直木賞作家 新田次郎の原作を映像化した「ある町の高い煙突」が、いよいよ今週末6月22日(土)より全国公開される。時は明治の末期。国策でもある富国強兵に基づいて操業を押し進める鉱山側と、それによって農作物に深刻な公害(煙害)を受けている周囲の農村群。いまでこそ、さまざまな書物・資料によってその全貌を把握することはできるが、公害に対する社会的な基盤・コンセンサスのなかった当時の人々は、どのようにしてそれを解決へと導いていったのか? 原作に記された熱き男たちの生き様を、ドキュメンタリー出身の監督松村克弥が、篤く紡ぎだした注目作だ。

画像1: 小島梨里杏/お互いに譲れないものがある男たちの熱い生き様を観てほしい。「ある町の高い煙突」、いよいよ6月22日より公開

 ここでは、農村側代表の関根三郎(井手麻渡)と、鉱山側の窓口である加屋淳平(渡辺大)の間を取り持つ加屋千穂を演じた小島梨里杏に話を聞いた。

――出演おめでとうございます。まずは公開を迎える心境をお願いします。
 ありがとうございます。撮影から一年、昨年の夏、めちゃくちゃ暑い中、みんなで頑張った作品が、ようやく観ていただけるようになったのは、単純にうれしいです。

――オーディションの時のことは覚えていますか?
 もちろん。抜粋の台本を頂いて、原作の一シーンを再現するというものでした。その短いシーンでも、千穂の感情はすんなりと入ってきて、彼女の持つはかなさや切なさを表現できたのかなって思います。普通、オーディションの時って、審査員の方々は机の向こうに座っているというイメージなんですけど、私の時はみなさん動き回っていたのが印象的でした。

――ちなみにどのシーンでした?
 井手さん演じる関根三郎と夏祭りに行くシーンです。とてもはしゃいでいるんですけど、台本を読んで、二人の幸せが高まっていながらも不吉な影が……というニュアンスを感じたので、それを表現できたらいいなと思ってお芝居をしてみたんです。

――(小島さんのお芝居から)それを感じたんでしょうね。
 どうなんでしょう。そうだったら嬉しいです。

――さて、出演が決まって、台本(全体)を読んだ時の感想は?
 実際にあったお話を元にしているだけあって、登場人物のみなさんはとても熱いなって思いました。何もかもが便利になってしまった現代の人たちにこそ観てほしい。情熱に溢れた作品になっている、と感じました。

――小島さん演じる千穂はどう受け取りましたか?
 物語の軸になる人物ではありませんけど、関根三郎と、兄役の淳平との3人での交流を通して、紅一点というか、二人とは違って背負っているものがない分、観てくださる方が現実から離れられる、そんな立場なのかなって感じました。

――千穂像は?
 おっとりしているようで実は結構しゃべる、という快活なところを表現するようにしました(笑)。

――それは、初登場シーンでも感じました。
 ありがとうございます。三郎と出会って「ごきげんよう」って挨拶するんですけど、実はそのシーンには秘密があるんです。本編(台本)ではカットされているんですけど、その前に、遠巻きにお互いを見かけているという状況があって、なんとなく気になっている人にふと出会って、「あっ、あの時の人だ!」「ようやく会えた」というニュアンスを含んだお芝居をしているんです。

――そうなんですね。ようやく、二人が出会うシーンの煌めき感が理解できました。
 私も試写を見て、初めて言葉を交わすシーンではあるけど、実は初めてではない、という解釈もできるなと思いました。

――その後で、急速に仲が縮まって、デート(?)に行くのも納得です。
 惹かれ合っていながらも、現代の私たちとは違って、微妙な距離感があるのもまたいいですよね。すぐには届かないというか、簡単には触れ合えないからこその、心の通いみたいなものが素敵だなって。貴重な体験になりました。

――そう聞くと、時代性を反映した二人の文通にも趣きを感じます。
 そうですよね。私も手紙を出したり(書く)、もらうのは好きなので、いいなって思いながら観ていました。

――のちに、渡辺さん演じる淳平と兄妹という関係が明らかになります。
 3人でピクニックに行くところで、すごく印象に残っていることがあるんです。渡辺さんが向こうから歩いてくるシーンで、後光が差しているように見えるんです(笑)。照明ではなくて、自然光なんですけど、それが役柄とリンクして、兄の威厳を表現しているようで、とっても面白かったです。

――でも、家族(妹)に見せる顔は。
 まったく正反対で、そのシーンでは、私(妹)に頭が上がらないというか、かわいいお兄ちゃんという雰囲気を表現しているので、本編とはまた違うコミカルな一面も楽しめますね。そうした妹との関係性を見せることで、兄の人間的な部分も感じてもらえると思います。

――ところで、劇中では馬にも乗っていました。
 想像していたよりも(背中が)高くてたいへんでしたけど、お利口さんで楽しかったですね。ジェニーっていう名前で、調教師さんの言っていることを本当に理解しているように見えるんです。お芝居も達者で、他の作品では倒れて苦しんでいるという表現もしていたそうです。

画像2: 小島梨里杏/お互いに譲れないものがある男たちの熱い生き様を観てほしい。「ある町の高い煙突」、いよいよ6月22日より公開

――そんな順調な日々に、夏祭りのところで仰っていた“陰”が差してきます。
 少しネタバレになりますけど、千穂がとある病気に侵されてしまうんです。私自身、結構役に入り込むタイプなので、後半の撮影は苦しかったですね。現場に入るとずっと(病身の)千穂ちゃんでいるので、気は重たくなるし、悲しくなってくるしで、泣きそうになりました。

画像3: 小島梨里杏/お互いに譲れないものがある男たちの熱い生き様を観てほしい。「ある町の高い煙突」、いよいよ6月22日より公開

――海岸線での三郎との再会のシーンは力が入っていました。
 症状がどんどん悪化して、希望が見えなくなっていたところへ三郎さんがやって来て! 喜びの中にも、もうこれが(会えるのも)最後になるのかもという悲しみがあって、本当に苦しい撮影でした。

――本作で描かれている男たちの志や情熱はどうご覧になりましたか?
 なかなか、あそこまで熱くなる姿って見る機会は少ないと思うし、それぞれに正義があって、お互いに譲れないものがあるという、男の生き様が描かれていて、かっこいいなって思いました。

――本作には、仲代達矢さんも出演されています。
 共演するシーンはありませんでしたけど、そばにいるだけでパワーをもらえるような、存在感のある方でした。

――本作に出演して、得たものはありますか?
 いまの時代には少し希薄になってしまった“心の通い”というものを、より熱く、濃く、強く感じることができて、人を想う愛おしさとか、かけがえのないというのはこういうことなのかということを、千穂を通して知ることができたのかなって思います。

――次に演じてみたい役はありますか?
 本作では熱い群像劇とは少し離れたところにいる役でしたので、次はその中心にいて、わっまた出てきたよ! って言われるような、いい意味で観てくださる方の気持ちをグッと引き込むような役を演じてみたいです。

――最後に、印象に残っているシーンを教えてください。
 最後のシーンで、三郎さんと兄(淳平)が空(雲)を見上げながら、千穂のことを話しているところは、グッときました。

画像4: 小島梨里杏/お互いに譲れないものがある男たちの熱い生き様を観てほしい。「ある町の高い煙突」、いよいよ6月22日より公開

映画「ある町の高い煙突」
6月22日(土)より有楽町スバル座ほか全国ロードショー
6月16日より、ユナイテッド・シネマ水戸、シネプレックスつくば先行公開中

画像5: 小島梨里杏/お互いに譲れないものがある男たちの熱い生き様を観てほしい。「ある町の高い煙突」、いよいよ6月22日より公開

<キャスト>
井手麻渡、渡辺大、小島梨里杏、吉川晃司、仲代達矢ほか

<スタッフ>
原作:新田次郎「ある町の高い煙突」(文春文庫・刊)
監督・脚本:松村克弥
配給:エレファントハウス/Kムーブ
(C)2019Kムーブ

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