Soundcore(サウンドコア)という名前を聞いたことがある方も多いだろう。モバイルバッテリーで高いシェアを持つAnker(アンカー)が展開するオーディオブランドで、Bluetoothスピーカーやイヤホン、ヘッドホンといった製品をラインナップしている。
しかもそれらの製品は数千円から1万円台で発売されている点も注目だ。中でもBluetoothスピーカーは20モデルが準備され、いずれも価格を超えた音を聴かせてくれるとしてネット上で人気を集めている。
そこで今回は、Soundcoreのトップモデルとして昨年12月に発売されたModel Zero(¥19,800、税込)がどんなサウンドを聴かせてくれるのかをチェックしてみた。
Model Zeroは、写真をみていただければお分かりのように、レディースのかごバックのようなフォルムをしている。電源ボタンは正面右側に、取手部分の下側にBluetoothのペアリングやボリュウム操作用のスイッチが並ぶ。低音増強用の「BassUpテクノロジー」も内蔵しており、そのオン/オフスイッチもここに並んでいる。
内蔵されたスピーカーユニットは、オーディオ用としても定評のあるデンマークのスキャンスピーク社製で、同シリーズとしては初めての採用になる。ユニット自体はハイレゾ再生にも対応しているそうだ。
ユニットの詳細は公表されていないが、カタログの構造図や内蔵パワーアンプが最大60W(15W×2+15W×2)と書かれていることから推測すると、4ウェイ4スピーカーシステムで、モノーラルで再生しているようだ(Model Zeroを2台使ったステレオ再生は可能)。
音楽ソースはBluetoothによる再生と、本体裏側にあるアナログ入力(3.5mmピン)による有線接続に対応する。なおケーブルをつなぐと自動的に有線接続が選ばれる仕組だ。
Model Zeroの取扱説明書には、Bluetoothの規格はV5.0で、動作範囲は約20mとされているが、対応コーデック等は表記されていない。ユニットはハイレゾ対応していると書かれているが、LDACやaptX HDといったハイレゾ伝送ができるコーデックの表記もない。
アンカーでは手ごろな価格で最高のパフォーマンスを提供するという点に留意して製品開発を行なっているそうだ。それもあって、製品の詳細なスペックは公表されていないのだろう。
しかしせっかくハイレゾに対応したユニットを搭載しているのであれば、Bluetoothのコーデックはどうなっているのかや、有線接続時のA/D変換はハイレゾクォリティなのかといった点についてはオープンにして欲しかった。なお今回の試聴は、もっとも一般的と思われるスマホ(iPhone)とペアリングした状態での音を聴いている。
ペアリング自体は簡単で、本体のペアリングボタンを押すとボタンが点灯し、ペアリングモードに入ったことがわかる。この状態でiPhone側に「Soundcore Model Zero」と表示されるので、それを選ぶだけでいい。
ペアリングができたらiPhoneで楽曲を再生する。まずはModel Zeroを木製テレビラックの上に載せ、『ボヘミアン・ラプソディ』のサントラを再生した。冒頭のギターオーケストラによるフォックスファンファーレやフレディのボーカルなどがふわりと広がる。情報量や鮮明さというよりも、聴き心地のいい音を優先している印象だ。
中盤、「We Will Rock You」の足踏みの迫力がもう少し欲しかったので、BassUpボタンを押してみる。すると低域の量感がアップして、ライブの雰囲気を盛り上げてくれた。この状態でもボーカルの再現は変化しないので、低音感が欲しい方はBassUpはオンのまま使ってもいいだろう。
なお音量調整はiPhone側で行なっているが、試しにiPhoneのボリュウムは中点くらいにしてModel Zero側を上げてみると、かなりの大音量まで再生できた(さすがにこんな大音量で聴くことはないと思うけど)。
その後、女性ボーカルやシンセサイザー、クラシックなど色々なジャンルを再生してみたが、どのジャンルを再生してもウェルバランスなサウンドを奏でてくれる。特にどこかの帯域を強調するとか、メリハリを付けるといったことをしていないのだろう。素直な音づくりがされていると感じた。
試しにModel Zeroをテレビラックから同じく木製のベンチに載せ替えてみたところ、わずかながら低域が寂しく感じられた。BassUpをオンにすると低域感が出てくるが、ロックやクラシックを中心に楽しみたいなら、本体はしっかりした台の上に置いた方がいいだろう。
Model Zeroは最大6700mAhのバッテリーを内蔵しており、約3時間の充電で最大約10時間の再生が可能という(音量や内容により異なる)。本体サイズはW256×H240×D128mm、重さ約2.0kgで、しかもIPX5の防水規格(すべての方向から噴水流を受けても影響がない)をクリアーしているので、屋外での使用も安心だ。