オートサウンドウェブグランプリ2020の選考委員は、評論家[石田 功、鈴木 裕、藤原 陽祐、黛 健司、脇森 宏、長谷川圭]の計6名によって構成している。
本年のグランプリ受賞数は全11賞、AVナビゲーション4モデル、スピーカー4モデル、パワーアンプ3モデルという内訳になる。
ここでは、グランプリ製品の選考に関する解説と今年の動向についてまとめた。
文=長谷川 圭
11モデルが選出された2021年のASWグランプリ
オートサウンドウェブグランプリ2021は、2020年12月(発表および発売時期の都合で前年選考対象から外れた製品)から2021年12月に発売されるカーオーディオ製品を対象に、音質面で高く評価されるものを選出するものである。選考は先述の6名によって行われる。
選考手順は、選考メンバー各氏が推薦する製品をノミネート製品とし、対象製品に対する評価を各メンバーが表明、グランプリに相応しいと判断された製品を選出している。2021年は熟考の末、AVナビゲーション4モデル、スピーカー4モデル、パワーアンプ3モデルである。受賞は全11賞とした。
Grand Prix Gold Award アルパイン ビッグXシリーズ
Grand Prix Silver Award カロッツェリア サイバーナビシリーズ
Grand Prix Bronze Award ダイヤトーン DS-G400
Grand Prix アールエスオーディオ RS Diamond 165-2
Grand Prix アールエスオーディオ RS Experience M Limited
Grand Prix オーディオウェーブ Aspire Pro V2
Grand Prix ケンウッド 彩速ナビTypeM
Grand Prix ディナウディオ Esotan236 MK II
Grand Prix パナソニック CN-F1X10BHD
Grand Prix マイクロプレシジョン 7-Sereis MONO Amplifier
Grand Prix モレル HYBRID 62 Mark II
(上位3賞の他はブランド名のアイウエオ順に列記)
選考手順は次の通り。
◆選考メンバー推薦による製品ノミネート
◆ノミネート製品に対する採点
◆得点数をもとにグランプリ入賞製品を協議
◆入賞製品の中で特に高く評価できるものに対し、ゴールドアワード以下、シルバー、ブロンズ、スペシャルなどの賞を決定
本年の場合、11賞のうち、ゴールドアワード1、シルバーアワード1、ブロンズアワード1、とした。ゴールド、シルバー、ブロンズは、基本的に得点数が多かった製品について各賞としてふさわしいかどうかを話し合い決定している。スペシャルアワードについては該当製品なしであるという結論に達した。
グランプリ入賞製品として9製品を選出しているが、得点数をもとに協議して決定しているが、選考メンバー個々の評価はまちまちであるため、高評価であるメンバーもいればそうでもないメンバーもおり、単純な総得点数だけでは決定できないが、選考メンバーの総意として広く勧められるカーオーディオコンポーネントとして選出している。
全製品を試聴取材し評価
製品の評価については、基本的にオートサウンドウェブの試聴取材環境で実際に音を聴いておこなっている。ステレオサウンド社の試聴室における試聴条件は以下の通り。
〇スピーカーは、ユニットサイズや構成による一部の製品を除き、独自のプレーンバッフルにマウントして試聴している。
〇電源は車載用バッテリー(パナソニック製caos)に定電圧電源を接続し、つねにチャージしながら各コンポーネントを駆動。
〇接続ケーブルは、電源、ライン、スピーカーとも車載用製品を使用。
〇各製品ジャンルごと、評論家ごとにリファレンスとなる機器を接続。適宜組合せを変えるなど、できうる限り製品のパフォーマンスが引き出せるよう試聴を行っている。
いずれの条件も、車載用という製品仕様ではあるものの、オーディオ機器として理想的な再生条件で評価しようというものだ。当サイトの前身でもある雑誌Auto Soundで確立させた試聴スタイルを踏襲した形でもある。
2021年の動向
市場への新製品投入が少ない印象の年であった。2020年秋以降、オーディオ用半導体の供給が不足するなか、メーカー各社は新製品の開発や生産計画を大幅な変更を余儀なくされたようで、AVナビなどについては生産計画の見通しが立つまで発売の発表が遅れた模様。2020年モデルが昨年のグランプリ発表時に既に市場在庫がなくなっているといった事態も発生していたが、2021年モデルは同じ轍を踏まずに済むよう各社が企業努力をしている。
いっぽうで、ハイエンドカーオーディオ市場にもはや不可欠と言えるDSPのコンポーネントについては、新製品が極端に少なくなった。このジャンルについては、デバイスの安定供給が復活するまでしばし同じ状況が続きそうである。
また、一部ではコネクター類の樹脂パーツにおいてサプライチェーンに滞りが発生したり、液晶ディスプレイパーツで一部のサイズで調達困難な状況もあるようで、新型コロナウイルスによる市場の影響は未だ落ち着きを取り戻せていない。
そんななかで、アナログコンポーネントでは価格こそ高額ではあるが、その製品でなければ得られないサウンド体験をもたらすものがいくつも誕生しており、厳選してグランプリ受賞製品としている。
2021年の受賞製品をジャンルごとに振り返ってみよう。個々の製品評価については、個別のレビュー記事に詳しいので、そちらでご確認いただきたい。
AVナビゲーション
AVナビゲーションは、半導体不足や液晶パネル不足などの憂き目に遭っていながらも、各社とも音質技術に磨きをかけ、リリースしてきている。ゴールドアワードのアルパイン「ビッグX」は、昨年のデジタルアンプ採用で圧倒的な実力を見せつけたが、2021年モデルでも飛躍的な音質向上を果たし、選考メンバー全員が最高評価で押しも押されもしない最高位として選出された。
シルバーアワードのカロッツェリア「サイバーナビ」は、2020年の911から音質面での大幅な変更はないとのことだが、そのクォリティの安定度はさすがというほかはなく、高い評価を受けた。ナビ機能においては、ドライバー目線で最新のクルマの使い勝手過度が考慮された新機能を搭載するなど、カロッツェリア独自の進化が認められる。
ケンウッド「彩速ナビType M」のハイレゾファイル対応機能は、今年も相変わらず他社から一歩抜きん出ている。また、「K2テクノロジー」という高音質技術、ハイレゾワイヤレスでは「LDAC」対応も果たすなど独自のアドバンテージを保っている。また、Type Mは最上級グレードながら、戦略的な価格設定で市場に供給されている点も見逃せない。
パナソニック「Strada」は、昨年採用されたOLEDディスプレイを継承し、群を抜いた映像性能を発揮。超薄型というスタイリッシュなデザインとあいまって、確固たる存在感を示している。さらに、回路構成などブラッシュアップが図られ、上質なサウンドを奏でるプレーヤーであることを証明してみせた。独自の「音の匠」にも磨きがかけられ、さまざまなカーオーディオシーンで活躍できるモデルに進化している。
スピーカー受賞製品
スピーカーでは、ブロンズアワードのダイヤトーン「DS-G400」がひときわ輝いていた。2ウェイ構成のスピーカーユニットには、ウーファー、トゥイーターともナノカーボンテクノロジーから開発されたNCV振動板を搭載しているが、ウーファーでは同ブランド最上級機のDS-SA1000と同じコーンを採用するなどレギュラーモデルらしからぬ仕様で設計されている。そこから送出されるサウンドは、本機でなければ聴けないものであった。
ドイツのアールエスオーディオ「RS Diamond 165-2」は、前身である「Revelation」からスピーカーユニットの細部が見直され、モデルチェンジを果たしている。もともと基本性能の高いユニットであったものがブラッシュアップされることで、より魅力的なパフォーマンスを発揮するモデルとなった。
デンマークのディナウディオ「Esotan236 MK II」は2020年にブランド創立40周年を迎えた同社が、アニバーサリーモデルとして発売したエソタンシリーズが、2021年にマーク2化しレギュラーシリーズになった。スピーカーユニットやネットワークに「40」の文字が飾られているのはその名残だ。同社伝統とも言える樹脂製MSPコーンや28mmファブリックドームトゥイーターを採用、ベーシックグレードながら上級機に通じるサウンドが楽しめる。
イスラエルのモレル「HYBRID 62 Mark II」は、同ブランドの中堅グレードだが、その来歴を見るとモレルのスピーカーユニットのオリジナルとも呼べるシリーズだ。シリーズ名のHYBRIDは、磁気回路にフェライトとネオジウムの2種類を搭載することに由来する。同社独自のスピーカー技術を満載したユニットは、美麗な響きとともに音楽を奏でる。
パワーアンプ受賞製品
パワーアンプの3モデルは、いずれも超高額と言えるモデルだが、昨今ひじょうに優秀な内蔵アンプを搭載したAVナビがある状況で、単体パワーアンプここにありとその存在を主張できる製品は多くないだろう。今年、グランプリを受賞したモデルはいずれも優れたドライブ能力とスピーカー制動力を備え、内蔵アンプでは表現できないサウンドを聴かせてくれる。
アールエスオーディオ「RS Experience M Limited」とマイクロプレシジョン「7-Series MONO Amplifier」はモノーラルモデル、オーディオウェーブ「Aspire Pro V2」はステレオモデル。しかも音声信号増幅機能に特化しており、そのシンプルな構造だからこそ実現したであろうパフォーマンスが高い評価につながった。
本企画によって選出されたカーオーディオ製品達は、卓越した才能を持ったオーディオ開発者達の力の結晶であり、多くのカーオーディオ愛好家にお勧めできるモデルばかりである。ぜひ近隣のカーオーディオショップへ足を運び、これらの製品を聴く機会を得ていただきたいし、叶うならば愛車への導入を検討してもらいたい。その先にはきっと、多幸が待っているはずである。