グランプリを獲得したモスコニのパワーアンプPRO4/30、その魅力とは。ここでは選考委員から石田功氏と脇森宏氏のレビューを紹介する。
過去のGP受賞モデルより音が洗練されて滑らかに
年を経てより成熟し、大人の音になったアンプ
文=石田 功
モスコニは音が良いアンプとして注目しているメーカーのひとつ。ZERO4なんかは、発売からすでに10年近く経っているが、同価格帯では依然として飛び抜けた存在だ。そのモスコニが新たに出してきたPROシリーズにも注目している。価格帯がZEROシリーズに近いため、モデルチェンジしたの? とも思ったのだが、ZEROシリーズも依然カタログに載っているので、どうやら違うシリーズのようだ。何しろ物が送られてくるだけで資料が乏しいので、詳細はわからない。
Web上のデータでわかる範囲で比べてみると、出力はPRO4/30が170W×4なのに対してZERO4は100W×2+210W×2。やはり、造りはまったく異なっているようだ。で、PROシリーズ。ZERO4との比較になるのだが、音がより洗練されて滑らかになったようだ。音の透明感も聴感上ではこちらの方が上に感じる。ZERO4で最も魅力的だった音楽生にも長けている。年を経てより成熟し、大人の音になったアンプとも言える。個人的には、多少音がやんちゃでも、より音楽がより生き生きと聴こえるほうが好みなので、どっちを選ぶ? と言われるとおそらくZERO4を選ぶ気がするが(笑)、こちらのPRO4/30も音が良いことは間違い無く、これは個人の好みで選ぶべき問題だろう。同じ30〜40万円のアンプで比べてみても、マイクロプレシジョンの5シリーズが2chなのに対してこちらは4chとコストパフォーマンスも良い。いずれにせよ、魅力の大きいアンプである。
古い録音のディスクも、翳りを雰囲気豊かに再生
音楽をじっくり楽しむことができる音楽愛好家向けの1台
文=脇森 宏
イタリアのパワーアンプ、モスコ二はお国柄ということか、音楽表現力の確かさ、巧みさで定評がある。白と黒のモノトーンの外観を纏ったスタイリッシュな上級機A CLASSやZERO、それにコンパクトながら侮れない能力を秘めたD級アンプ群がよく知られているが、両者の間に見逃せない上級シリーズ、PROがある。PROシリーズは5chからモノーラルまで全5機種。筐体上面にパンチングメタルの上蓋を配したメカニカルな印象の外観が与えられている。
今般のノミネートモデルであるPRO4/30は、全長50cmの長い筐体を持つ4ch機。独自のAdvanced A-ABアンプ技術により、純A級動作領域を最大定格30Wまで拡大し高品位再生を可能にするとともに、170W×4のRMS出力を獲得。クォリティとパワーの両立を図っている。幅広い設定範囲を持つクロスオーバーを内蔵するが、内部のフィルターやゲイン調節機能をバイパスさせ、信号をダイレクトにアンプに入力できるDDSP回路も搭載している。
通常の音量ではA級動作領域を越えないためか、上質かつナチュラルな音の出方が印象的。人声は伸びやかで厚み、温度感ともに充分。声の移ろいの描写も見事。楽器は切れがよく響きが自然。古い録音のディスクも、翳りを雰囲気豊かに再生してみせた。加えて同ブランドが得意とする音楽表現力が備わっているから飽きがこない。ジャンルを越えて、音楽をじっくり楽しむことができる音楽愛好家向けの1台。モスコ二の新たな実力機、発見である。
モスコニ MOSCONI
Power Amplifier
PRO 4/30
¥363,000(税込)
SPECIFICATION
●定格出力:170W×4(4Ω)、225W×4(2Ω)、450W×2(4Ω)
●入力感度:350mV〜12V(5.3V・DDSPモード時)
●SN比:83dB
●カットオフフィルター:HP・43Hz〜5kHz(CH 1/2)、HP・18〜220Hz、LP・43〜500Hz(CH 3/4)
●外形寸法:W500×H55×D205mm
●重量:5.1kg