのがわかった
・輪郭がすっきりしたので、画面のきつさがなくなった
・ルークとオビ=ワンの衣装の素材、布の質感もかなり違う
・レイアの肌、ルークの髪、いずれも表現が細かく美しい
・特別篇で修正されたシーンは、予想より4Kとの馴染みがいい
・画面に奥行感がある。マットペインティングとの馴染み具合も、今までよりも気にならない
もちろん上記の印象は、プロジェクターをVW745に変えたことだけが理由ではない。配信の素材がきちんと4K/HDRでリマスターされていることも重要で、だからこそ、“今まで見たことのないEP4”が再現できていたのだろう。しかもこれは配信で見ているわけで、にもかかわらずブルーレイを遙かに超える好印象なのだから、4K/HDR恐るべし。
ちなみに音はドルビーデジタル プラスということもあり、若干メリハリを強調した印象。ただし、セリフは比較的はっきりしていて、聞き取りやすい。シネマDSPなどのサラウンド効果を掛け合わせて再生すると、案外楽しめそうだ。
ビットレートの点では配信よりパッケージのUHDブルーレイの方が有利なわけで、マスター自体は同じだろうから、音声の仕様を含めて2週間後に登場するUHDブルーレイ版が“史上最強のEP4”になるのは間違いないだろう。
どうしてもその2週間が待ちきれないという人は、今回紹介した海外配信サービスを試す手はあるんだろうけど、手間とコストを考えると簡単にはお薦めしにくいのも事実。ぼく自身、今の環境を作るまでに『4K UHDコンプリートBOX』の半分ほどの費用がかかっているわけで、海外配信サービスを長〜く使い続ける覚悟がない限りは、パッケージを手に入れた方がお得かもしれないのです。
ということで、家庭で楽しむ『EP4』の短期連載はここまで。皆さんも各自のコレクションを振り返りつつ、4月29日を楽しみに待ちましょう。
(取材・文:泉 哲也)