パナソニックのIPS液晶パネルをバックライトエリア駆動する4Kモデルは複数ラインナップされている。高品位志向のとしては「EX850」シリーズ、普及価格帯として「EX750」シリーズが用意されていた。今回の新製品「TH-55FX750」はEX750より機能面で上位であり、画質についても「進化した」という。

画像: TH-55FX750

TH-55FX750

 新機軸は「転倒防止スタンド」仕様だ。これはスタンド部が吸着式で置台に吸い付くことで薄型の弱点である倒れやすさに配慮したもの。置台表面に平滑性があり敷物を介しないという条件ならけっこう強固な印象だ。

 画質については"EX"シリーズより向上した点が多数挙げられている。まず「ヘキサクロマドライブ」。"色の6軸制御"だが画質全般にかかわるプロセスだ。それが"映像を部分ごとに解析し、適切な画質処理を行う"ことで質感が向上したという。またこの処理機能の心臓部である3次元カラーマネジメント回路は補正ポイントをEXシリーズ比約1.6倍に増加させ、暗部も明部も色の再現性を向上させている。これらはHDR映像を意識したものだろう。またUHD Blu-rayのHDR10の他にHLG(ハイブリッド・ログガンマ)にも対応したのが新しい。

 もうひとつ「Wエリア制御」も訴求している。これは映像を部分ごとに制御する「エリアコントラスト制御」と「バックライトエリア制御」を組み合せたもの。画面を分割してバックライトの明るさを制御し、それに合わせて各区画の画質要素を調整するのは定石だが、バックライトの分割数よりもきめ細かい映像の小区画ごとに調整を行なうことで、黒の締まり、コントラストの拡大、質感の向上を図るということだろう。

 ついでにアップコンバート機能の「4Kリファインリマスターエンジン」も映像の部分ごとの解析、処理を行なう新バージョンだ。こうなると、FXシリーズに採用された新技術は上から降りてきたのではなく、むしろこれから上位機種にも展開される新機軸ではないだろうか。なにしろ画質が見事に向上しているのだ。

画像: 前シリーズのEX750からの見た目の大きな違いとして、スタンドの変更があげられる。地震などでの転倒を防止するために、テレビ台に吸着しやすいスタンドを新開発。吸着はワンタッチで行なえる、とても便利な機能だ

前シリーズのEX750からの見た目の大きな違いとして、スタンドの変更があげられる。地震などでの転倒を防止するために、テレビ台に吸着しやすいスタンドを新開発。吸着はワンタッチで行なえる、とても便利な機能だ

画像: 端子類はすべて背面に配置されている。HDMI端子は4系統装備し、すべてで4K/HDR入力、HDCP2.2に対応している。ARC対応はHDMI端子1のみだ。そのほか、ビデオ入力とコンポーネント入力の共有端子を1系統配備している

端子類はすべて背面に配置されている。HDMI端子は4系統装備し、すべてで4K/HDR入力、HDCP2.2に対応している。ARC対応はHDMI端子1のみだ。そのほか、ビデオ入力とコンポーネント入力の共有端子を1系統配備している

隙のない高品位な映像。色階調など実によく再構築する

 視聴はまず地デジ放送から。少し暗くした視聴室にて、画質モード「スタンダード」を見ると、そのまま調整せずにスポーツ中継、ワイドショーなど次々と没入体験が出来た。たいていはすぐに欠点が見つかっていじくりだすのだが、これはまずは隙のない映像品位だ。地デジ放送の解像感や鮮度、色の深さ、質感の緻密さなどかなりの高水準だ。それに部屋を明るくしても印象はさほど変わらない。「明るさセンサー」がよく機能しているのだ。また「明るさセンサー」を切り、「シネマプロ」を選んでフィギュアスケートの中継を見たが、バックライトを大きく絞り、ピクチャー(コントラスト)を少し絞る程度で階調性が豊かな中継映像を楽しめた。「色温度」を『1』から『2』に落としても氷の白い純度感が充分に保たれている。巧みな画質補正技術の成果だろう。

 再生機に同社の「DMR-UBZ1」を使い、BD『プレステージ』は「シネマプロ」にてWスピード(倍速表示)をオフにして評価。チャプター4はマジシャンの楽屋やステージ場面が暗部の濃い色調、投光の青白さなど緻密な色と鋭い明暗比が混在する。その表現域をよく収めているが、少し甘いので調べてみると、「オプション機能」の中に「1080pドットバイ4ドット」があったのでこれをオンにする。タテヨコ2度書き変換になるのでキレのいいタッチになり、立体感や遠近感が増す。またRGBのゲイン調整は「B」を『(-)2』「R」を『(+)2』として炎の色の実感を得た。

 UHDブルーレイ『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』はチャプター4。鋭いフラッシュバックと暗い畑の場面。フレーム補間の『Wスピード』の「弱」は「切」に。ここは白ピークの明るさはともかく、黒側の見通しや微妙な暗色の描写が難しい。バックライトをあまり下げると元気がなくなるので、ガンマを2.2から2.4とした。パネルの黒輝度は変わらないが、暗部が急降下で奈落に落ち込むので黒が引き締まり、暗部の階調や色付きが維持される。これ以上は分割数の多い「バックライトエリア制御」でないと無理だろう。UHDブルーレイ『宮古島~癒しのビーチ~』は「スタンダード」にて調整すると、目覚ましい南国の風景が、広大な遠近感をともなって出現。遠い雲の立体感や砂浜の細密感、海の色の深い階調など実によく再構築するのだ。これは上位機と比較するべき秀逸な画質だ。

画像: 映像モードは7種類用意されていて、SDR入力とHDR入力では設定値に違いはあるが選択できるモードは同じだ。地デジ/BS視聴では「スタンダード」を、UHDブルーレイの映画視聴では「シネマプロ」を使っている

映像モードは7種類用意されていて、SDR入力とHDR入力では設定値に違いはあるが選択できるモードは同じだ。地デジ/BS視聴では「スタンダード」を、UHDブルーレイの映画視聴では「シネマプロ」を使っている

画像: 「シネマプロ」モードは色温度がもっとも低い「低2」がデフォルト値で、基本の完成度はきわめて高い。イコライジングとして『ビビッド』を「オン」→「オフ」に切り替えた。また、地デジ/BS視聴時には『明るさオート』を「オン」にした際の映像が好ましかった

「シネマプロ」モードは色温度がもっとも低い「低2」がデフォルト値で、基本の完成度はきわめて高い。イコライジングとして『ビビッド』を「オン」→「オフ」に切り替えた。また、地デジ/BS視聴時には『明るさオート』を「オン」にした際の映像が好ましかった

画像: リモコンは従来機EX750シリーズと変更はない。Netflixへのダイレクト接続ボタンや、音声検索ボタンが使いやすい場所に配置されるなど、使い勝手が考慮されていることがわかる

リモコンは従来機EX750シリーズと変更はない。Netflixへのダイレクト接続ボタンや、音声検索ボタンが使いやすい場所に配置されるなど、使い勝手が考慮されていることがわかる

4K LCD DISPLAY
PANASONIC
TH-55FX750
オープン価格(実勢価格26万円前後)
●画面サイズ:55型
●パネル:IPS
●画素数:水平3840×垂直2160
●内蔵チューナー:地上デジタル×3、BS/110度CSデジタル×3
●接続端子:HDMI入力4系統、デジタル音声出力1系統(光)、USBタイプA 3系統、LAN 1系統 他
●寸法/質量:W1235×H770×D245mm/24kg
●ラインナップ:49型(実勢価格22万円前後)、43型(実勢価格19万円前後)

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