今年7月20日、「ヒビノ」より新たな「JBL PROFESSIONAL」製品がリリースされた。名前は「EON ONE PRO」。スピーカー・スタンドや配線要らずといった手軽さが話題を呼んだオールインワンPAシステム「EON ONE」の充電式モデルである。内蔵された大容量のリチウム電池により1回のフル充電で約6時間の再生が可能、充電には5時間を要するが充電中も使用でき、搭載された6チャンネル・ミキサーはファンタム電源やBluetooth入力にも対応するなど進化を遂げている。このフットワークの軽さと最新の「JBL」サウンドをぜひライブバーやホール等の現場で使用してみたいと思いたち早速デモ機の手配を願った。
画像: 「EON ONE PRO」

「EON ONE PRO」

自宅にて

 「ヒビノ」の迅速な対応によりデモ機が早々にも自宅に届く。梱包を解いてまずは「格好良くなったナァ!」という第一印象を持った。「EON ONE」よりボディがコンパクトになって全体が引き締まったようだ。「EON ONE PRO」はサブウーファーの背面にリニアアレイ・スピーカーとその連結パーツを収納できる設計で、その状態では我が家のリビングにある家庭用空気清浄器とさして変わらないサイズ感、むしろ小さいぐらいに見える。これならリビングでのBGM再生や、倉庫や事務所のエントランスで来客を出迎える「ウエルカムBGM」を再生するコンパクトなシステムとして活用するにも丁度良い。縦に6基の高域ユニット(2インチ)が連なったリニアアレイ部と8インチ・ドライバー搭載のサブウーファーから成るデザインは、ステージに置いてもとてもスッキリし客席横からの見切れも気にせず設置できるだろう。

画像: サブウーファーの背面部に収納されたリニアアレイと連結パーツ

サブウーファーの背面部に収納されたリニアアレイと連結パーツ

 「EON ONE PRO」には専用のブラックナイロン製キャスター付きカバーがオプションで用意されているそうで、我が家にもそのカバー共々届けられた。ドリーに「EON ONE PRO」を載せてカバーを被せ4箇所をフックで止めるというシンプルな構造ながらキャスターも頑丈なつくり。カバー上部に付いているキャリングハンドルを引っ張るだけで17kgの本体をスムーズに移動できる優れもので女性スタッフからも喜ばれそうな存在だ(編注1)。

画像: 「EON ONE PRO」をほこりや汚れ、衝撃から守る専用キャスター付きカバー(左)

「EON ONE PRO」をほこりや汚れ、衝撃から守る専用キャスター付きカバー(左)

 早速、製品に触れてみる。まずサブウーファー上部のトップカバー、これは3つの機能を兼用している。ひとつは「EON ONE PRO」を運搬するためのハンドルとしての機能。質量17kgの取り扱いにおいては安全面からもハンドルは重要なパーツとなる(持ち上げ時は両サイドに取り付けられた黒の金属金具がロックされていることを確認してほしい)。

 2つ目はミキサー部のツマミを不意に動かさないよう保護する役目を担い、3つ目は開けたカバーを連結パーツ(スペーサー)に立て掛けるとiPad等のタブレット・スタンドになる。ただしその状態で音を出すとビリビリとトップカバーが鳴ることがある。オフィスや講演会など静かな場所でのスピーチにはトップカバーを閉めての使用をお勧めしたい。

画像: トップカバー(ハンドル部)を開けるとミキサー部が露に

トップカバー(ハンドル部)を開けるとミキサー部が露に

 肝心の高域ユニットには、「JBL PROFESSIONAL」を代表する大規模ラインアレイ・スピーカー・システムの独自テクノロジーを応用した“Directivity Control Geometry”に基づき、6基の高域ドライバーが緻密な計算によってライン状に配置されていると訊き、早速「EON ONE PRO」でエリック・クラプトンを自宅で再生してみた。Bluetoothの接続ならミキサーのマスターボリューム下にあるBluetoothのスイッチを押すだけでパッチケーブルは不要、音量調節はタブレット側で行なう。聴きながらこのレビューを書いているが音量を下げてもリニアアレイ・スピーカーがサウンドのディテールを繊細に再生している。「Blue Eyes Blue」ではクラプトン愛用のギター「マーチントリプル0」のボディ鳴りしている音の輪郭が、耳の近くで鳴る鈴のように心地よく迫ってくる。BGMレベルでも音の解像度の高さがハッキリと分かる(小さい音量でも耳あたり良く仕上げてきたなァ~と感心する)。

画像: リニアアレイ・スピーカー。「JBL PROFESSIONAL」が長年培った確固たる理論に基づき高域ドライバーが整然と並ぶ

リニアアレイ・スピーカー。「JBL PROFESSIONAL」が長年培った確固たる理論に基づき高域ドライバーが整然と並ぶ

 さて、「EON ONE PRO」の質量は先述の通り17kg。これは「EON ONE」に比べ3kgの軽量化を実現している。パワードにしてこの数値は車に積み込む際にも助けられるだろう。リニアアレイ・スピーカーは専用連結パーツで直接サブウーファーに接続できスピコンなどの配線は不要。これは例えば12インチの2ウェイ型ポイントソース・パワード・スピーカーと比べても、従来の重たい3本足のスピーカースタンドに1.3mほど持ち上げマウントしなくても済むので設置が楽な上にすべてがスピーディーに進むと容易に想像がつく。

 リニアアレイ部のセッティング時に高さを調節できる536mmの専用連結パーツが2本入っており、これらを自由に組み合わせ個々を差し込むだけで配線が完了するようコネクターが仕込まれている。もちろんスピコン等のケーブル類が露出しないよう工夫されていて見た目もスッキリと美しい。2本のパーツをいくつ連結するかで高さをおよそ1,080、1,550、2,020mmの3段階に可変でき、使用する会場に合わせてチョイスできるのは嬉しいところだ。さらに差し込み部分には方向性があって裏にネジ穴がある方が後ろ側である。逆さまには差せないため逆相には決してならない仕組みとなっている。

画像: パーツの連結部分。左下の形状に適合するよう繋いでいくだけで正確なセッティングが完成する

パーツの連結部分。左下の形状に適合するよう繋いでいくだけで正確なセッティングが完成する

パワードアンプとバッテリー駆動

 内蔵されたClass Dパワーアンプの出力は250W(LF130W+HF120W)、この数値はパワード・スピーカー=1000Wオーバーが当たり前の昨今では一見低い数値のようだが、これは長時間におよぶバッテリー駆動での使用を熟慮した上でのことと捉えられる。例えば今の日本の都市部においてストリートミュージシャンのプレイを1000Wの出力で鳴らせばすぐに騒音騒ぎになるだろう。逆に250Wの出力でプレイヤーの周囲10mエリアにクリアな「EON ONE PRO」サウンドが響いたら歩行者もつい耳を傾けるに違いない。リニアアレイ・スピーカー自体の重さは1.2kg、手首を大切にするギタリストでも片手で容易にマウントできる。こうなると改めて「EON ONE PRO」を充電式とした目的が見えてくる。少し調べてみたが、パワードのコンパクトアレイ・スピーカーでバッテリー駆動が可能な機種は業界初ではなかろうか!? もしライヴ中に電源ブレーカーが落ち電源が供給されなくなっても内蔵電池でライヴが続行できるというメリットも望める! 本体のパワースイッチがONであれば例え停電していても最長6時間は音が鳴り続けることができるのだ。ミキサーのパワーインジケーター下にバッテリーインジケーターがあり、ここでバッテリーの残量を確認できるのも有り難い。過去に電源容量の少ないレストランでのライヴでブレーカーを落とした経験があるスタッフ(私?!)には心強い配慮だ。

画像: バッテリーの残量が確認できるインジケーター

バッテリーの残量が確認できるインジケーター

多様な入出力端子を持つミキサー

 ミキサー部の特長としては1~4chがマイクもしくはラインからのインプットで、うち1~2chが48Vファンタム電源、3~4chがハイ・インピーダンス(Hi-z)接続にそれぞれ対応、入力端子もXLR、標準フォーン、ステレオRCA、ステレオ・ミニフォーンを備えており、Bluetooth経由でiPhoneやiPadの音源を流すこともできる。さらにUSBの充電出力がついているため各種タブレット/スマートフォンを充電するのにも便利だ。EQはHi/Lowシェルビング(±12db)フィルターによってリバーブ等も音楽的な効き方をする。このように操作系統はいたってシンプルな構造だが、これまでの「EON ONE」や他社のコンパクトアレイのシステムと比べても、必要最小限の中から最大の効果を引き出すような充実した使用感がある。サウンド・エンジニアはもちろんだが、むしろプレイヤー本人が簡単にセットアップできるシンプルさに「EON ONE PRO」の最大の魅力があると思う。

画像: ミキサーの操作パネル

ミキサーの操作パネル

画像: ミキサーの入出力部

ミキサーの入出力部

 

【PROSOUD REVIEW】JBL PROFESSIONAL EON ONE PRO by 高橋幹弥(MICKEY SOUND)【後編】はこちら >>

 

EON ONE PROに関する問合せ先:
ヒビノ株式会社 お客様問合せ窓口
TEL(03)5783-3110
http://proaudiosales.hibino.co.jp/

 

高橋幹弥(たかはし・みきや)
1987年、都内のプロ用ゲネプロ専用リハーサルスタジオ「芝浦スタジオ」入社、音響機材のプランや施工、またスタジオスタッフとして働きはじめる。1993年12月18日に「池袋Adm」をつくる計画を受け、音響プラン、施工、またオペレーターとして参加。当時は「芝浦スタジオ」の音響部SR事業部の責任者として、ARBのチーフエンジニアなど多くの音響現場の経験を積み、本誌SRリポートにも登場したTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTやThe Birthdayのモニターを長きに渡って担当

編注1:「EON ONE PRO」の購入者を対象に同カバーのプレゼントキャンペーンを展開中。プレゼントの用意数がなくなり次第、終了とのことなので詳細は「ヒビノ」までお問い合わせいただきたい(TEL 03-5783-3110)

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