クルマ購入時に搭載されている標準装備やメーカーオプション、ディーラーオプションのカーオーディオ、いわゆる「車両純正オーディオ」を実車で体験。本稿では純正カーオーディオのシステム概要やサウンドについてレビューする。
文=長谷川圭
USBやBluetoothオーディオを6スピーカーで再生
フランス、プジョーの上級SUVとして2017年に日本市場で発売されたモデルが5008。GT BlueHDiは、パワートレインに2リッターディーゼルターボを搭載した車両だ。車両本体価格は473万円(税込)。ナビゲーションシステムはオプション設定で¥198,720、ETC2.0は¥22,680で搭載可能。このナビ&オーディオシステムは、オーディオブランドのバッジはついておらず、強いて言うならプジョー製ということになろうか。
センターコンソールには8インチタッチパネルディスプレイが配置され、直下のトグルスイッチや12.3インチデジタルインストルメントディスプレイなどと合わせてPEUGEOT i-Cockpitを構成している。i-CockpitにはCDなどが再生できるドライブメカはなく、スマートフォンやメモリーの再生を基本に考えられている。
スピーカー搭載数は6。メーカーの詳細資料がないため、実車の観察に基づくシステム構成を紹介すると、ダッシュボード中央のセンタースピーカー、フロントドアにミッドウーファーとトゥイーターの2ウェイスピーカー、リアドアにも2ウェイスピーカーが配置され、場所は定かではないがサブウーファーがマウントされていると思われる。
音場をコントロールするバランス調整は使える機能
オーディオ機能を細かくチェックしてみよう。プジョー5008のi-Cokpitには、左右前後のスピーカー間の音量バランスがコントロールできる。またこのバランス調整にはプリセットされたモードも備わっており、「全席」、「ドライバー」、「前方のみ」の3種類からセレクトすることができる。この機能がなかなか効果的で興味深い。試聴は運転席で行ったので、ほかの席で確認ができていないが、運転者が自分一人で聴く状態であれば、「ドライバー」をセレクトして聴くのをお勧めする。このほかに、トーンコントロール機能もあり、3バンドのイコライザーとして調整することが可能だ。
ポジション設定で大きく変化するのはサウンドステージの広がり方。帯域バランスにも変化をともなう。「ドライバー」モードのサウンドステージは、5008の広い車室内に合ったサイズ感で、ダッシュ中央にヴォーカルが定位する。他のモードと比較して帯域バランスがいちばん整っているところが、このモードをお勧めする一番の理由。全席モードでは、若干定位が甘くなるものの、車室スペースを超えたサウンドステージが現れる。いっぽうでバランスはヴォーカルが厚めに聴こえる傾向に変化した。
迫力重視で楽しめそうな聴き心地
音そのものはどうか、バランスをドライバーモード、トーンコントロールをデフォルト状態にして聴くと、中音から高音のバランスは良好。ただサブウーファーは粘り腰的な印象。重厚感はあるもののアップテンポなリズムの曲では少し遅れ気味に聴こえてしまう。
トーンコントロール機能には、あらかじめプリセットされているイコライザーカーブがあるが、設定されるカーブごとの音の変化は面白く聴けるかもしれないけれど、過度な演出という印象が否めない。いい音で音楽を楽しもうという向きには不要だろう。おそらくはイコライザーがフラットな状態であろう「ユーザー設定(デフォルトではこの状態)」が比較的整ったバランスであるので、この設定で聴くのが正攻法といえそうだ。試しにユーザー設定をベースに、トーンコントロールの調整をしてみた。
結果、BASSが−2、MIDが+2、TREBLEが0というところに落ち着いた。高速走行時などではBASSをもう1ポイント戻して−1としてもいいかもしれない。緻密な音楽表現を求めるよりも音楽全体の姿を大掴みに感じる聴き方が良さそうで、さまざまな音楽ジャンルにかかわらず、迫力のある聴き心地を楽しむことができるだろう。
個人的にはBluetoothオーディオのサウンドに魅力を感じた。USBメモリーでも、前述の音の印象で変わりがないのだが、Bluetoothで聴くほうがいくぶん中域の太さがやや減退するものの解像力が高まって聴けた。あくまでも緻密さを追求する聴き方で楽しむ方向ではないけれど、Bluetoothオーディオの粒立ちが鮮明になるサウンドは、アコースティックな楽曲もエレクトリカルな楽曲も存分に楽しめそうである。
<photo : Kei Hasegawa>