大抵のホラー映画がオーケストラ編成によるスペクタクル・サウンドだとすれば、この作品には室内楽的な静けさがある。そもそも、人間がごく少数しか登場しない。それもそのはず、“リーパー”と呼ばれる謎のモンスターが人類の95パーセントを死滅させてしまったからだ。

 つまり残りの人類は5パーセントということになるが、これはそこから3年後の物語であり、サヴァイヴァーの数はさらに減少している。リーパーは死滅していないものの、標高2500メートル以上には来ないことが判明しており、生き残った者は山岳地帯の孤立したコミュニティでつつましく暮らしている。主人公のウィルは、肺の病気を患っている息子と暮らしている。だがその薬も不足してきたので、新たな薬を手に入れるためには2500メートルのラインを超えて、より低いところまでいく必要がある。なおウィルの妻はリーパーに殺されている。

 ウィルのリーパーへの恨みには想像を絶するものがあるはずだ。が、あくまでも彼は冷静に、淡々と、「リーパーを殺しまくること」よりも、「自分たち人間にとって、より良い明日」を第一義として行動していく。彼がすがすがしければすがすがしいほど、リーパーの「人間を別に食料にするというわけでもなく、絶滅させるために殺戮する」体質の恐ろしさが際立ってくる。この、カメムシが巨大化したような生き物が、なぜきっちり2500メートルを守るのか、そもそも何を食料にして生きていくのか……おのれの感性を想像力でいっぱいにしながら、後半まで一気に見きってほしいと思う。個人的には「酸素」にしびれた。

 監督はジョージ・ノルフィ、出演はアンソニー・マッキー、モリーナ・バッカリン、マディー・ハッソンほか。モンスターのクリーチャー・デザインには『猿の惑星/キングダム』 『ゴジラvsコング』を手掛けたクリエイターが参加した。

映画『エレベーション 絶滅ライン』

2025年7月25日(金)より、ヒューマントラストシネマ渋谷、シネマート新宿ほか全国公開

監督:ジョージ・ノルフィ 製作:ブラッド・フラー
出演:アンソニー・マッキー、モリーナ・バッカリン、マディー・ハッソン
2024年/アメリカ/英語/91分/カラー/シネスコサイズ/原題:Elevation/配給:アット エンタテインメント/映倫区分:G
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公式サイト
https://elevationmoviejp.com/

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