オートサウンドウェブグランプリ2023の選考委員は、評論家[石田 功、鈴木 裕、藤原 陽祐、黛 健司、脇森 宏、長谷川 圭]6名によって構成している。
本記事では、グランプリ製品の選考に関する解説と今年の動向についてまとめた。
文=長谷川 圭
2023年は10モデルを選出したASWGP
オートサウンドウェブグランプリ2023(ASWGP23)は、2022年12月(発表および発売時期の都合で前年選考対象から外れた製品)から2023年12月に発売されるカーオーディオ製品を対象に、音質面で高く評価されるものを選出するものである。選考は先述の6名によって行われる。
選考手順は、選考メンバー各氏が推薦する製品をノミネート製品とし、対象製品に対する評価を各メンバーが表明、グランプリに相応しいと判断された製品を選出している。2023年の受賞は全10賞とした。
Grand Prix Gold Award カロッツェリア サイバーナビシリーズ912III
Grand Prix Silver Award グラウンドゼロ GZ ULTRA A-2
Grand Prix Bronze Award グラウンドゼロ GZUA 2SQ
Grand Prix クアトロリゴ OPUS 3ウェイスピーカー
Grand Prix グラウンドゼロ GZHA MINI FIVE DSP
Grand Prix グラデン AEROSPACE165.2
Grand Prix ケンウッド 彩速ナビType M
Grand Prix ゴールドホルン G3 SE II
Grand Prix マイクロプレシジョン 5-SERIES STEREO Amplifier
Grand Prix モスコニ PRO4/30
(上位3賞の他はブランド名のアイウエオ順に列記)
選考手順は次の通り。
◆選考メンバー推薦による製品ノミネート
◆ノミネート製品に対する採点
◆得点数をもとにグランプリ入賞製品を協議
◆入賞製品の中で特に高く評価できるものに対し、ゴールドアワード以下、シルバー、ブロンズ、スペシャルなどの賞を決定
全ては音を聴いて評価
製品の評価については、基本的にオートサウンドウェブの試聴取材環境で実際に音を聴いておこなっている。ステレオサウンド社の試聴室における試聴条件は以下の通り。
〇スピーカーは、ユニットサイズや構成による一部の製品を除き、独自のプレーンバッフルにマウントして試聴している。
〇電源は車載用バッテリー(パナソニック製caos)に定電圧電源を接続し、つねにチャージしながら各コンポーネントを駆動。
〇接続ケーブルは、電源、ライン、スピーカーとも車載用製品を使用。
〇各製品ジャンルごと、評論家ごとにリファレンスとなる機器を接続。適宜組合せを変えるなど、できうる限り製品のパフォーマンスが引き出せるよう試聴を行っている。
いずれの条件も、車載用という製品仕様ではあるものの、オーディオ機器として理想的な再生条件で評価しようというものだ。当サイトの前身でもある雑誌Auto Soundで確立させた試聴スタイルを踏襲した形でもあり、音質評価において車両と試聴室という条件の違いは問題にならないことは幾度も検証している。さらにいえば、試聴室で評価する方がより良い評価となることも確認してきている。
ステレオサウンド社には2つの試聴室があるが、本年も季刊HiVi誌が主に使用する部屋で試聴取材を行っている。
2023年の動向
この数年、半導体不足を発端に、コロナ禍からのサプラチェーンの混乱、紛争、などと市場への影響がなくなっていない。結果、本年も新製品のリリースは寂しい状況となった。とはいえ、開発の手が止まっているわけではなく、2024年にリリースが予定されているものなど、一部情報は届いている。また、発売の発表はされているものの、充分な数量が確保できずに日本市場での発売が遅れている輸入製品もいくつもあるようで、来年は新製品豊富な年になると期待している。
2022年の受賞製品をジャンルごとに振り返ってみよう。個々の製品評価については、選考メンバーによる個別レビュー記事に詳しいので、そちらでご確認いただきたい。
AVナビゲーション & ソースプレーヤー
AVナビゲーションおよびソースプレーヤーは、大手ブランドが新型AVナビの市場投入をしなかった年となった。カロッツェリアとケンウッドは上級シリーズで新モデルを発売し、評価されたわけだが、例年グランプリの常連であったアルパインとパナソニックの名前がなかったのは残念だった。AVナビの大画面化やフローティングディスプレイといった進化があったものの、車両へ固定する本体部分は旧来のDIN規格であり、車輌純正インフォテイメントが交換不能なデザインであることや、ナビ機能はスマホで充分とする傾向がより顕著になってきている。とはいえ、豊富なCDライブラリを所蔵するドライバーからはまだまだ需要があり、熱心な音楽ファンに支えられているといった感がある。
一方で今年日本市場へ正規輸入販売されることとなった中国のゴールドホルンは、充実したデジタルプレーヤー、あるいはDSPモデルを積極的に投入。また本年のノミネートには間に合わなかったが、同じく中国のアウネという新規ブランドも登場、こちらもデジタルオーディオ機器をラインナップしており、このジャンルの中国メーカーや躍進しそうなムードがある。スマホとの機能連携で活用できそうなディスプレイオーディオを含め、ソースプレーヤーのメインストリームとなっていくのだろうか、動向を注視したい。
パワーアンプ受賞製品
受賞製品の内訳を見ると、パワーアンプ豊作の年と言えそうだ。中でもグラウンドゼロはシルバーとブロンズを獲得したほか、DSPアンプでも受賞を果たした。他ブランドの新製品が少なかったとはいえ、この実績は同社製品の確かな実力によるものであると言える。単体パワーアンプは、AVナビの内蔵アンプ以上のクォリティが求められて当然であり,この20年来の内蔵アンプの音の進化はこのジャンルを脅かすほど品質向上が著しかったため、その条件を踏まえるとおのずと評価は厳しいものとなった。その中でグランプリ受賞製品として選ばれた理由は、単体パワーアンプでなければ再生出来ないサウンドがあり、その価値を認めたからに他ならない。
単体パワーアンプは、車輌の搭載場所や電源ラインを引かなければいけなかったりと、インストール費用をかけて搭載しなければならないが、これらのコンポーネントを経てスピーカーをドライブすることでしか得られない音の存在を確認した。どの受賞モデルも、いつでもどこでも聴けるものではないだろうが、取り扱っている商社ではカーオーディオショップで試聴会を実施していたりするため、情報をチェックして聴いてみていただきたい。
AVナビやデジタルプレーヤー、アンプの試聴に関しては、カロッツェリアのTS-Z900PRSをリファレンススピーカーとして音の確認をしている。
海外高級モデルが受賞したスピーカー
スピーカーのジャンルでは、受賞を果たしたモデルのような高級機か、カスタムフィットなどリーズナブルなモデルに動きがあったが、各メーカーが競って新製品を送り出すという印象は乏しかった。
今回受賞した2モデルはどちらもパッシブクロスオーバーネットワークレスモデル(グラデンではオプションで専用ネットワークもラインナップされておりそちらも試している)であるため、マルチアンプドライブで試聴。帯域分割にはヘリックスのDSP ULTRAを、パワーアンプにはカロッツェリアRS-A99Xを向けて音の確認を行っている。
また、グラデンもクアトロリゴもそれぞれブランドのトップグレード機であり、物量投入型ユニットであるため、車両への装着にあたってはそれなりに強固な施工が求められるだろう。スピーカーについてはアンプ以上に費用を見込む必要がありそうだ。だが、しっかりとしたマウント、カットオフ設定が叶えば極上のサウンドが得られるはずである。