クアルコムは先日、同社の「XPAN」(Expanded Personal Area Network)についての説明会を開催した。XPANは同社Snapdragon Sound接続技術で、概要は数年前に発表されていたが、その詳細や具体的な製品への採用についてはほとんど紹介されていなかった。

XPANのDirector , Product Management , V&MのNigel Burgess氏(左)と、VP, Product management, V&MのNeeraj Sahejpal氏(右)
今回は、同社VP, Product management, V&MのNeeraj Sahejpal氏と、Director , Product Management , V&MのNigel Burgess氏が来日、技術概要と実際の製品を使ったデモンストレーションが行われている。
まずXPANとは、おおまかに言うとWiFi帯域(WiFi 4)を使ってBluetoothの信号を伝送する仕組みだ。Bluetoothは近年のオーディオ再生で多く使われている無線伝送方式で、省電力で信号伝送ができる点が特長だ。ただし伝送できる距離が短い(近い)ので、使用できる範囲が限られているという側面もあった。
XPANはWiFiを使うことで、その弱点をカバーしようというものだ。信号伝送にはBluetoothコーデックのaptX Adaptiveを使っているそうで、電波の強度に応じてビットレートを調整している。さらにハイレゾ、ロスレス信号も伝送できるので、クォリティという面でも期待ができる。ハイレゾについては現状96kHz/24ビットまでだが、将来的には192kHz/24ビットにも対応する見込みとのことだった。

XPANの動作イメージ
その接続方法は、対応プレーヤー(DAPやスマホなど)と対応再生機(イヤホンなど)の間をダイレクトにWiFi/Bluetoothでつなぐ方法と、アクセスポイントを経由してWiFiでつなぐ方法が想定されている。
まずはプレーヤーとイヤホンをWiFi/Bluetoothでダイレクトに接続し(接続の優先順位はセットメーカーやユーザーが設定できるようになる見込み)、電波の強さに応じてそれらを自動的に切り替えて再生を行う。それでも伝送できなくなったらアクセスポイントを経由するといった使い方になるようだ。なお、どのタイミングで接続方法を切り替えるかはXPAN側が判別し、切り替えの際にはバッファ機能を活かして音楽が途切れないように配慮されている。
ちなみにXPANが実現できた要因として、クアルコムが独自に開発した省電力WiFi伝送技術があるとかで、Bluetoothと同じくらいの消費電力で無線伝送が実現できていることが大きいそうだ。つまりポータブルデバイスで重要なバッテリー持続時間がこれまでと変わらないわけで、完全ワイヤレスイヤホンなどでも安心して搭載できる。

説明会に続いてXPANを搭載したデモ機を使った体験も行われた。クアルコムの会議室にスマホを置いて音楽を再生、体験者がイヤホンを装着した状態で部屋の外に出て離れていくに従ってダイレクト接続が状態からアクセスポイント経由になり、近づいてくると再びダイレクト接続に戻っていることがログで確認できた。体験者によると、音の途切れもほぼなかったそうで、音楽再生用としても不満はなさそうだ。
近年、ワイヤレス機器で音楽を楽しんでいる人は多い。プレーヤーやイヤホンの性能も向上し、ハイレゾ品質で信号を伝送できる機器も増えている。しかし実際には屋外(特に電車内や駅など)ではハイレゾコーデックの伝送が不安定になったり、ノイズが出てしまうこともある。XPANはWiFiを使うことでそういった弱点をカバーしてくれるとのことで、いつでもいい音を楽しむための機能として注目を集めることだろう。
対応機器がいつごろ、どんな形で登場するか、楽しみに待ちたい。