HiFiオーディオブランドの水月雨(MOONDROP)は、2026年9月5日(土)に、 東京駅日本橋口直結のステーションコンファレンス東京において、試聴発表会を開催した。

MOONDROP代表取締役・開発部担当の鄭 瀚鵬(水月)氏
発表会では、MOONDROP代表取締役で開発部担当の鄭 瀚鵬(水月)氏が来日し、ヘッドホンをはじめ、イヤホン、ワイヤレスイヤホン、ポータブルDAC/アンプ、ゲーミングデバイスなど、多彩なカテゴリーの新製品について開発背景や技術的な特徴を紹介した。なかでも注目を集めたのが、MOONDROP初の本格的な平面磁界型ヘッドホン「DARK SIDE(月之暗面)」及び、7年にわたる開発を経て完成した静電型ヘッドホン「MOONZERO(月零)」だ。
注目の平面磁界型ヘッドホン「DARK SIDE(月之暗面)」
発表会の冒頭で紹介されたのは、新フラグシップモデルとして開発が進められてきた平面磁界型ヘッドホン「DARK SIDE」だ。現時点では、正確な発売時期や価格は未定となっているが、価格においては「40万円ほどを想定している」とのこと。販売方法は、受注生産を予定している。

平面磁界型ヘッドホン「DARK SIDE」
「DARK SIDE」は、2025年に中国・深州で開催されたポータブルオーディオ中心のイベント「SIAS 2025(深州国際オーディオショー)」で開発中であることが発表された製品。鄭氏によれば、「『SIAS 2025』で本製品を発表した後、開発を進めるなかでさまざまな課題が見つかりました。それらを一つひとつ改善し、約1年をかけて完成させました」と説明した。

物量を投入したという「DARK SIDE」には、フレームに多層複合カーボンファイバーを採り入れており、外装やヘッドバンドの支持構造に活用することで、軽量でありながら、高い強度を実現している。
さらにヘッドバンドパッドには3Dプリント技術を採用。柔軟性を持たせるとともに、装着時の調整も可能にしている。さらに、スポーツ素材などにも応用されている新しい素材と技術を取り入れることで、耐衝撃性と柔軟性を両立させているという。

平面磁界型ドライバー部の大きな特徴は、鄭氏によれば、「ドライバーユニットと本体構造を一体化している点にある」とのこと。精密なCNC切削によって成形したPMMAフレームや、セラミック製の振動板固定ブラケットなどを組み合わせた独自構造(特許取得済)を採り入れていることが特徴と話す。
振動板には、同社がこれまで培ってきたFDT(Full Drive Technology)全面駆動技術を継承。振動板面積の95%以上を直接駆動することで分割振動を抑え、高域の再生能力を高めている。

振動板の厚さはわずか500nm(ナノメートル)。そこに純金による導体パターンを形成。これにより、一般的な振動板と比較して薄く、軽量で柔軟性に優れることに加えて、純金による導体パターンが振動板の柔軟性を活かすため、高品位な低域再生を実現するという。

付属ケーブルには、金・銀・パラジウムを用いた高品質な合金ケーブルを採用。さらに、アルミ製のキャリングケースも付属する。そのケースにはシリアルナンバーを刻印した金属製プレートも用意されるなど、フラッグシップモデルにふさわしい仕上がりを目指しているとのこと。
7年越しで完成した静電型ヘッドホン「MOONZERO(月零)」
さらにもう1つのフラグシップ製品として披露されたのが、今年中の発売を目指して開発が進められている静電型(コンデンサー型)ヘッドホン「MOONZERO」だ。価格は未定だが、「10万円以下を想定している」とのことだ。
鄭氏は、「7年前から開発を始め、無数の試作を繰り返し、幾多のトラブルを乗り越えて完成させた、念願の静電型ヘッドホン」と語り、MOONZEROの開発にかけてきた想いを語った。

静電型(コンデンサー型)ヘッドホン「MOONZERO」
独自開発の静電ドライバー構造を用いて、直径112mmという大型の静電ドライバーを開発。
振動板の素材は「企業秘密」としながらも、1.2μmという薄さの“金色蝉翼”を振動板に採用したことにより、安定性のある構造と高い信頼性を備えるほか、温度・湿度の変化にも強く、分極電荷分布を均一にしているという。

ハウジングはオープン型で、二重の保護ネットを採用。ドライバーを保護するとともに、ハウジング内部での反射を低減する構造としている。
サウンド面については、「静電ヘッドホン特有の、自然でクリアなサウンドの魅力を凝縮させた」とのことで、長年にわたる開発の成果を、音質面にも反映させたモデルとなっているという。

入力プラグには汎用の5ピンコネクターを採用。これにより「市販の多くの静電ヘッドホンアンプに対応できる」としており、専用アンプを必要としない汎用性も特徴のひとつだという。

ヘッドバンドにはドライカーボンを採用。カーボンの弾性を活かすことで装着感を高めながら、耐久性にも優れ、軽量な仕上がりにしている。ヘッドバンドのパッドについては位置の調整が可能で、スポーツ機器などにも用いられる先進的な素材・工法を採り入れている。イヤーパッドにはラムスキンを採用するなど、質感にもこだわったモデルとなっている。
7年という長い開発期間を経て、ついに完成したMOONZERO。水月雨にとって初となる本格的な静電型ヘッドホンは、その仕上がりが注目される。
「DARK SIDE」「MOONZERO」以外にも、多彩な新商品をお披露目
完全ワイヤレスイヤーフック型DAC/アンプモジュール「EVO II」

完全ワイヤレスイヤーフック型DAC/アンプモジュール「EVO II」
「EVOⅡ」は、耳掛け型の完全ワイヤレスBluetoothアダプターとワイヤレスDAC/アンプを組み合わせた新カテゴリーの製品。Bluetooth接続に加え、高効率なデジタルパワーアンプを搭載し、最長15時間の連続再生を実現する。
LDAC、LHDC-VのBluetoothコーデックをサポートするほか、専用アプリによる10バンド・パラメトリックEQにも対応。ユーザーの好みに合わせたサウンドチューニングが可能となっている。専用設計の充電ケースも付属する。価格は¥16,650(税込)を予定している。
IEM専用ゲーミングセット「E.S.Combo」も登場

IEM専用ゲーミングセット「E.S.Combo」
ゲーミング向け製品として「E.S.Combo」も登場した。イヤホン本体に着脱式のゲーミング用マイクを組み合わせたモデルで、通常のイヤホンとして使用できるほか、ゲーミング時にマイクを装着すれば、ボイスチャットにも対応する。
ワンタッチでミュート操作ができる「One-Touch Mute Switch」や、マイクの風切り音を抑えるウインドスクリーンを備えるほか、専用のゲーミングサウンドカードモジュールも用意。5種類のサウンドチューニングモードに加え、専用アプリ/ソフトウェアによるDSPや10バンド・パラメトリックEQにも対応する。価格は¥7,380(税込)を予定している。
4種類の接続方式に対応するゲーミングヘッドセット「Gaming Maestro GM-01Pro」

ゲーミングヘッドセット「Gaming Maestro GM-01Pro」(写真左・中央)と「Gaming Maestro GM-01Pro」のJD.comとのコラボレーションモデル(写真右)
さらにゲーミング向け製品として、オーバーイヤー型の「Gaming Maestro GM-01Pro」も披露された。2.4GHz専用ワイヤレス、Bluetooth 6.0、USB-C/USB-A、3.5mm AUXの4種類の接続方式に対応し、PCやゲーム機、スマートフォンなど幅広い機器で使用できる。
2.4GHz接続時の理論上の伝送遅延は最短15ms、実測時のエンド・ツー・エンド遅延は最短30msを実現。ドライバーには50mmの大型ダイナミック型ユニットとN52ネオジム磁石を採用している。
電源には、1000mAhのバッテリーを搭載しており、2.4GHz接続時で最大100時間、Bluetooth接続時では最大150時間の連続使用を可能にしている。重さは、270g以下に抑えられている。専用アプリではDSPによるサウンド調整や10バンドEQにも対応する。
価格は¥10,800(税込)を予定している。
また、中国のECサイト「JD.com」とコラボレーションした特別仕様モデルの発売も予定しているとのこと。
ノイズキャンセリング対応のワイヤレスイヤホン「The Garden」

ノイズキャンセリング対応ワイヤレスイヤホン「The Garden」
ノイズキャンセリング対応のワイヤレスイヤホン「The Garden」も披露。
カーボンファイバー系の振動板を採用した独自の13mm平面磁界型ドライバーを搭載。ドライバーには、独自のFDT(Full Drive Technology)構造を採用している。
Bluetoothによるワイヤレス伝送に加え、アクティブノイズキャンセリング機能や音声通話機能にも対応。LDAC、LHDC-VのBluetoothコーデックをサポートするほか、専用アプリによるDSPサウンドチューニングも可能となっている。
透明な充電ケースを採用するなど、デザインにもこだわったモデルで、価格は¥27,900(税込)を予定している。
Crinacle氏とコラボレーションした有線イヤホン「Silicon」

有線イヤホン「Silicon」
有線イヤホンも披露されており、シンガポールを拠点に活動しているオーディオレビュアーCrinacle氏とコラボレーションした「Silicon」が展示されていた。1基の低域用ダイナミックドライバーと2基の中域用BAドライバー、さらには2基の高域用MEMSドライバーによる、片側3種類/5ドライバー構成を採用したトライブリッド構成となっている。
新開発の低歪みMEMS高域ユニットを搭載し、高域の表現力を追求している。Crinacl氏との共同開発によって、各ドライバーのつながりを意識したチューニングを施したモデルとなっている。
ハウジングは人間工学を用いたコンパクトな形状とし、交換プラグ対応の専用ケーブルと4.4mm/3.5mmプラグが付属。価格は¥43,920(税込)を予定している。
イヤホンで培った技術を武器にMOONDROPが挑む、新たなオーディオの領域

MOONDROPの公式キャラクター水月友希(水月ゆき)もイベントに登場
今回の発表会では、単に製品の紹介だけではなく、それぞれのカテゴリーにおいて独自の技術開発を進めていることが強くアピールされていた。
特に「DARK SIDE」と「MOONZERO」は、これまでのMOONDROPの製品とは明らかに異なるカテゴリーへの挑戦といえるだろう。
イヤホンで培ってきた技術をヘッドホンや、ゲーミングオーディオへと広げていくMOONDROP。2026年後半以降、同社が日本市場でどのような製品を展開していくのか、今後の動向に注目したい。

