英オーディオラボ8300モデルラインナップに
ステレオとモノーラルパワーアンプが追加
1980年代に登場した英国はaudiolab(オーディオラボ)8000シリーズは、比較的小型で簡素な外観、しかしあか抜けた意匠を与えられ、小粋なオーディオのある生活を提案して独自の存在感を放っていた。それが近年、設計者のJan Ertnerを迎えて新たに8300シリーズを発表して日本に再登場した次第。
ここではステレオとモノーラルのパワーアンプを試聴し、またペアとして好適のUSB DAC付きCDプレーヤー8300CDとも組み合わせてみた
まずはステレオパワーアンプの8300XP。表は明るいグレー塗装の一枚板であり、ロゴや型番はごく控えめだ。裏面はアンバランス/バランス入力の切り替えとリモート制御用12Vトリガー端子がある程度。出力端子はパラ接続でバイワイヤリングに対応。
定格出力はステレオ140W(8Ω、1kHz)だが、もう1台8300XPを追加して2台を使ってのブリッジ接続では出力480W(同)となる。外観は控えめだけれど結構な実力者なのだ。回路技術など不明だが、OCC銅の最上位グレード線を信号系や電源系に起用している。
モノーラルの8300MBは横幅が8300XPの半分弱であり、2台を並べて収まりやすいサイズに仕立てている。内部の2つのアンプをブリッジ接続しており、出力は250W(8Ω)だ。つまり8300XPのブリッジ接続より出力値は低いが、設置面積が同等でこの大出力を1台あたりでひねり出すのだから巧みな設計方針である。もちろん電源部から筐体までLとRが完全独立だから、チャンネルセパレーションなど音質上の利点があるのは間違いない。
まずはSACDプレーヤーをデノンDCD-SX1、プリアンプをアキュフェーズC2850、スピーカーはモニターオーディオPL300Ⅱとして視聴。8300XPでは特定帯域や楽器の誇張感がなく、実になめらかなタッチと安定した質量感で豊かな響きを送り出す。個々の音像は小気味よく立体定位し、時に艶やかな音色美を聴かせる。瞬発力や鮮鋭感はほどほどであり、どのような音楽ジャンルでもあか抜けたタッチに仕立てている。1960年代の男声ヴォーカルやビッグバンドジャズなど各パートがたっぷりの余韻を率いて艶やかで実に伸びやかだ。それは近年の大オーケストラでも同様。一見鮮明志向ではないけれど、中身の詰まった音像が自然体で立体定位し、フレージングが実に明瞭という音楽志向に仕立てている。
オッポデジタルのUHDブルーレイプレーヤーUDP205を使っての『ブレードランナー2049』の2ch再生では声の実体感、据わりのよさが好ましいし、混沌とした雰囲気からわき出す効果音の表情が明瞭だ。また8300CDとは内部の音量調整を使ってプリアンプなしで視聴。これはいっそう成熟味と端正なタッチが際立ってくる。使いやすさともどもシンプルシステムの愉悦を確かに伝える好適な組合せだ。
モノーラルの8300MBでは描写力が段違いに向上する
8300MBはダイナミックレンジの余裕、瞬発力、低域の底までひねり出す力、そしてなによりも音像を立像として彫琢する描写力が段違いに向上する。最近よく聴くヴィック・ダモン「ザ・シングス・ウィ・ディド・ラスト・サマー」(『いつか聴いた歌2』所収:SICP30408〜9)の歌など、フランク・シナトラ以上の美声が広い仮想音場の中で実像として姿を現す。そしてその豊潤な余韻が他のパートにも感染するというほどに、全体の濃密にして清新な響きを牽引するのだ。ジョニー・ホッジスのビッグバンドジャズも低音管楽器群が床を這い、ソロの高声を空高く押し上げる効果を再現して臨場感が際立つ。クラシック系も荘重にして緻密、また背後に隠れていた精妙な和声や音色美が総覧されて感動的だ。これは8300CDとの組合せでも同様であり、華美な傾向を抑えつつ音場は奥行方向に深く展開される。
アナログ2ch出力による『ブレードランナー2049』は中身の詰まった音が過敏なほど弾け飛び、重厚感もひときわ。英国風の瀟洒な音楽志向に加えて、現代的な造形力を備えた優品として広く推奨したい。
POWER AMPLIFIER
audiolab 8300XP ¥320,000+税
●出力:140W×2(8Ω)、230W×2(4Ω)、480W(8Ω、ブリッジ使用時)
●接続端子:アナログ音声入力2系統(RCA、XLR)
●寸法/質量:W444×H149×D367mm/16kg
audiolab 8300MB ¥400,000(ペア)+税
●出力:250W(8Ω)、350W(4Ω)
●接続端子:アナログ音声入力2系統(RCA、XLR)
●寸法/質量:W216×H150×D362mm/9.5kg
問合せ先:(株)イースタンサウンドファクトリー TEL045(548)6592