現場その1:Music Bar ロックンロール以外全部嘘

画像: 新宿 Music Barのステージに設置した「EON ONE PRO」

新宿 Music Barのステージに設置した「EON ONE PRO」

 「EON ONE PRO」を携えて早速現場へ。まずはMusic Bar「ロックンロール以外全部嘘」(東京都新宿区歌舞伎町2-45第2与三郎ビル7F)に持ち込んでみた。客席はバーカウンター4席とボックス21席、ステージは横4m×奥行2.5m×高さ2mの設えで、立ち見含めて観客が40人も入れば満員という程良い狭さの空間だ。

 ステージ後ろ寄りの両サイドに「EON ONE PRO」を各1セット設置、リニアアレイ部は連結パーツを2つ使用し最も背高の状態で使用した。ステージ上手側の「EON ONE PRO」のミキサー機能を介しPASS THRUから下手側の「EON ONE PRO」へ送る。

 「EON ONE PRO」は水平100°×垂直50°の指向特性を持つ。ハウリングマージンに強いこのシステムのカバーエリアは、モニター・システム(スピーカー&ミキサー)の役割も同時に果たせるようになる。

 この日は3人編成が2組と弾き語りが4組出演した。お客様は20名ほど。3本のヴォーカルマイク「シュアSM58」は1~3chに入力しヘッドゲインを16時方向に設定。ピエゾのピックアップをマウントした「マーティンD-28」アコースティックギターはDIなしで直接4chのHI-Zフォーンジャック(3~4chがスイッチ切り替えによりHI-Zに対応)へ入力、ゲインを9時方向とした。またフィッシュマンマグネチックピックアップをマウントしたアコースティックギター(ギブソン シェリル・クロウ・シグネチャー・サザンジャンボ)もケーブル差し替えで4chを使用、こちらのゲインは10時設定にて充分な出力が得られた。アルトサックスにはファンタム電源が必要な「シュアBeta98H/C」を使用したため1chを使用した。マスターボリュームは16時に設定したが、入力インピーダンスが40kΩの設定だからだろうか、音像がフルで迫ってくるような勢いを感じるが一向に歪みは生じない。こういったところまで想定した上でのミキサー仕様なのか…ミュージシャン自身が細かいシステム・チューニングを施さなくとも、手早く「EON ONE PRO」のポテンシャルを発揮できるように作られていることに納得がいった。無茶なレベルを少しばかり送り込んでも内蔵リミッターがスムーズにリリースし歪みのない美しい「JBL」サウンドが続く。例えば、ローEQはピックアップ付きアコースティックギターのローコードに反応して素早く低域を補ったり、100Hz~125Hz周辺に現れる男性ヴォーカル特有の出っ張りも自然に収めながら、8インチというサイズ感を超えた心地良いベースサウンドを奏でていたと思う。

 一方の高域ユニットの出音にもTREBLE EQが素直に反映されていた。特にヴォーカルの子音や歯擦音等のシビランス・コントロール、ピックアップ付きアコースティクギターの高音弦で生じる摩擦音の処理がしやすい。内蔵リバーブは、残響時間やサウンドキャラクターの変更はできないものの、単音で聴くと3msec.ぐらいのリバーブタイムが確認できる。なるほど「Lexicon」を思わせる音色だ。実際に3人のヴォーカルとアコースティックギターの絶妙なリバーブキャラクターの混ざり具合はごく自然で、わざわざ外付けのラックマウント・リバーブを持ち込む必要なしと思わせる仕上がり。総じて、スピーカーの形状は違えどもシステムが最大パワーを発揮した時に「JBL」らしいロックのドライブ感が表現されるようだ。この辺りのシステム・コントロールのさじ加減は「さすがJBL!」と賞賛を送りたくなる。

 ライヴ終了後に演奏者と話をしてみたところ、こういったスタイルのコンパクト・ラインアレイ・スピーカー・システムは1本のみの使用でも成立するが、ペアで使用すると両耳でモニターできるため、やはりプレイしやすかったとのこと。常連ギタリストからも「ギターの低音のダイナミックス感に満足、従来のスタンド立てポイントソース・スピーカーとの音質の差を感じた」との感想が訊けた。実際、ステージから客席後部まで約6mほどの空間だったが、「EON ONE PRO」はダイナミックスの効いたクリアなライヴサウンドを提供し、観客の皆様も大いに盛り上がってくれた。

画像: 電源を入れるとサブウーファーの「JBL」ロゴ下LEDが白く点灯。暗い場内でも視認しやすい

電源を入れるとサブウーファーの「JBL」ロゴ下LEDが白く点灯。暗い場内でも視認しやすい

現場その2:調布市仙川フィックスホール

画像: 『MURASAKI ROCK FESTIVAL』の会場となった「調布市仙川フィックスホール」。奥まった1階席に対し張り出す2階席。上手と下手でリニアアレイの高さを変えられるのは「EON ONE PRO」ならではの大きな強味

『MURASAKI ROCK FESTIVAL』の会場となった「調布市仙川フィックスホール」。奥まった1階席に対し張り出す2階席。上手と下手でリニアアレイの高さを変えられるのは「EON ONE PRO」ならではの大きな強味

 続いての催しは「東京調布むらさきロータリークラブ」主催の『MURASAKI ROCK FESTIVAL』。高校生有志によるロックバンド数組が出演するコンテストである。会場となった「調布市仙川フィックスホール」(東京都調布仙川町1-25-2アヴェニュー北プラザ2F)は2階席含め約120名のキャパシティと10m以上の天井高を持つ小ホール。客席の壁面はコンクリート造りとなっており、ステージ中央部に反響板を常設、小規模ながら「スタインウェイハンブルグB211」を所有するクラシックコンサートも視野に入れて設計されたホールである。ここにメイン・スピーカーとして「EON ONE PRO」を持ち込み、上手下手に各1台を配置、会場がやや響き気味だったためステージの反響板に白布を被せ、さらにステージ上手側には黒布を立て無駄な反射音を抑えた。

 今年の出演バンドは計9組。基本的にドラム、ベース、ギター、ヴォーカルといったスタンダードな編成で、バンドによってキーボードやコーラス数名が加わる。これにMCマイク2本を加えて最大インプット数は22chに達したため今回は独立したミキシング・コンソールを用意、そのメイン出力を「EON ONE PRO」のライン入力へと接続、マスターボリュームはフル出力とし、内蔵EQはフラットの状態からリハーサルを開始した。

 コンテストであるから当然審査員も存在する。ゴダイゴのギタリスト浅野孝巳氏を審査委員長に、高見一生氏(Gtr)、依知川伸一氏(Bass)、西川貴博氏(Dr)というプロフェッショナルな面々が2階席最前列に着席。各バンドのプレイに対し実に的確かつ細やかなアドバイスを授ける場面も一興で、我々は正確なサウンドを審査員席に提供することが求められた。当然「EON ONE PRO」が担う責任も大きい。

 まずはステージから約15度上に向けておおよそ7mの距離を100db近い音圧でヴォーカルを飛ばさなければならなかった。何故なら、楽器にはマイクを立てているものの会場内には生音も充分に行き渡っていたためにヴォーカルはひときわしっかりとPAする必要があったからだ。そこで上手側の「EON ONE PRO」は連結パーツを2本とも使いもっとも高い位置にリニアアレイをセット、逆に下手側の「EON ONE PRO」はパーツを1本減らし1階客席をカバーするようにした。さらにヴォーカルの芯の部分(1kHz~2kHz)をグラフィック・イコライザーで6dbほどブースト、ミッドレンジのピークを敢えて加味することでさらに際立つようにした。結果どちらのエリアにもクリアなヴォーカルが拡がった。

画像: 上手側の「EON ONE PRO」

上手側の「EON ONE PRO」

画像: 下手側の「EON ONE PRO」

下手側の「EON ONE PRO」

 念のため補助用としてポイントソース・スピーカーもステージ上に組んでいたのだが、リハーサル終了後に「EON ONE PRO」のみでいける!と判断し、補助スピーカーは早々に撤収することとなった。

 高校生たちの初々しい演奏の後は審査委員たちによる模範演奏が披露されたのだが、さすがプロは出音に色がありアンサンブルも素晴らしくミックスに手を入れる隙もないほどだった。ライヴ終了後に主催者より「ヴォーカルが映えてすごく良かった」というコメントとともに大きなOKサインをいただき胸を撫で下ろした。

画像: 『MURASAKI ROCK FESTIVAL』にて、審査員バンドのリハーサル風景

『MURASAKI ROCK FESTIVAL』にて、審査員バンドのリハーサル風景

 以上2本の現場を通じて、「EON ONE PRO」はマイク、ラインともにマスターボリュームをフルレベルで使用しても諸々が破綻しないシステムであることを検証できた。あまり難しいことは考えずにミュージシャンが楽器感覚で「EON ONE PRO」を戸外に持ち出し、気楽なストリートライヴを楽しむのにお勧めしたいモデルである。同時に企業内でのミーティングやプレゼンテーションにおいても素人には厄介なハウリングを起こすリスクも少ない。小規模のライヴPAであればサウンド・エンジニアのサポートなしでの完結も可能なワンアンドオンリーのオールインワンPAスピーカー・システム、それが「EON ONE PRO」だ。個人的には機材車に忍ばせ、広い会場を後方支援するディレイ・スピーカーとして電源場所を気にせず設置、といった使い方もアイデアとして提案したい。

 最後にこの取材に際し、発売間もなくまだ未知数であった「EON ONE PRO」の現場での使用を快諾していただいた新宿Music Bar店長の加藤 巧氏、「調布むらさきロータリークラブ」実行委員長の永川孝一氏を始めとする実行委員の皆様方、そして出演者の皆様に心より感謝を述べたい。

 

「EON ONE PRO」仕様
●周波数レンジ(-10dB):37.5Hz~18.5kHz●指向角度:水平 100°×垂直50°●最大音圧レベル:118dB SPL(ピーク)●ドライバー構成:LF=8インチ(203mm)、HF=2インチ(51mm)×6●パワーアンプ:250W(LF:130W+HF:120W)、Class D●入力チャンネル数:6(4モノラル+1ステレオ)●入力端子/形式:Ch1~4=XLR、標準フォーン(3P) 対応の複合型端子、Ch5~6:RCA またはステレオ・ミニフォーン●入力インピーダンス:Ch1~4=40kΩ(バランス、HI-Z ON 時の標準フォーンはアンバランス)、Ch5~6=[RCA]5kΩ(アンバランス)、[ステレオ・ミニフォーン]10kΩ(アンバランス)●出力端子/形式:モニターL/R=RCA、スルー=XLR●出力インピーダンス:モニターL/R=100Ω(アンバランス)、スルー=37Ω(バランス)●イコライザー:高域/低域=±12dB、シェルビング●電源:AC100V、50/60Hz●消費電力:140W●エンクロージャー:ポリプロピレン製、黒●寸法(W×H×D):使用時(最大)=267×2,023×400mm(除突起部)、収納時=267×592×400mm(除突起部)●質量:17kg●付属品:高域用スピーカー、連結パーツ×2、電源コード、和文取扱説明書

 

【PROSOUND REVIEW】JBL PROFESSIONAL EON ONE PRO by 高橋幹弥(MICKEY SOUND)【前編】はこちら >>

 

EON ONE PROに関する問合せ先:
ヒビノ株式会社 お客様問合せ窓口
TEL(03)5783-3110
http://proaudiosales.hibino.co.jp/

 

高橋幹弥(たかはし・みきや)
1987年、都内のプロ用ゲネプロ専用リハーサルスタジオ「芝浦スタジオ」入社、音響機材のプランや施工、またスタジオスタッフとして働きはじめる。1993年12月18日に「池袋Adm」をつくる計画を受け、音響プラン、施工、またオペレーターとして参加。当時は「芝浦スタジオ」の音響部SR事業部の責任者として、ARBのチーフエンジニアなど多くの音響現場の経験を積み、本誌SRリポートにも登場したTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやThe Birthdayのモニターを長きに渡って担当

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