『スター・ウォーズ』のパッケージソフトの歴史を、個人的なコレクションで振り返っている短期連載。今回は2011年発売の『スター・ウォーズ コンプリート・サーガ ブルーレイBOX(初回生産限定)』をチェック。
“コンプリート”という所からも、当時はこれですべてのエピソードが終わったんだとみんな素直に信じていたことがわかります。この時は本編ディスク6枚+特典ディスク3枚という構成で、『スター・ウォーズ』がハイビジョン画質とロスレスオーディオで再生できると言うだけで喜んでいたものです。
ちなみにこの頃から、『スター・ウォーズ』をエピソード順に観るか、劇場公開順に観るかという議論が始まったはず。ぼくのように劇場公開順しか選択肢がなかった世代は別として、『EP1』公開以降の若い世代の中にはエピソード順という人も多く、それによって好きなキャラクターやエピソードも違っていたりして、なかなか面白いのです。
それはさておき、今回『EP4』を見直して、やはり2Kとはいえハイビジョンの情報量はたいしたものだと改めて納得。再生機はパナソニックDMP-UB900なので、信号としてはUB900で4Kにアップコンバートして、プロジェクターのソニーVPL-VW1100ESに送るという流れ。
その状態でオープニングを観ると、ロゴマークやテロップの黄色い文字が綺麗で、斜め線もがたつきは目に付かない。バックの宇宙空間も黒が安定していて星の数もDVDより確実に多い。
なにより輪郭の強調感がないので、画面全体がすっきりして、見通しがよくなったように感じる。オビ=ワンの住居やモス・アイズリーのロングショットでも荒れた印象が収まっている。おそらくこれは、ハイビジョン化に伴ってプリシュートのような余計な処理をなくす、あるいは減らすことができたからでしょう。これなら110インチクラスの画面サイズでもきつさは感じない。
ベイダー卿のヘルメットの艶、R2−D2やC-3POのボディの金属の質感や光沢も緻密になっていて、リアリティも増している。そのぶん、合成の甘さ、マットペインティングの限界が見えてしまうこともあるけれど、それを言うのは野暮というもの。
嬉しかったのは、人物の肌のグラデーションが滑らかになって、特にラストの表彰式で、レイアのほほに見えていたバンディングっぽいノイズがなくなっていたこと。撮影当時19歳だったキャリ・フィッシャーの美しさが際立ってきました。
もうひとつ、ブルーレイでは字幕が小さく、かつ斜め線がすっきりして読みやすいのもメリット。DVDまではサイズも大きいし、フォントも荒っぽかったけど、ブルーレイは格段の進歩といえる。これも地味ながら高解像度化の恩恵と言っていいでしょう。
音は、DTS-HD MA 6.1chで収録。遂にロスレスサウンドに進化したわけで、わが家の7.1ch環境で再生した時の移動感、方位感はDVDのドルビーデジタルEXともひと味違う。
まず冒頭のスターデストロイヤーの重低音が、本当に重い物体が頭上を通過しているようにも感じる。DVDでも圧迫感はあったんだけど、聴き比べてみると音の密度が低く、インパクトはあるがどこか薄い。やはりロッシー圧縮で失ったものがあるのだろうか。
それは音楽にも言えて、ロンドン交響楽団が演奏した劇伴がより浪々と、豊かな楽曲として再現されている。メイキング作品『夢の帝国 スター・ウォーズ・トリロジーの歴史』でジョン・ウィリアムズが「ジョージは、“未知の世界の物語だから、音楽を感情のよりどころにしたい”と説明していた」と話していたが、その狙いがブルーレイの音で理解できた気がする。
さて2K&ロスレスのブルーレイまで来て、次は待望のUHDブルーレイ……なんだけど、実はその前にもうひとつ気になる『EP4』が出てきてしまったのです。次回はそちらをチェックせねば。
(取材・文:泉 哲也)