4月13日にスタートする大阪・関西万博、その会場にひと足先(4月上旬)にお邪魔して、オーディオビジュアル関連の展示を拝見してきた。大屋根リングやトイレなど、色々な点で話題になっている万博だが、実際に現地を訪れてみると、その規模感には驚かされた。

 その前に今回は東京から日帰り取材だったので、朝6:33 新横浜発のぞみ3号に乗り、8:52 新大阪でOsakaMetro御堂筋線に、9:11 本町駅でOsakaMetro中央線に乗り換えて、9:31 夢洲駅着というスケジュールで動いている。これで10時からの記者会見に間にあったわけで、体力に自信のある人なら日帰り万博行脚も夢ではないかも(見学できるパビリオンは限られるけど)。

画像1: 大阪・関西万博のオーディオビジュアル的見どころを訪問。「シグネチャーパビリオン」の「超時空シアター」と「ANIMA!シアター」で、ソニーPCLによる没入体験を楽しんだ

 ちなみに夢洲駅もなかなかに巨大で、SF映画の近未来のイメージに近い。その改札ゲートを出てエスカレーターを登った目の前が万博会場入口だ。セキュリティゲートを過ぎると、少し先にある大屋根リングが目に入る。高さ20mの木造建築とのことで、近づいていくとその巨大さが実感される。これが日本の伝統工法で作られているのかと思うと、感動する。

 大屋根リングの下を通り(思わず柱に触れてしまった)、シグネチャーパビリオンまで移動する。徒歩10分弱の移動だったが、その間にも意匠の異なる様々なパビリオン(4月上旬時点では工事中もちらほら)があり、最終的にどんな仕上がりになるのか気になった。

画像2: 大阪・関西万博のオーディオビジュアル的見どころを訪問。「シグネチャーパビリオン」の「超時空シアター」と「ANIMA!シアター」で、ソニーPCLによる没入体験を楽しんだ

 シグネチャーパビリオンは万博会場のほぼ中央のスペースで、ここには「いのち」をテーマにした展示が並んでいる。そこにある8つのパビリオンを、分野の異なる8名のプロデューサーが監修していることも話題だろう。

 その中の「いのちめぐる冒険」パビリオンは、アニメーション監督/メカニックデザイナー/ビジョンクリエーターの河森正治さんが監修しているそうで、VR/MR技術を活かした「超時空シアター『499秒 わたしの合体』」というイマーシブ体験が可能。そこにはソニーPCLの立体音響技術が使われ、没入感を高めているそうだ。

画像: 「シグネチャーパビリオン」を担当した8名のプロデューサー

「シグネチャーパビリオン」を担当した8名のプロデューサー

 ということで、早速超時空シアターの列に並んでみた。会場内には30人分のVRゴーグル(超時空デバイスと呼ばれている)が置かれ、スタッフの説明を聞いた後、これを自分で装着する。映像はゴーグル内蔵カメラを使ったMR(複合現実)からスタートし、演出内容に応じてVR(仮想現実)と切り替わりながらコンテンツが進んでいく。

 「VRとMRを行き来しながら、宇宙スケールの食物連鎖を同時に体験する」というテーマに即した内容で、映像はギラツキすぎず、VRゴーグル酔いなども気にしないですみそうだ。

 それに組み合せられたソニーPCLの立体音響は、耳元にあるVRゴーグル搭載スピーカーからの音と、会場内に配置されたスピーカーの音を空間でミックスして響かせている。その効果も絶妙で、映像と一体化した空間演出を楽しむことができる。

画像: 「超時空シアター」。円形の室内に定員30名分のVRゴーグルが置かれ、椅子に座って映像を体験する

「超時空シアター」。円形の室内に定員30名分のVRゴーグルが置かれ、椅子に座って映像を体験する

画像: 「超時空デバイス」ことMeta Quest3で、VR/MRを体験

「超時空デバイス」ことMeta Quest3で、VR/MRを体験

 「いのちめぐる冒険」パビリオンにはもうひとつ、「ANIMA!シアター」も設置されている。こちらは作編曲家/演奏家/音楽プロデューサーの菅野よう子さんが創り出す音の世界とインタラクティブな振動や立体音響、プロジェクションマッピングが楽しめる没入型空間だ。

 室内にはサイズの異なる紗幕が吊り下げられ、そこに複数台のプロジェクターを使った映像が投写される。映像は水や光、樹木をモチーフにしたもので、さらに日本のお面らしきキャラクターも登場するなど15分の上映中飽きさせない内容となっている。

 さらにここには、ソニーPCLの「床型ハプティクス」技術も採用されている。これは、先に渋谷で行われたイマーシブ体験イベント「HOKUSAI : ANOTHER STORY in TOKYO」でも使われていたもので、床面に振動源を配置して、人の歩行にあわせた ”揺れ” を発生させている。例えば上映の最初に来場者にジャンプを促すナレーションがあるが、そこでジャンプすると、着地のタイミングで床を振動させることでより多くの人数がジャンプしたかのように錯覚させている。

画像: 「ANIMA!シアター」では色とりどりの映像と、振動を伴った立体音響が楽しめる

「ANIMA!シアター」では色とりどりの映像と、振動を伴った立体音響が楽しめる

 こうした体験空間の他にも、高さ4mのLEDディスプレイが置かれた「宇宙の窓」という展示もあり、ここでは衛星で撮影された数分前の地球や太陽の様子もモニターできる。加速度撮影された太陽フレアの動く様子など、このサイズで見ると案外迫力があって興味深かった。

画像: 「宇宙の窓」には人工衛星で撮影した地球や太陽の映像が映し出されている

「宇宙の窓」には人工衛星で撮影した地球や太陽の映像が映し出されている

 その他の7つのパビリオンをすべて回ることはできなかったが、それらの中で面白かったのは、映画作家の河瀬直美さんがプロデュースした「Dialogue Theater—いのちのあかしー」に置かれていた400年杉板スピーカーだった。樹齢400年の杉の木を縦方向にカット、厚さ2cmほどの板の裏側に振動子(アクチュエーター)を取り付けて自然の音などを再生していた。

 8枚置かれたスピーカーでは、小鳥のさえずりや工事現場の音などを時間によって鳴らし分けている。なお各スピーカーはそれぞれ異なる音を鳴らしているそうで、室内を歩きながら音を聞いてみると印象が変化するかもしれない。また板面にふれることもできるので、音と振動というふたつの感覚で展示を体験してみるのもいいだろう。

画像: 河瀬直美さんプロデュースによる「Dialogue Theater—いのちのあかしー」パビリオン。内部には150人が入れるシアター空間もあり

河瀬直美さんプロデュースによる「Dialogue Theater—いのちのあかしー」パビリオン。内部には150人が入れるシアター空間もあり

画像: 400年杉板スピーカーは、実際に表面に触れて振動を楽しむこともできる

400年杉板スピーカーは、実際に表面に触れて振動を楽しむこともできる

 大阪大学教授/ATR 石黒浩特別研究所客員所長 石黒浩さんがプロデュースした「いのちの未来」は、日本人が昔から身近に感じてきた人形(ひとがた)をモチーフに、50年後の世界を提示している。人間とアンドロイドが共存したらどうなるか……という提案のようで、SF的には目新しさはないが、会場内に置かれた透明ディスプレイや大型LEDパネルの使い方をチェックしてみるものいいかもしれない。

画像: 「いのちの未来」に置かれた透明ディスプレイ

「いのちの未来」に置かれた透明ディスプレイ

画像: 放送作家/京都芸術大学副学長 小山薫堂さんがプロデュースした「EARTH MART」に展示された、未来を見つめる鮨屋

放送作家/京都芸術大学副学長 小山薫堂さんがプロデュースした「EARTH MART」に展示された、未来を見つめる鮨屋

画像: メディアアーティスト 落合陽一さんプロデュースの「いのちを磨く」パビリオン。今回は内部を拝見できませんでしたが、AIがリアルタイムで制作した映像などが楽しめるとのこと

メディアアーティスト 落合陽一さんプロデュースの「いのちを磨く」パビリオン。今回は内部を拝見できませんでしたが、AIがリアルタイムで制作した映像などが楽しめるとのこと

画像: 海にせり出した大屋根リング。その手前の「ウォータープラザ」では、約300基の噴水を使った演出もあり

海にせり出した大屋根リング。その手前の「ウォータープラザ」では、約300基の噴水を使った演出もあり

(取材・文・撮影:泉 哲也)

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