文/写真=長谷川 圭
昨日、都内で開催された「HARMAN ExPLORE TOKYO 2023」を訪れる機会を得た。この催しはハーマンインターナショナルが擁するオーディオブランドの新製品や参考出品が数多く(今回は約160モデルににおよぶとか……)並べられ、簡易的ながらその体験もかなうというもの。ホーム用コンポーネントの数々、ヘッドフォンやイヤホンなど、個人的に興味を惹かれる物も多かったのだが、そのあたりはStereo Sound ONLINEの別記事に詳しく紹介されていくのでお楽しみに。ここでは同グループのオートモーティブ部門が展示していたカーオーディオ搭載車両について触れていこう。
展示されていたのは、今年フルモデルチェンジを果たした話題のトヨタ アルファードと、レクサスのコンパクトSUVにしてBEVとして注目のRZ450e。短い時間ながらその音を体験できたのでショートレビューとしてご紹介する。ただし、体験条件としては停車してのサウンド体験に限定されているので、走行体験が叶った折には、改めて記事としてご紹介したい。
待望のホーン採用システム
Executive Lounge専用12スピーカーJBLプレミアムサウンドシステム
新型アルファードで体験したのはJBLプレミアムサウンドシステムだ。スピーカー数12本、12chアンプでドライブしている。本システムが組み込まれるのはアルファードの最上位モデルとなるExecutive Loungeグレードのみで、標準装備に設定される。他グレードではオプション設定されていない。なお今回体験の車両にはなかったが、DVD/CDプレーヤーのオプションオーダーができるため、ディスクメディアを持ち込みたい向きにも対応している。
HARMAN ExPLORE TOKYO 2023会場屋外に展示されたトヨタ アルファード。
このアルファード、前モデルと決定的に異なるのがトゥイーターホーンの採用だろう。車両モデルチェンジサイクルの関係で、他車種でホーンが装着されていくなか、アルファードでは今回のモデルチェンジを受けて待望のホーン搭載となった。待望と書いたのは個人的な感想なのだが、JBLシステムを搭載したトヨタ車で、ホーンの効果を体験していただけに、アルファードが後れを取っていたことに忸怩たる思いを抱いていたためである。
乗車して音を出すと、このホーンの効果が絶大であることにまず気付く。目の前に広がるサウンドステージが広大なのだ。前アルファードでは左右ピラーにおさまる印象の音場であったものが、幅広く、また奥行きも感じられる空間が拡がっていたのだから驚いた。しかもフロントのピラーのみならず、リアドアのトゥイーターにもホーンが装着されており、リアシートでの楽しみも格段に高められていた。
ピラーに配されたトゥイーター。ユニットは25mmドーム型を採用、ロゴがあしらわれたホーン形状は、アルファード専用に設計される。
ダッシュボード端、トゥイーターに近接した位置にも80mmワイドディスパージョンスピーカーをマウントしている。
スライドドアには上にホーン付25mmトゥイーター、下に80mmワイドディスパージョンスピーカーをレイアウトする。
バックドアには90mmワイドディスパージョンスピーカー(左右)と224mmサブウーファーがマウントされている。
ダッシュボードの中央にマウントされるセンタースピーカー。90mmワイドディスパージョンスピーカーを搭載する。
フロンドアには200×230mmの楕円型ミッドウーファーを搭載する。大型のドアを活かした低音再生が特長的だ。
リアエンターテインメント用14インチフリップダウンモニターと、その手前には90mmワイドディスパージョンスピーカーが組み込まれる。
再生モードとしてサラウンドのオン/オフが選べるのだが、切り替えることによってサウンドバランスが変化することはなく、自然な聴き心地が味わえる。
ドライバーズシートでは、サラウンドオフのごく自然なステレオ再生で眼前に歌い手が立つ、サラウンドオンではダッシュボードの中央やや奥へと立ち位置が変わる。感心するのは、歌い手の立ち位置が変わるもののその音像の大きさは変わりなく聴けるところ。サラウンド効果は、音楽が自分の周りを包み込む感覚がありながら、特定の楽器が出しゃばったり、コーラスが控えめになったりというような、楽曲の成り立ちが変わってしまうようなことがない。入念な調整が施されていると見た。とかくエフェクトの効果をこれ見よがし鳴らすことが多いと感じているが、この“効き目”は至極真っ当と言えるだろう。
14インチタッチ画面を採用したディスプレイオーディオ。圧縮音源復元テクノロジー「Clari-Fi(クラリファイ)」も盛り込まれている。
オーディオ再生画面から音質調整画面へ入ると、バランス/フェーダー、トーンコントロール(3バンド)がコントロールできる。
エアコンルーバー下にUSB-Cタイプが用意される。本車の仕様では、充電専用とデータ通信用の2種類が並んでいた。
こちらは各種調整メニューから音声に関わる調整画面に入ったところ。サラウンドのオン/オフはこの画面で行う。
リアシートでの聴き応えも、フロントと違わずしっかりしたもの。特にサラウンドオンの時の音空間の出来ようは、フロントシートでは感じられなかったもので、特別に誂えられたシアター空間のようだった。アルファードExecutive Loungeはショーファーカーとして使われることも少なくないグレードだけに、よく練り上げられたサウンドチューニングの賜であろう。
サウンドバランスはどうか。結果を言えば申し分なし、である。本システムには3バンドトーンコントロールのほか、バランス/フェーダーといった調整機能がある。しかし、ドライバーだけ、あるいは同乗者の特別なリクエストがなければ、デフォルトで聴く音が本車のベストフォームであろう。少しだけ情緒豊かに聴かせる傾向は感じられるけれど、人が作りだして奏でる音楽の温もりが伝わってくるといった印象がのコルサウンドだ。
リアシートのアームレストに設置されたタブレットから、各種コントロールが可能。ショーファーカーらしい装備だ。
オーディオの操作のほか、エアコンなどもコントロールすることができる。
オーディオ再生操作が細かく行うことができる。また、天井のフリップダウンモニターに関しても操作が可能だ。
正統派HiFi再生をもたらす
レクサスの“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステム
アルファードと並んで展示されていたレクサスRZ450e。
ダッシュボード上のスピーカーグリルに飾られるマークレビンソンのロゴバッジ。
アルファードに続いてレクサスRZ450eを聴いた。その順番の影響もあり、RZ450eはクールな聴かせ方という第一印象となった。しかし聴き込んでいくと、クールなのではなく、ストイックに楽曲のあるがままを再生しているのが本車のオーディオ、“マークレビンソン”プレミアムサラウンドサウンドシステムなのだということに気付いた。本システムはメーカーオプション設定されており、内容は13スピーカー(同軸構造のUnityスピーカーユニット5基で10本とカウント)を搭載、正確なステージ感・定位・ダイナミクス再生を実現するという技術「Quantum Logic Surround(QLS)」や、圧縮音源復元技術「Clari-Fi(クラリファイ)」も盛り込まれている。。
ダッシュボードの中央には90mmUnityスピーカーを配置、同軸型のスピーカーユニットで両端の同スピーカーとともにLCRを構成している。
フロントドアには8×9インチ(約200×230mm)ウーファーを配置。他のUnityスピーカーに合わせて低音をしっかり添えている。
バックドアには224mmにサブウーファーをマウントしている。バックドア全体をエンクロージュアとして活用するべく、サービスホールをできるだけ塞ぐなどの処理をしているという。
ダッシュボードの両端には90mmUnityスピーカーが組み込まれる。このグリルに、マークレビンソンのロゴバッジが飾られる。
リアドアには、ダッシュボードと同じく90mmUnityスピーカーが搭載されている。
このストイックな音の印象はRZに限ったことではなく、レクサスのマークレビンソンに共通しているもの。車種によってオーディオシステムの規模は違うし、レンジ感や緻密さといった部分で差はあるものの、サウンドパフォーマンス総じての印象は通じるものがある。言い換えればレクサス×マークレビンソンが聴かせる音が、どの車種においても正統HiFi路線でブレずに音をまとめているのだろうと想像できる。
つまりは完成度が高く、フェーダーやバランスを大きく変化させたりといった事情がなければ、トーンコントロールもいじる必要はないと思わせる。このあたり、走行時にどれほど印象が変化するか気になるところだが、今回のサウンド体験ではおあづけである。静粛性の高いレクサスのこと、走行時でも大きく印象が変わることはないだろうが、そこはまた別の機会にお届けしたい。
RZ450eには14インチ画面のディスプレイオーディオが搭載される。アップルカープレイやアンドロイドオートの他、USB、BTオーディオ、ラジオ、DTV再生が可能だ。
オーディオ調整機能は、バランス/フェーダー、3バンドトーンコントローラーを有する。
ディスプレイの下にはUSB(Type-C)が3系統設置されていた。データ通信用が1系統、充電用が2系統といった内容。
設定メニューの音設定の中に、サラウンドのオン/オフ切替が並ぶ。どうやら、サラウンド再生かどうかはあまり頻繁に切り替えるものではないという解釈によるインターフェイスデザインのようだ。