ジャパンディスプレイは、本日発表会を開催し、同社製パネルの新製品を2モデルお披露目した。ひとつは1.6インチのマイクロLEDで、もうひとつは12.3インチの透明液晶。

 まずマイクロLEDディスプレイについて、同社R&D本部の山田一幸氏から説明があった。

画像1: 12.3インチの透明液晶ディスプレイや、3,000cd/m2の明るいマイクロLEDディスプレイに注目。ジャパンディスプレイが、新型表示デバイスを2種類発表した

1.6インチ・マイクロLEDディスプレイのスペック
●画面サイズ:1.6インチ●画素数:300×300画素
●精細度:265ppi●輝度:3,000cd/m2(平方メートル)●視野角:178度以上

 マイクロLEDディスプレイとは、基板上に微細なRGBのLEDチップを敷き詰めたもので、太陽光下でもはっきり表示できる輝度と広い視野角を備えている。同社では独自のLTPSバックプレーン上に無機素材のLEDチップを配置することで、3,000cd/m2という高いスペックを実現した。

 構造が比較的シンプルで、正面から光を直接取り出せることが高輝度につながっているという。他のデバイスと比較すると、液晶ディスプレイの場合バックライトの前にカラーフィルターや液晶層があるため、光をすべて取り出すことはできない。有機ELは構造的にはマイクロLEDと似ているが、発光源が有機素材なので保護のための封止層が必要になる。だが、マイクロLEDディスプレイは無機素材なのでそれがいらない点も特長という。

画像2: 12.3インチの透明液晶ディスプレイや、3,000cd/m2の明るいマイクロLEDディスプレイに注目。ジャパンディスプレイが、新型表示デバイスを2種類発表した

 これらのことから、マイクロLEDディスプレイは耐熱性の低い材料を使う必要がなく、過酷な環境下でも高い信頼性が期待できることが大きなメリットだと山田氏は説明していた。さらに低消費電力、広視野角、広い色域という特性も備えている。

 ジャパンディスプレイとしては、外光などの射す明るい環境下で使われる車のコンソールなどへの応用を検討しているという。実際に会場に展示されていたサンプルも、ひじょうに明るく、緻密な映像を再現できていた。パネルサイズが小さいので細かい文字を出すと言うより、アイコンなどを表示して注意を引くと行った使い方には向いているかもしれない。

 また今回は1.6インチというサイズだが、10インチ前後のもう少し大きなサイズも不可能ではない(精細度は落ちるそうだが)ようなので、携帯端末などへの展開も期待できるのではないだろうか。

 なおデバイスとして、輝度を抑えることは可能だが、そうしたとしても製造工程にはあまり関係がないそうだ。それよりも、他のデバイスではこの輝度を出すことが難しいので、そういった特長を活かした展開を考えたいとのことだ。マイクロLEDディスプレイの量産時期は未定だが、それらの用途展開を含めて、早期に量産まで持って行きたいと話していた。

画像3: 12.3インチの透明液晶ディスプレイや、3,000cd/m2の明るいマイクロLEDディスプレイに注目。ジャパンディスプレイが、新型表示デバイスを2種類発表した

 もうひとつの透明液晶ディスプレイは、同社が2017年2月に発表した4インチパネルを発展させ、12.3インチにまで拡大したものとなる。

12.3インチ透明液晶ディスプレイのスペック
●画面サイズ:12.3インチ●画素数:水平1440×垂直540画素
●精細度:125ppi●コントラスト比:30対1
●透過率:87%●中心輝度:150cd/m2(平方メートル)
●色数:4,096色●駆動方式:フィールドシーケンシャル方式(180Hz)

 R&D本部の奥山健太郎氏は今回のパネルについて、直視型カラーディスプレイとしては世界トップクラスの透過率87%を実現している点が画期的だと紹介した。しかも前だけでなく背面から見ても、ちゃんと映像がわかるのだ。

 従来のディスプレイは使っていないときは黒い板だったが、透明ディスプレイは電源を切った状態ではまさに透明な板になるので、背後が透けて見える。つまり存在感を消すことができるわけだ。

 これまでも色々な方式が提案されていたが、それらは透過率が低い点が問題になっていた。今回はそれを大きく改善しガラス(透過率は92〜93%)に迫る性能を実現したのだ。

画像4: 12.3インチの透明液晶ディスプレイや、3,000cd/m2の明るいマイクロLEDディスプレイに注目。ジャパンディスプレイが、新型表示デバイスを2種類発表した

 パネルの構造としては、2枚の透明なガラス基板で透明電極と新散乱型液晶を挟み込んだものだ。

 バックライトLEDはエッジ型で一方の縁からRGBの光をガラス基板に照射している。通常この光は内部で反射して外側から見ることはできないが、間に挟まれた散乱型液晶に電圧を加えると光の反射角が変わり、パネルの表面から外に放射されるようになるそうだ。これを絵柄に応じてRGBそれぞれで調整する(毎秒180回)ことで、フルカラーの映像をパネルに表示するという仕組みだ。

 展示モデルでは本体下側にLEDバックライトを収納しており、現状のバックライトではこれくらいのパネルサイズが適正とのことだった。つまりもっと大きなサイズにするためにはバックライトをどのように収めるかも工夫が必要になるわけで、そのあたりはこれからの研究しだいということなのだろう。

 なお今回のパネルは、色数も4,096色と欲張ってはいない。これは、現状では主にAR用や電車、対面販売の現場などのディスプレイといった用途を考えているからで、テレビ放送や映画などのコンテンツ再生は想定していないからだそうだ。

 とはいえリビングで透明ディスプレイを使いたいと思っているユーザーもおおいはずだ。ジャパンディスプレイでは現状のシステムでは20インチくらいのサイズまでなら実現できるとしているが、ぜひ30〜40インチクラスのパネルも目指して欲しい。空間のふわりと浮かぶ映像は、これまでのテレビ映像とも違う、不思議な感覚で楽しめる気がする。

画像: 株式会社ジャパンディスプレイ R&D本部本部の山田一幸氏(左)と奥山健太郎氏(右)

株式会社ジャパンディスプレイ R&D本部本部の山田一幸氏(左)と奥山健太郎氏(右)

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