ブロンズアワードを獲得したイタリア、クワトロリゴのOPUS AMP I (オーパス・アンプ・ワン)パワーアンプ、その魅力とは。ここでは鈴木裕氏と脇森宏氏によるレビューを紹介する。
強い音は強力に駆動するし
微小なニュアンス成分もコントラスト強くしっかり聴かせる
文=鈴木 裕
いい意味でえげつないという言葉を使いたいほどの高い駆動力を持ったアンプだ。強い音は強力に駆動するし、微小なニュアンス成分も、版画を、強い圧力で押しつけてコントラスト強くしっかり利かせて見せるような感じもある。同時にA級アンプらしい暖かみのある、肌合いのいい感触の音で、ヴァイオリン協奏曲を聴くとソロ・ヴァイオリンが実に良くうたってくれるのも特徴だ。演奏上の微妙な強弱(デュナーミク)を的確に再現してくれるのも素晴らしい。
ヴォーカルものを聴いても、声の表情が良く、楽しく音楽を聴くことができた。コンサートホールの空間が広く、音像の立体感に着目すると、両チャンネルの位相の精度が極めて高いことも確認できた。さらに、ホール会場前方、ステージ近くの席で聴いているような距離感も特徴的だ。これは筆者の好みである。
また、昨年受賞している同社のスピーカー、OPUS(オーパス)3ウェイと音質的、音楽表現的な相性は抜群にいいと思われるが、本機を使ってアクティブ3ウェイのシステムを組むのはなかなか大変だろう。消費電力的に電源強化は避けられないだろうこともハードルを上げている。しかしもし、この超弩級妄想システムを構築できたクルマがあるのなら、是非聴いてみたい、そんなことに思いを馳せてしまうパワーアンプである。
緻密なディテール表現と潤いを帯びた瑞々しい音色が織り成す
人声のリアリティと弦の再現力はとりわけ秀逸
文=脇森 宏
クワトロリゴは“イタリアの長靴”のふくらはぎ、マルケ州マチェラータに本拠を置くカーオーディオブランド。創業から25年、以前御紹介したアルミ削り出しバスケットのOPUSスピーカーをはじめ、見る者を驚かせるマニアライクな製品を送り出している。マチェラータは8000を超える数があるというイタリアの自治都市、コムーネのひとつで、その成り立ちからして自主独立、個性尊重の気風が強く、このあたりが同ブランドの製品に強く反映されているのかもしれない。オーディソンも、同じマチェラータ県にあるコムーネ、ポテンツァピツェーナが生誕の地である。
OPUS AMP Iは、デュアルモノーラル構成のA級2chアンプ。定格出力は4Ω負荷で100W×2、2Ωでは190W×2、BTL接続時には380W(4Ω)を発生する。スペック面ではこのようにいささか平凡だが、ルックスはこれぞ芸術の国、イタリアのハイエンドアンプといわんばかりの姿形。取り付けネジ付近には劇場の階段をイメージしたステップが設けられ、ヒートシンクはビアノの鍵盤、さらにピクトグラム風のピアニストの姿まで彫り込まれてる。
この個性的な外見とは異なり、音はオーセンティックそのもの。躍動的で生命感溢れる音が聴ける。緻密なディテール表現と潤いを帯びた瑞々しい音色が織り成す人声のリアリティと弦の再現力はとりわけ秀逸。音に浸り、音に酔いしれる体験が本機ならできそうだ。
モノーラルのINGOT3も素晴らしかったが、音の安定感では本機のほうが一枚上手。デュアルモノーラルのアドバンテージも確認できた。
クワトロリゴ QUARTORIGO
Power Amplifier
OPUS AMP I
¥1,210,000(税込)
SPECIFICATION
●定格出力:100W×2(4Ω)、190W×2(2Ω)、380W×1(4Ω)、595W×1(2Ω)
●アイドル電流:6A未満
●入力感度:0.4~8V
●入力インピーダンス:48kΩ
●周波数特性:8Hz~50kHz
●SN比:100dB超
●外形寸法:W433×H54×D238mm
●重量:7.7Kg
アルミニウムの塊から切削加工で成形したシャーシにはプリントされた文字は認められない。スピーカー端子の固定ネジのチャンネル表示にはレーザー刻印で文字が彫り込まれている。
トップパネル中央のピアニストを想像させるピクトグラムのようなブランドマークは内部基盤が見える窓になっており。丸い窓の直下にはヒューズが配置されている。
大径ケーブルが直接接続できる電源端子。左右の極性と中央のリモート端子の表示は切削加工によって刻まれている。
ケーブルを接続する面は、ご覧のように曲面がデザインされ、さらに溝を作り込んで端子を配置している。こうすることで端子の電極は筐体の外へ露出することはなく。天面部分がひさしのようになるため、車両へのインストールの仕方によってはワイヤリングが見えないようにできる。ボトムパネルを外すと、アンプ動作をステレオとモノーラルの切替えができるジャンパースイッチが内臓されている。