映像ディレクターとして数々のMV撮影に携わり、近年では映画監督として多くの作品を制作している小嶋貴之監督の最新作『帰ってこなかった男』が、3月28日(金)より公開となる。

 配偶者が失踪して3年が経過すると離婚できる。そして7年が経過すると死亡保険金が受け取れる……。そのシチュエーションを利用したサスペンス作となる。ここでは、元旦那の死亡保険金が受け取れるまであと半年と迫った妻・持田佳奈を演じた斎藤千晃にインタビュー。さまざまな表情を見せる彼女の、役作り、芝居の工夫を聞いた。

画像1: 「斎藤千晃」が多彩な表情を見せる妻役を演じた『帰ってこなかった男』が3月28日より公開。「新たな挑戦をした芝居を味わってほしい」

――よろしくお願いします。今回は『帰ってこなかった男』への出演おめでとうございます。ほとんど主演的な存在感でした。
 ありがとうございます。そう言っていただけるとうれしいです。

――続編が作れそうな気もします。
 そうですよね。それは小嶋監督ともお話していました。

――しかも、公開前から話題になっています。
 北海道の映画祭で観客賞をいただきまして、本当に有り難いです。

――中編ですけど、サスペンスと銘打つだけあって、じわじわと襲ってくる恐怖や、登場人物それぞれに秘密があって、ネタバレになるのであまり詳しくお聞きできませんけど、ところどころに意味深なカットもありました。こういう作品って、事前に演出方法などを監督と細かく詰めていくものなのですか。
 そこは監督から、お芝居はどうとも取れるようにしてほしい、その塩梅は決めていいよ、と言われていたので、自分で決めて演じました。それは、自分の心の中だけでの決め事でしたので、誰にも言わずにいました。私は、ただ目の前の人とお芝居をするっていうことだけを心がけていました。

画像2: 「斎藤千晃」が多彩な表情を見せる妻役を演じた『帰ってこなかった男』が3月28日より公開。「新たな挑戦をした芝居を味わってほしい」

――途中からサスペンスが加速していきます。
 そうですね、終盤に向けてはスピーディに話が進んでいくようになります。

――ところで、話を戻しますが、本作への出演の経緯を教えてください。
 この作品の前に、同じメンバーで短編(「マザーとの邂逅」2023年)を撮っていて、その時に、次は長編を撮ろうねっていう話になって、それが形(中編ですけど)になったのが、本作になります。テイストやキャラクターは全然違いますね。

――本作とのW上映も面白そうです。
 ぜひ! テアトル新宿さんとか、シネマスコーレ(名古屋)さんでやってほしいです。お願いします。

――さて、前作とはテイストがまったく違う、本作の脚本を読んだ時はいかがでした。
 最初に読んだ時は、展開は面白いし、それぞれのキャラクターの受け取り方についても、いい意味でお客さんに委ねられる作品なので、これを演じるのは大変だぞって感じました。

 撮影に向けての役作りはもちろんやりましたけど、事前に固めてしまうのではなく、小嶋監督は特にリハーサルを大事にされる方なので、リハを重ねてく中で、キャストのみなさんと一緒に役や芝居を構築していった、という感じです。

 やはり、(役者同士の)キャッチボールって大事なんだなと強く感じました。ある程度自分で作っていったもの(役柄)が、その掛け合いの中でまた変わっていくんです。自分では、こういう感じかなと思っていても、一緒にセッションしてみて、あぁそうくるのね、オッケー、じゃあこっちにしてみるわ、という風に創っていくので、リハはすごく楽しかったです。

――芝居芝居していない、自然な雰囲気を映像から感じられましたので、そうしたリハの積み重ねが発揮されているのでしょうね。
 本当ですかっ! ありがとうとございます。前作での共演経験も、本作に活きていると思います。

――そうした自然なお芝居とともに、斎藤さんはいい声をされているので、お芝居に引き込まれました。
 ありがとうございます、うれしいです。今日は褒められる日なんですか(笑)? お芝居で言えば、北海道の映画際で小嶋監督は、熊切和嘉監督から役者はどこで集めてきたの? って聞かれたそうなんです。私は熊切監督の作品が大好きで、ずっとご一緒したいと思っていたので、その話を聞いてうれしくなって! 熊切監督、お願いします!!

――それにしても、佳奈はいろいろな表情を見せます。
 そうなんです。そのちぐはぐ感を、お客さんにどう捉えてもらえるのかということは考えていました。お芝居には1本通さないといけない筋がある、と私はずっと思っていたのですが、それをぶち壊してくれたのが小嶋監督なんです。映画って、作品全体でお客さんにエンタメを提供するものなので、お芝居がどうこうというより、この作品面白いねって感じてもらえるようにしているんです。その過程で、表情がコロコロ変わったり、陰が見えたりとか、そうところが出ている、という感じです。

――旦那があゆみ(実倉萌笑)と不倫しているのがバレそうになってから、サスペンス感が加速します。
 そうですよね。どんどん追い込まれていって(笑)。

――佳奈のラストの表情は印象に残ります。
 監督から、“絶妙な顔をして”と言われたのは覚えています。

――それをどう受け取るかは、観客に委ねると。
 はい! 皆さんに感じてほしいです。

――ところで一つネタバレしますが、終盤で行方不明になる人はどうなったのでしょう? 話の本筋に関係していないように見えて、実は関係していたとか。
 どうしたんでしょうね。そこまで考えてなかったです。

――今回、佳奈を演じた感想をお願いします。
 こういう役は初めてだったので、新たな挑戦でもあり、同時に、たいへんさと面白さの両方を感じることができました。これまでは、しっかりと芝居を決めてから演じることが多かったので、やり方を変えてどう見えるんだろうという不安もありましたけど、監督を信頼して、お任せして、相手と呼吸を合わせることを1番に考えて、芝居芝居していない芝居ができたと思います。

――今後やってみたい役は?
 二面性のある役がいいですね。その違いがもっと分かるような芝居をしてみたいと思っています。

――最後に、作品の見どころをお願いします。
 小嶋監督とは映画の趣味が一緒だったので、こうしてまた作品でご一緒できたのは、本当にうれしいです。加えて、ブラックコメディのテイストがある作品になったのも、夢が叶った! という思いです。

画像3: 「斎藤千晃」が多彩な表情を見せる妻役を演じた『帰ってこなかった男』が3月28日より公開。「新たな挑戦をした芝居を味わってほしい」

 そして、見どころはコメディ感が満載の居酒屋のシーンです! その撮影は本当に楽しかったです。本当にアドリブだらけで(笑)、テストでは長くなってしまったこともあり、監督から(本番では)もうちょっと縮めてって言われるぐらいだったんです。本番では(短くなるように)頑張りましたけど、コメディ要素も強いので、注目してください。

――ところで、プロフィールを拝見すると昨年はお休みして、今年から活動を再開とあります。
 はい、昨年出産して、いまは少し手が離れるようになったので、活動を再開しています。結婚と出産を経験して、環境はガラリと変わりました。

 しばらくは、役者の活動を第1に持ってくることが難しいと思いますが、子育てという新たな生活を、役者としての幅とか経験値に活かしていきたいです。

 私は、好きなもの――役者とか芝居活動――を仕事にしたいと思っていて、それに真剣に向き合っていく人生を送りたいと、最近はすごく感じるようになりました。とにかく芝居をしないことが考えられないので、作品作りとか、脚本に触れることに長く携わっていきたいです。一生涯プレーヤーでありたいです。

画像4: 「斎藤千晃」が多彩な表情を見せる妻役を演じた『帰ってこなかった男』が3月28日より公開。「新たな挑戦をした芝居を味わってほしい」

映画『帰ってこなかった男』

2025年3月28日(金)よりテアトル新宿 ほかにて全国順次公開

【テアトル新宿での登壇者(予定) ※3月20日現在】
●3月28日(金)18:50~の回上映後 初日舞台挨拶
登壇:卯ノ原圭吾、斎藤千晃、実倉萌笑(以上、出演)、小嶋貴之(本作監督)
MC:下京慶子(ジーンシアターアンバサダー、俳優、プロデューサー)

●3月29日(土)18:50~の回上映後 トークイベント
登壇:卯ノ原圭吾、実倉萌笑、宮本聖矢、米元信太郎、小幡貴史、松本響、島林瑞樹、八木亜希紗、鐘ヶ江佳太(以上、出演)、小嶋貴之(本作監督)

●4月5日(土)18:50~の回上映後 トークイベント
登壇:末吉ノブ(映像監督/映画監督/Sprocket Holes Japan代表)、卯ノ原圭吾、実倉萌笑、宮本聖矢、米元信太郎、小幡貴史、八木亜希紗(以上、出演)、小嶋貴之(本作監督)

<出演>
卯ノ原圭吾 斎藤千晃 実倉萌笑
小幡貴史 松本響 島林瑞樹 八木亜希紗 鐘ヶ江佳太 佐藤達也
宮本聖矢 米元信太郎

<スタッフ>
監督/脚本/編集/製作:小嶋貴之 撮影監督:Keisuke Mizushima 照明:Jun Hirota  録音:Jo Terauchi 美術:Hibiki Matsumoto メイク:大島美保 撮影助手:白井絢香 助監督:宇津野竜輔、革崎文 制作進行:大塚勝彦 制作助手:山口正弘 美術助手:宮本聖矢 整音:浦本和宏(コサエルクリエイティブ) 音楽:Shizuka Kanata 配給:ジーンハート
2024年/日本/カラー/シネマスコープ/ステレオ/47分

●公式サイト
https://geneheart.com/haikyu/kaettekonakattaotoko

●予告編
https://youtu.be/NSiis9ES1Ts?si=Deb23OUHmwWcpO5P

●斉藤千晃 プロフィール
1990年10月22日生まれ。鹿児島県出身。
2004年に映画『赤い月』で主人公の娘役を演じ、この映画をきっかけに本格的に役者を志す。近年では、インディペンデントの映画を中心に活動。近年の代表作に『風のゆくえ』(石井慎吾監督)、『スタジオグレア』(末吉ノブ監督)、『HUE』(浦翔也監督)など。2024年、出産をし約1年間活動を休止していたが、2025年から再開予定。
公式サイト https://x.com/movie____c

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