現在、千葉県は幕張メッセで開催中のCTEATEC2022、3年ぶりのリアル開催で盛り上がりを見せている。近年は車両の自動運転化に向けたセンサー技術や各種デバイスの展示が多くなり、カーナビやカーオーディオといったエンターテインメント系の展示は関連企業の出展が減る傾向が強くなってきている。今年の出展内容も同様ながら、アルプスアルパイン(ALPS/ALPINE)はアルパイン(ALPINE)のオーディオデモカーをブース内に展示、ハイレゾ音源によるハイクォリティ音楽再生が体験できることに加え、新型上級カーオーディオシリーズの参考出品まで行うといった気合のこもった内容であった。
アルプスアルパインのブース
同ブランドの最上級シリーズ「F#1 Status(エフナンバーワンステイタス)」を組み込んだトヨタアルファードでは、384kHz/32bitのPCMファイルをネイティブ再生するもので、2021年に発売されたものではあるけれど、車載機ではここまでのスペックはいまだにF#1 Statusのみである。シリーズ商品として、ヘッドユニット、デジタルプロセッサー、パワーアンプ、トゥイーター、ミッドレンジ、ウーファー、サブウーファーがラインナップされるが、これらはアルパインマーケティングが展開するショップ「ALPINE STYLE(アルパインスタイル)」にて施工、仕上げられた車両で市場に提供される専売製品である。実際に聴いてみるとクルマの中であることが嘘のようにも感じられる余裕たっぷりの鳴りっぷりに驚かされる。透明感あふれる澄んだ高音は秋の空のように高く抜けのいい音世界を展開するし、情報量が凝縮されて厚みを感じる中域音は楽器も声も音源に含まれる情報を余すところなく聴かせてくれ、低音はオーケストラの大太鼓の皮の震えが見えるように車室内の空気を振動させてくれる。
F#1Status搭載のデモカー、トヨタアルファード。試聴体験可能で一聴の価値のある車両だ。
デモカーのアルファードはショーファーカーのあつらえで制作されているため、体験はセカンドシートで聴いたのだが、空間の拡がりは水平方向にも天地方向にもサウンドステージを広く展開していて、奥行きも充分に感じることができるものだった。これは小型ブックシェルフで組んだホーム用オーディオシステムでもこれほどの情報量やリアリティ溢れる音色そして音場、ひとつひとつの音の粒が見えるような高い解像力を持つものは稀有なのではと思えるほど。アルパインが誇る最高技術を投入した高品質機を、開発メーカーが直接車両に組み込む(インストールする)のだから、微に入り細に渡りコンポーネントユニットの仕様を知り尽くしたインストーラーが理想的な配置と設定で仕上げることができるわけだ。
アルファードのスライドドアに、3ウェアスピーカーをレイアウト、システムコントロールするヘッドユニットは、フロントシートの間に設置されている。
ラゲッジフロアにインストールされるのは、デジタルプロセッサーにパワーアンプ2台、そしてサブウーファーだ。
なお、F#1 Statusは、特別な販路で市場展開されているほか、数量についても限定されており、なかなか聴けるものではない。この機会に体験してみてはいかがだろうか、カーオーディオに対する認識が変わる方も多いかもしれない。
アルパインの新上級ラインナップとなるであろう「アルパインステイタス(ALPINE Status)」
アルプスアルパインのブースでは、もう一つの目玉といえる展示があった。「アルパインステイタス(ALINE Status)」がそれである。現段階では開発そのものは完了しているものの、市場へ充分な供給ができるよう量産に向けての調整中のため参考出品という扱い。販売チャンネルや価格については未発表ではあるが、グローバルな量産モデルとして発売されるらしい。ラインナップは、ヘッドユニット、DSPパワーアンプ、スピーカーだ。ヘッドユニットとDSPパワーアンプは組み合わせて使用でき、192kHz/24bitでサウンドチューニングができるという。またDSPは14チャンネルをそろえ、多彩なシステム構築を可能にする。スピーカーはトゥイーター、ミッドレンジウーファー、サブウーファー、同軸2ウェイスピーカーが登場するもよう。注目すべきは振動板素材をクロスカーボンで統一しているところ、しかもトゥイーターをのぞいたユニットではエッジを同社の特長のひとつともいえるギャザードエッジとするなど、統一感のある造りとしている。
上からALPINE Statusのヘッドユニット、メディアインターフェイス、DSPパワーアンプ。
ハイレゾファイルの再生能力はF#1Statusにはおよばないものの、市場では高性能な内容のヘッドユニット。
USB端子を備えたメディアインターフェイス。
スピーカー群は、3ウェイセット(左3つのスピーカーユニットと中央のパッシブクロスオーバーネットワーク)と2ウェイ(右2つのスピーカーユニット)での販売が想定されているもよう。
ALPINE Statusのトゥイーターユニット。カーボンファイバーダイヤフラムを持つリングラジエーターのようだ。
ALPINE Statusの2ウェイクロスオーバーネットワーク。165mmウーファーとトゥイーターの組合せで、ユニットの帯域分割を行う。ウーファーのスロープ切り替えやトゥイーターのレベル調整機能を備えるもよう。
同軸2ウェイスピーカーも展示されていた。
ミッドレンジユニットにクローズアップ。ギャザードエッジとカーボンコーンはほかのユニットと共通で、ユニックの中央にはフェイズプラグを搭載している。
250mm(10インチ)サブウーファー。触らせてもらったがかなりの重量(10kgほどらしい)で、耐入力はマックスでキロワットを実現しているとのこと。
サブウーファーにクローズアップ。独特なギャザードエッジにカーボンファイバーコーン(カーブドコーンに逆ドーム型センターキャップという形状らしい)であるのがよくわかる。ちなみにコーンの背面側にはパルプ素材が張り合わされたレイヤーコーンである。
なお、現在のところスピーカーのセットは2ウェイと3ウェイの組合せを想定しているようで、専用のパッシブクロスオーバーネットワークも展示されていた。
過去、アルパインの上級カーオーディオコンポーネントは、クルマでいい音を作る腕に覚えのあるカーオーディオプロインストーラーから広く支持され、コンテストで多くの入賞実績を重ねていた。大画面AVナビ「ビッグX」の大ヒットで、近年ではナビメーカーの印象が強いが、世界に名だたるハイクォリティカーオーディオブランドなのである。このことは、当サイトの年次企画であるAuto Sound Web Grand Prixでの受賞歴をみてもおわかりいただけるのではないだろうか。
いずれにしても、実力メーカーによる本気の上級量販モデルの発売準備中とは、カーオーディオファンとしてうれしい限り、正式発表は早くても年をまたぎそうではあるが、大いに期待したい。
CEATEC2022は2022年10月21(金)まで、千葉県幕張メッセで開催中。