若手映画監督&ミュージシャンの登竜門となっているMOOSIC LABの2017年度観客賞を受賞した『少女邂逅』が、6月30日より新宿武蔵野館ほかにて公開される。少女時代の瑞々しい青春模様を、美と醜を織り交ぜながら紡ぎあげ、国内外で大きな注目を集めている話題作だ。主演(W主演)には、ミスiD2016のグランプリを受賞した保紫萌香を起用し、彼女の持つ他を寄せ付けない圧倒的な透明感を、存分に映像に焼き付けている。ここでは、小原ミユリを演じた保紫萌香にインタビューした。

――主演作がいよいよ公開されます。いまのお気持ちを教えてください。
 ありがとうございます。だけど……撮影したのは一年も前なので、いまの私がやったらまた違うミユリができたんだろうなって思う部分もあります。まだまだ未熟なんですけど、それよりも未熟な自分を見ているようで、ちょっと恥ずかしいです。

――うれしさよりも?
 いえいえ、本当にうれしいです。同時に、どんな評価――自分と作品が――を受けるのかなって考えてしまって、興味深くもあり、不安でもあります。

――ミスiD2016の受賞会見では、お芝居がしたいとおっしゃっていました。
 本当にありがたいです。その時(撮影時)の私のすべてが詰まっています。とても大切な初主演作になりました。

――話は戻りまして、オーディションで覚えていることは?
 とにかく全力で飛び込んで行きました。おかげで、自分の持っているものは出し切った! という感覚を持てたので、清々しい気持ちで帰途につけました。

――志望した役は最初からミユリ?
 はい、もうミユリ一本です。(富田)紬については、美人転校生という設定だったので、そこはもう自分とは違うなと思って(笑)。オーディションの時点では、ミユリの細かい部分までは分からないまま演じましたけど、自分もいじめられていたことがあるので、当時の苦しみを一瞬引き起こして、出し切りました。

――ミユリの役づくりはいかがでしたか?
 一番印象に残っているのは、監督が私(ミユリ)をブスにしたいっておっしゃっていたことなんです。髪は長くてぼさぼさで、前髪で目も隠れちゃっているし。なので、演じるときには、なるべく表情を作らないことを心がけました。仕上がりを自分で見て、これが私!? って驚くぐらいでしたけど(笑)、監督の狙いに応えることができてよかったかなって思います。

――内面(性格)の役づくりは、外見の後に?
 いえ、私の場合は、内面が先だったように思います。冒頭からいじめのシーンがあるので、悔しいとか、恨みとか、怒りなどのすさんだ感じを想像しながら、それを全開にするようなお芝居を心掛けました。実際の体験を活かす部分もありましたけど、やはり現場のやり取りの中で生まれるもののほうが強かったかなと感じています。一番は、大切にしていたカイコを投げ捨てられるシーンで、そこはものすごい怒りが込み上げてきて、ミユリとして生きられたところだなって思います。けど、それ(怒り)が出ると、ああいうすごい顔になるのかって、自分でも驚きました。

――ミユリは紬と出逢って、だんだんと性格が変わっていきます。
 そうなんですよ。その変化を演じやすいように、できるだけ台本に沿った撮影になるようスケジュールを組んでもらいましたので、感情の作り方を含めて演じやすかったです。

――監督のコメントで、撮影4日目から目つきが変わったとありました。
 覚えていないんですよ。私としては、あるところから急にギアを変えたということはなくて、最初から本気でぶつかっていきましたから。でも、今思えば、撮影のスケジュールはかなり過酷だったので、段々と余裕がなくなっていって、追い詰められて……というのが、その理由にあるのかもしれません。

――ちょっと話は戻りますが、紬と出会うシーン(カイコを投げ捨てられたシーンの後)はいかがでしたか?
 そこはもうモトーラさんのお芝居と、枝監督の手腕で、監督が狙ったものをリアルに感じられるシーンに仕上がったんじゃないかなって思います。

――その後の展開には、少しファンタジー要素も感じられました。
 そうですね。ミユリと紬の関係性を描くあたりでは、ファンタジー的な映像も多くあったように思います。ミユリからしたら、やっと私を見つけてくれたという紬の存在は大きくて、どんどん彼女を好きになっていく! でもその一方で、ミユリの中では常に紬に対する心情は変化していて、大切な人だったのに、だんだんかみ合わない部分が出てきてしまうんです。そこは、演じていても、私自身(の心が)揺さぶられたところです。

――ある意味、嫉妬のようなもの?
 もちろん、その気持ちもあると思います。でも、そうした想いはミユリの中だけに芽生えてくるもので、紬はまったく感じていないんです。そうしたモヤモヤが大きくなっていって、あのラストに繋がるんです。

――本作は、監督の実体験がベースになっているとあります。監督からなにか指導やアドバイスはありましたか?
 特にこうしてとか、こうだったという話はありませんでした。お芝居面でも、結構私に任せてくださったようで、スタッフさんたちから、(あまりにも何もしてないので)大丈夫なのかという声があがるぐらいだったんです。ただ監督自身からは、この一年で一番人生をかけた存在だとは、言ってもらいました。

――さきほど、モヤモヤが……という話をされましたが、それが段々大きくなっていくのが、あの演出(劇場で確認してね)につながるのでしょうか?
 そうですね。アレはリアルではなくて、ミユリからみた紬の印象を比喩的に表現しているもので、いわば紬に感じている恐怖を形にしたものだと思っています。

――ラストシーン(駅)の保紫さんの受け取り方はいかがでしょう?
 ミユリの中で、紬に対する疑惑や不信感が広がっていってしまった結果だと思っています。

――その後のミユリは?
 勉強にまい進しますが、それも紬を忘れるための手段でしかなかったのかなと感じています。

――今日(取材日)は、その後のミユリを描いたスピンオフの撮影があったと聞きました。
 はい。スピンオフでは、ちょっと成長したミユリが出て来るんです。全体的な構成としては、かけがえのない時間=高校時代を、紬とミユリを通して再確認するという展開になっていて、二人が一番楽しかったシーンを演じました。どんな仕上がりになっているのかは、公開をお楽しみに。

――ところで、ほかの共演者で覚えているのは?
 先生役の松澤匠さんです。とある映画を見たときに、この役者さん素敵だなって思って名前を調べたその日に、枝監督とお会いする約束があって。そこで、先生役を松澤さんにお願いしようと思っていると聞かされて、とってもびっくりしたのを覚えています。めちゃくちゃうれしかったです。まさに邂逅でした(笑)。

――本作に出演しての感想をお願いします。
 監督が繰り返しおっしゃっていたのは、どんなに自分のいる環境を変えても、結局は自分が変わらなければ、何にもならないということで、周りに何かしてもらうとか、価値を見つけてもらうのを待つだけでは何も得るものがないよ、っていうことだったんです。それが見てくださる方に届くんじゃないかなって思います。

――ミスiD2016グランプリ受賞から1年半が経ちました。ご自身の夢は叶っていますか?
 はい、徐々に夢に向かって進めていると思います。当時は、漠然とした想いだけで生きていましたけど、それが段々と明確なビジョンになってきて、目標が現れてきて、やりたいことができているという生きがいをいま、強く感じています。すごくうれしいです。
 でも、まだまだ自分が目標とする段階には達していないので、そこへ向けて精進します。今春には大学も卒業して学生という立場ではなくなりましたから、甘えを捨て、腹を据えて、やっていきたいと思います。

映画『少女邂逅』
6月30日より、新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー
<キャスト>
保紫萌香、モトーラ世理奈
土山茜、秋葉美希、近藤笑菜、斎木ひかる、里内伽奈 ほか
<スタッフ>
監督・脚本・編集:枝優花
音楽:水本夏絵
配給・宣伝:SPOTTED PRODUCTIONS
(C)2017「少女邂逅」製作委員会

●舞台挨拶(@新宿武蔵野館)
6/30 1回目:13:30~
6/30 2回目:14:15~

●アナザーストーリー
6/29(金)公開(詳細後日発表)

■関連リンク
映画『少女邂逅』
保紫萌香

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