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5 │ アルテック 756B

懐が深く、心をがっちりと掴む再生音。密閉箱よりも音作りの可能性を感じる

画像: 懐が深く、心をがっちりと掴む再生音。密閉箱よりも音作りの可能性を感じる

【Vintage/25cm】
アルテック 756B

アルテック756Bの前身モデルであるWE 756Aは1947年に登場した「ニューライン・オブ・ワイドレンジ・ハイクオリティ・スピーカー・シリーズ」の10インチユニットで、エンクロージュアは2.5立方フィート(約70リットル)の密閉箱が推奨されている。本機756BはWE 756Aと同様、極めて生産数の少ないユニットで、製造は1950年代と思われる。ボイスコイルインピーダンス8Ω、再生周波数特性65〜10,000Hz、最大入力20Wという仕様。(土井)

土井 25㎝口径ユニットの最後はアルテック756Bです。グッドマンAXIOM80よりもバッフルの連結部を少し強めに締めましたが、ひと通り聴いてから、さらに増し締めしてみました。

 スケール感、音色ともに申し分のない音です。20㎝口径の755に比べると圧倒的なスケール感があり、なおかつ包容力のある音色をしっかり聴かせる、聴く人の心をがっちりと掴む再生ですね。耳だけでなく、心で音楽を楽しめるような鳴り方です。とても気に入りました。「サン゠サーンス」「エリントン&ベイシー」「ちあきなおみ」のどれを聴いても音楽そのものの核心がよく伝わってきました。

杉井 AXIOM80とはガラリと性格が変わりましたね。AXIOM80はいかにも良質な音で、背筋まで伸びるような鳴りっぷりでしたが、こちらはもっとゆったりとした気分で音楽を聴かせてくれる、懐の深さが感じられます。すんなりと身体に音楽が染み込んでくるんです。本来は、756や728、755系は密閉箱に入れるのが基本ですが、756Bは平面バッフルにすごく合うんじゃないかなと感じました。トーンコントロールで少し高域を上げていますが、とてもいいバランスが得られています。

 「サン゠サーンス」はオーケストラが雄大なスケール感で再現されました。「エリントン&ベイシー」はAXIOM80よりもゆったりとしていて、アメリカのジャズを聴いているという実感が味わえます。「ちあきなおみ」だけはバッフルの連結をさらにキツくして聴き直しましたが、少し低音が出にくくなった印象があって、ボルトを締め直す前と後の中間ぐらいがちょうどいいかなという感じです。締め直す前はゆったり聴ける安心感があって、締め直すとモニター的でありながらスケール感を伴う音に変化しました。いずれにしても、ウェルバランスで、中間の音なら文句なしというところです。

土井 そうですね。しかし、その中間の音には2〜3時間聴いていないと辿り着けないかもしれない(笑)。WE756Aは密閉箱で良い音で鳴らせるんですが、アルテック756Bは密閉箱に入れて完璧と思えるところまで音を詰められたことがないんですよ。しかし、今回初めて平面バッフルで聴いてみて、この方法ならもっと音を作れるかなと思いましたね。25㎝口径というサイズはやはり中低域に余裕があって、スケール感も出る。

 「サン゠サーンス」も低域が充実してゆったりと音楽に浸れるし、「エリントン&ベイシー」も大らかな演奏で、これぞアメリカの音という印象でした。最初の調整だと少し締め方が緩くワイドレンジ感が損なわれる感じがあり「ちあきなおみ」もギターが逞しくなりすぎる感じがありましたから、さらに締め付けて聴きましたが、杉井さんが仰るように締めすぎると失われる部分が出てくる。一発勝負で思い通りのバランスを作るのはなかなか難しいんですよ。

6 │ JBL D123

スピード感、力感と開放感いずれも文句なし。平面バッフルとの抜群の相性が聴けた

画像: スピード感、力感と開放感いずれも文句なし。平面バッフルとの抜群の相性が聴けた

【Vintage/30cm】
JBL D123

1955年よりグレー塗色のボディで16Ω仕様にて発売。JBL初のコルゲーション付きのコーン紙と3インチ径のジュラルミン製エッジワイズ型ボイスコイル採用モデルである。1967年より黒フレーム、及びインピーダンスが8Ωへとマイナーチェンジされる。オリジナルのシステムでは、075+N2600、あるいはLE20+LX2とによって2ウェイ化する選択肢もあった。(杉井)

土井 30cm口径フルレンジユニットの1機種目です。ここからはサブバッフルは用いず、直付けです。連結部は先程のアルテック756Bで締め直した後とほぼ同じで、やや強めに連結させた状態です。

 このユニットを使ったマルチウェイシステムと今日の鳴り方では音の鮮度がまるで違います。ネットワークがないことで、ここまで音が変わるのかと驚きましたね。「サン゠サーンス」の音の立ち上がりの速さで、まず、それが感じられました。そして「エリントン&ベイシー」も桁外れのスピード感です。「ちあきなおみ」は声の生々しさに驚かされました。隣のブースで生で歌っているものをモニタースピーカーで聴いているかのような、録音したものとは思えない新鮮な声を聴くことができました。JBLユニットは、私はトゥイーター以外使ったことがないのですが、これは素晴らしい鳴り方でした。

杉井 JBLのユニットは最初期から70年代まで一貫したトーンポリシーを持っていて、時代によって極度に音が違うということが他のメーカーと比較すると少ないと思っています。このD123も、やはりJBLらしい音ですね。過去にD130やD131と比較試聴したことがありますが、D123はマグネットサイズが小さいですし、どうしてもD131の廉価版的な音になると思っていました。しかし平面バッフルで鳴らすと、マグネットが小さく制動が強くない分、低音が程よく緩やかで、量感を稼げるという印象です。ここまで聴いてきた中では一番豊かな鳴り方だったのではないかと思います。「サン゠サーンス」は輝かしいピアノ、哀愁と華やかさの両方を感じさせるオーケストラの再現に圧倒されました。

 「エリントン&ベイシー」は、こういう音楽を再生するためのユニットではないかと思えるほどハマっていましたね。もっと規模の大きなJBLのシステム、375ドライバーを使ったようなシステムにも引けを取らない、伸び伸びとスケール感のある音でした。晴れわたって気持ちのいい音です。「ちあきなおみ」も量感、情感ともに豊かでグラマラスな鳴り方です。トーンコントロールで少し高域を上げましたが、それで十分です。上に075トゥイーターを足したりしたら逆にバランスが崩れるのではないかというくらい、フルレンジでしっかり聴ける音でした。平面バッフルで聴くのにかなり向いているユニットではないでしょうか。

土井 D123と、この平面バッフルの音なら、買いですね。まったく文句のない音です。「サン゠サーンス」を聴いて、センターキャップの存在がちゃんと生きていると思いました。輝きがあって、色合いと味わいが加わっているんですね。JBLのシステムには総じて抑制的な鳴り方のイメージもあるんですが、ここではそういった印象とは反対の開放的な音を聴くことができました。D123はこれまで何度か聴いてきましたが、伸び伸びとしていて一番良い音だったと思います。

 「エリントン&ベイシー」はスピード感のある再生ですが、ベースの足取りが私の感じるJBL的なニュアンスを帯びています。でも、それがマイナス要素にならず、全体の力強い鳴り方に一役買っている。「ちあきなおみ」は、私がこの曲のストリングスを聴くときに思い描く通りの音が鳴っていました。私はこのストリングスに、寒々とした冬の夕暮れのような情景を重ねているのですが、それがよく出ていたんです。声も低いところの再現が素晴らしい。これがベストな鳴らし方ではと思えるような音の出来ですよ。

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