去る10月10日、東京・世田谷の駒沢オリンピック公園 中央広場で、坂本龍一氏の最後のピアノソロ演奏を収めたコンサートフィルム『RyuichiSakamoto | Opus』の野外上映会が開催された。
本作は、坂本氏が亡くなる半年前の2022年9月、残る力を振り絞って8日間にわたり収録したコンサート映画で、長年コンサートやレコーディングで愛用してきたグランドピアノを使っての演奏となる。代表曲「Merry Christmas Mr. Lawrence」、最後のオリジナルアルバム『12』からの楽曲、そしてYMOの「Tong Poo」をピアノソロアレンジで披露するなど、自身が選んだ全20曲で構成されている。

駒沢公園中央広場に約300インチの移動式スクリーンを設置

プロジェクターは映画館でも採用例の多いクリスティ製を使用
『Opus』の屋外上映会はこれまでも、グラングリーン大阪・うめきた公園で2度開催され、大きな反響を呼んだ。2025年9月の初開催には約5,000人、2026年5月の第2回には約7,000人が来場し、月明かりの下、坂本龍一のピアノ演奏に耳を傾けてくれたそうだ。
今回はそれを東京で開催、しかも大阪と同様に野外上映しようというものだ。企画を担当した株式会社キャブの湯田麻衣氏は、「大阪のイベントが好評でしたので、ぜひ東京でも実現したいと思っていました。今回の運営をお願いしている花井修平さん(株式会社82 DESIGN)が尽力してくれて、3連休の初日にこの場所を使えることになったんです。お天気もよくて、本当にラッキーでした」と、多くの方に坂本氏の演奏を楽しんでもらえることを喜んでいた。

株式会社82 DESIGNの花井修平さん。今回の屋外上映の立役者

Yogiboの協賛によるクッション付きエリア。上映時は小さなお子さんもクッションに寝転がってピアノの音を楽しんでいました
花井氏にも話を聞いてみると、「今日は多くの方がいらっしゃってくれてよかったです。当初は9月の開催を考えていたんですが、会場の都合などもあって今回のタイミングになりました。結果的に気候も天気も最高の時期に開催できて、本当によかったです」と、運営サイドも驚くほどの幸運が続いてこの上映が実現できたことを明かしてくれた。
その言葉の通り、来場者の多くは上映開始の3時間前から会場に集まり、寝転がって日向ぼっこをしたり、席を確保した上で公園内を散策したりと、思い思いに上映を待ちながら休日の午後を楽しんでいた。
今回のイベントは無料上映で、ビニールシートなどを持参して床に座るエリア、折りたたみ椅子を持参した方のためのエリア、Yogiboの協賛によるクッション付きエリア(人数限定で先着順)が用意されていた。その中央広場も17:00頃にはほぼ満員となり、参加者もお互いに席を譲り合いながら17:30の上映開始を待っていた。

TOHOシネマズ仕様のフロントスピーカー

スクリーン前には8台の大型サブウーファーを配置
その上映システムは、移動式の大型スクリーン(300インチほど)に、クリスティ製プロジェクターで映像を投写するもの。プロジェクターの設置、運営をサポートしたジーベックスソリューションズ株式会社 代表取締役社長 CEO 兼 シネマ事業部 事業部長 石川隆一氏によると、スクリーンやプロジェクター、スピーカーシステムなどは大阪での上映と同じ構成とのことだ。
特にスピーカーは、LOVE PSYCHEDELICOのNAOKI氏が自身のツアーで使っているイースタンサウンドファクトリー謹製TOHOシネマズ仕様だそうだ。そのL/Rスピーカーをスクリーン両脇に設置、さらにスクリーン下には合計16基の大口径ユニットを備えたサブウーファーが8台並んでいる。これだけのシステムで屋外の映画上映を楽しめることは、まずないだろう。

いよいよ上映スタート

オリンピック記念塔からの様子。立ち見の皆さんも本当に楽しそうでした
夕闇が迫る中、いよいよ上映がスタート。秋の夜空に映し出される坂本氏の姿と、中央広場に響くピアノの音が心地いい。そのサウンドも、低域の量感を備えながら浸透力に優れたもの。時折虫の声が響く開放的な空間で、坂本氏のピアノソロに浸っている幸せを感じることができた。
試しに上映中に中央広場の後ろ、オリンピック記念塔の下まで移動してみた。スピーカーからかなり距離があるにも関わらず、ピアノの音が明瞭に聴き取れる。1万人以上のオーディエンス(公式発表)にこれだけの音を届けてくれる再生機器に、感謝の念を贈りたい。大阪、東京に限らずこういった上映会はぜひ続けて欲しいと切に願う次第だ。
(取材・文・撮影:泉 哲也)


