グランプリを獲得した韓国、アビスのSQ200 パワーアンプ、その魅力とは。ここでは 鈴木裕氏と藤原陽祐氏によるレビューを紹介する。
音の重なりが綺麗で上品さを感じる
音は彫り深く描かれ、音楽を積極的、肯定的に聴かせる。美点である
文=鈴木 裕
韓国のハイエンドブランドで、今年日本の市場でも販売開始された。パワーアンプラインナップが豊富であり、SQのシリーズは上級ラインに位置している。本機SQ200は、定格出力が4Ω負荷で130W×2、2Ω負荷時では190W×2、ブリッジ接続では4Ω負荷で360Wという表示のA級動作アンプだ。同社の上級製品群にはA級動作モデルが多く存在し、強いこだわりを感じる。SQラインナップには筐体が同サイズの4チャンネル機SQ400も設定されている。チャンネルあたりの出力は4Ω時100Wと少し控えめとなる。カットオフフィルターなどの機能は搭載しておらず、純然たる信号増幅のみ行うパワーアンプだ。
SQ200のサウンドは、低域がややぽったりした感じがあるが、駆動力はしっかりとしている。高域には透明感があり、素直でダイレクトでありつつ、丁寧な音楽の聴かせ方をするアンプだ。少し懐かしい音色感にも感じる。
クラシック音楽を聴くと、音の重なりが綺麗で上品さを感じる。品のある中にも音は彫り深く描かれ、音楽を積極的、肯定的に聴かせる、その感じも美点に思った。音の芯がしっかりあり、小音量でもくつろいで音楽を楽しむスタイルの聴き方にも合っている。細部の描写はリアルで克明、たとえばエリック・クラプトンの「アンプラグド」でのガット弦を弾く音成分の質感表現力は鮮烈ではっとさせられた。S/N感も良かった。眼前に広がるサウンドステージはきちんと空間を描き出していた。
空気のグラデーションをきめ細かく描き上げ
緻密な響きが奥行き方向にスムーズに拡がる
文=藤原陽祐
北米の高級カーオーディオブランド向けのパワーアンプOEM供給メーカーとしてスタートした韓国のABYSS(アビス)。その音質と製品としての信頼性が高く評価され、10年ほど前からオリジナルブランドとして数々のヒット商品を送り出している。SQシリーズは今年の夏に登場したニューカマーであり、2ch仕様のSQ200と4ch仕様のSQ400のラインナップだ。同シリーズの最大の特長は、比較的リーズナブルな価格設定で、DUAL MONO、A-CLASSといった上級機同様、A級アンプ回路を採用していることだ。
今回の受賞モデル、SQ200の本体内部を確認してみると、入力端子部からスピーカー出力まで、トロイダルトランス、大容量のケミカルコンデンサー、増幅回路と、左右チャンネルを独立させて、ガラスエポキシ基板上、横一線に綺麗にレイアウトされているのが分かる。その回路配置を見る限り、実質的にDUAL MONO構成のステレオアンプと言っていいだろう。
A級動作のパワーアンプとしては本体が比較的小さく、しばらくの間、大音量で鳴らし続けても、ヒートシンクはほんのりと温かくなる程度。「本当にA級アンプなのか---」と疑いたくなるほどだが、ひとたびその音に触れると、そんな疑念は一気に吹き飛んでしまうに違いない。空気のグラデーションをきめ細かく描き上げ、緻密な響きが奥行き方向にスムーズに拡がる。音の粒子まで感じさせるような繊細な感触はまさにA級アンプの証だ。
アビス ABYSS
Power Amplifier
SQ200
¥481,800(税込)
●定格出力:130W×2(4Ω)、190W×2(2Ω)、360W×1(4Ω)
●入力感度:0.4~10V
●入力インピーダンス:22kΩ
●高調波歪率:0.05%未満
●周波数特性:10Hz~35kHz
●SN比:93dB超
●外形寸法:W203×H75×D463mm
●重量:6.5kg