ドライバーのもどかしさを解消してくれる有能なガジェット
文=長谷川圭
ここ数年、スマートフォンクレイドルがあるといいなと思っていた。理由は、なんといっても車室内での居場所がないためである。これまで、ドリンクホルダーに放り込んでいたり、シャツの胸ポケットに待機させていたりしていたのだけれど、どうにも所在なさげで、定位置とはいいがたく、なんといってもスマートフォンがスマートフォンらしく“使えていない”のがもどかしかったのだ。とはいえ、世にあるクレイドルの類は正直言って、昭和のドリンクホルダーにも似て、スタイリッシュじゃないし面白みに欠けている感が否めず、財布を開こうという気にさせてくれなかった。
そんなところに登場したのがカロッツェリアの「SDA-SC500」だ。18年10月に手元に届いた同社の冬商戦向け製品のリリース資料を見ると、電動なうえにワイヤレス充電までしてくれるという。なんともギミックに満ちた製品で、ガジェット好きの心を揺さぶるではないか。価格は、バネでスマホを固定するものに比べれば少々お高いのだが、メーカーウェブサイトを見る限り、電動でスマホをキャッチしてくれる様は、じつに楽しい。物は試しのつもりで、入手することにした。
ダッシュボード上に位置決めして取付け
手に入れた「SDA-SC500」のパッケージは、洒落たチョコレートでも入っていそうな小箱。開いてみると、クレイドルの本体と、2種類の固定用パーツ、USBケーブルとシガレットライター用のUSBプラグが入っている。固定用パーツは、ダッシュボード固定用の吸盤付きアームと、エアコンルーバー固定用のクリップが用意されていて、車両搭載状況に応じてセレクトできる。
我が家のトヨタ・アクアの場合、ルーバーに取り付けると、ただでさえ小さいセンターの送風口がかなり塞がれてしまうので、ダッシュボードに固定することにした。クレイドルの直下にUSBケーブルをつなぐ都合で、ナビ画面上にケーブルが垂れるのを避けるため、やや助手席側にオフセットさせた位置を選択した。この場所ならダッシュセンターのインスツルメントパネルを遮ることもない。
安心して走れる確かなホールド力
ダッシュボード上に吸盤の吸着力を確かなものにするための透明なシート(付属品)を貼り付け、アームを吸着させる。吸着させるまでは、正直『こんなものでしっかり固定できるんだろうか……』と幾分懐疑的なところもあった。スマホは意外と重量があるし、走行中はそれなりの振動もある。カーブでスマホが飛んできたり、首都高のつなぎ目で天井めがけてジャンプされては困る。電動アームの握力もいかほどなものかなどと考えていた。
だがしかし、装着前の心配はまったくの杞憂だった。まず、吸盤によるダッシュボードへの固定は思いのほかしっかりしており、角度や長さを調節できるアームもじつに堅牢な印象。じつはもっとも心配していた電動アームの握力もしっかりしていて、走り始めこそスマホがちゃんと鎮座しているか気にしていたものだが、すぐに気にならなくなるほど安定のホールド力を証明してくれた。
電動アクションがとにかく愉快
ワイヤレス充電機能にも大満足
一番楽しいのは、なんといってもその動くさまである。スイッチオンまたはセンサーへのタッチでアームが開き、スマホを置くやいなやしっかりとキャッチしてくれる。この動きは飽きることがなく、アクアに搭載してから数週間経っても楽しいのである。
愛用のiPhoneは6、ワイヤレス充電対応機ではない。自身が使うスマホクレイドルとしてはもったいないのであるが、気をよくしたのは我が息子。「充電できるの?」というが早いか、スマホを取り出し置いた。が、充電できない……。Gyaraxy S8なのでクレイドルの特長の一つであるQi(チー)には対応している端末のはずなのだが……。充電できると言った以上、できないのは親の沽券に関わる重大事である。
試しに、Galaxy S8をさかさまに置いてみた。瞬く間に充電開始するではないか。どうやらQiに反応するセンサー部分が、本来の向きでは微妙にズレていたもよう。クレイドル下部を支えるステーの高さを下げて、改めてスマホを置くと、ちゃんと充電状態になった。クレイドル右下のインジケーターも赤から充電状態を示す緑に変わった。お父さんの面目躍如、さぞやドヤ顔に見えているだろうと息子の顔をうかがうと、「お父さんスゲー」と目を丸くしていた。「DSA-SC500」よ、ありがとう。
ストリーミングの音源を積極的に使いたくなる
このクレイドルのおかげで、私はスポティファイやアマゾンミュージックを、息子はユーチューブをドライブ中に楽しむことができるようになった。AVナビのBTオーディオはことのほか快適で、これは車内エンターテインメントとして充分に楽しめる。さすがにCDやDVDの再生、あるいはSDカードを用いたメモリー再生には音質的に及ばないのだが、スマホを音源としたBTオーディオの手軽さは多くのドライバーに福音をもたらすだろうと感じた。
一般的なクレイドルは、クルマに乗り込むと同時に両手でガチャガチャと固定するが、この「SDA-SC500」は片手で……大げさに言えば華麗にスマホを置くことができる。これはクルマを発信させる一連の動作が流れるように行えることにほかならない。これは、幸せを感じることができる車載ガジェットのひとつとお勧めできる。
<photo & movie : Kei Hasegawa>