パナソニックから、テクニクスブランドの完全ワイヤレスイヤホンの新製品「EAH-AZ100」(市場想定価格¥39,600前後、税込)が発表された。1月23日の発売を予定している。
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本体カラーはブラックとシルバーの2色
テクニクスでは現在、完全ワイヤレスイヤホンとして「EAH-AZ80」「EAH-AZ60M2」「EAH-AZ40M2」をラインナップしている。今回のEAH-AZ100はそれらラインナップのトップに位置するモデルだ。
同社によると、EAH-AZ80は20〜50代の幅広い層に愛用されているそうだ(約90%が男性)。また音質(中域〜高域)についての満足度が高い一方で、ノイズキャンセリングや通話性能、バッテリー持続時間に対しては不満を感じる人もいたという(9〜12%ほど)。EAH-AZ100はこの結果を踏まえ、多くの点で進化を果たしている
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写真右がEAH-AZ100に搭載された新開発磁性流体ドライバーで、左はEAH-AZ80のドライバー
一番の変更点は、磁性流体と薄型エッジ、10mmアルミニウム振動板を採用した新開発ドライバーを搭載したことだ。テクニクスでは「アーティストの奏でる音をありのままに伝える音楽再生」を目指しており、低音(ベースやドラムなど)を強調するといった音作り(演出)は行っていない。そういった音楽再生を実現するためのキーアイテムが磁性流体ドライバーで、安全ワイヤレスイヤホン用としては業界初になるそうだ。
一般的なドライバーではボイスコイルがマグネット部のギャップ(隙間)を動く際に、ストローク運動を正確に制御しきれないこともある。このボイスコイルの横方向の揺れやブレが音質に影響するそうだ。
これに対し磁性流体ドライバーは、ギャップ部に磁性流体を充填することで滑らかなストローク動作を実現。ボイスコイルの動きを上下方向のみにすることで、全帯域で歪みのない音楽再現が達成できるという。
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磁性流体は粘性をもった液体
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模型を使って通常のドライバーと磁性流体ドライバーの動きの違いをデモしてくれた
テクニクスでは2019年に発売した有線イヤホンの「EAH-TZ700」で磁性流体ドライバーを搭載しているが、今回はEAH-TZ700のドライバーを再設計してさらなる小型化を行った。マグネットにはネオジムを採用し、振動板のエッジを薄くしたことで低域再現性を改善した。アルミニウム振動板はEAH-AZ80のそれを継承し、中高域の再現性に寄与している。
磁性流体ドライバーが生み出した音を活かすためにエンクロージャー構造にも配慮した。まずドライバーの後方に空間と調整用の空気孔を備えたアコースティックコントロールチャンバーを設け、低域〜中域を豊かに響かせることでドンシャリの音にならないように工夫している。またドライバー前面の空間形状を最適化して、ドラムのハイハットやバイオリンなどの自然な高音再生も実現している。
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本体サイズもEAH-AZ80(左)から10%ほど小型化されている
完全ワイヤレスイヤホンということで、装着感にもこだわってコンチャフィット形状を踏襲した。これはイヤホン本体が耳甲介(コンチャット)に収まることで、耳に圧迫感を与えない仕組みだ。またMEMSマイクの位置を軸部分に変更するなどの工夫で、イヤホンの体積を従来よりも小型化している。
EAH-AZ100専用のイヤーピースも新開発された。これまでは耳に触れる部分(イヤーピースの表面)に柔らかい素材を、内側(イヤホンに取り付ける軸部分)は硬めの素材を使っていたが、一部の音(主に低域)が外に逃げてしまうことがあったそうだ。そこで内側部分の下半分にさらに硬めの素材を使った3層構造とすることで、必要な音をすべて耳に届けることができるようになっている。
ノイズキャンセリング機能はアダプティブ型に進化した。EAH-AZ80では初期設定時のパラメーターに基づいて一定のノイズ抑制を行っていたが、EAH-AZ100では耳の形状や環境を自動測定して、リアルタイムにノイズキャンセリングのパラメーターを最適化する。電車内などのノイズ(低域〜中域)や人の声(300Hz〜3kHz)をより強力に除去できるという。
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アンビエント(外音取り込み)モードでは、強風時の聞き取りやすさが改善され、さらにワンタッチ会話モードも追加された。これは音楽再生を止めると自動でアンビエントモードに切り替わるもので、アプリから設定すればいい。
通話性能も向上している。EAH-AZ100では3基のフィードバックマイクと1基のフィドフォワードマイク、2基の発話検知用という合計6基のマイクが搭載されており(左右それぞれ)、これらで集めた音に対してAI搭載チップ(5億件の音声データを学習したAIを使用)で通話ノイズを除去している。
初搭載のVoice Focus AI機能にも注目したい。これまでの同社モデルでは、通話時に自分の声はノイズを抑えていたが、相手から送られてくる声に対しては何も処理していなかったので聞き取りにくいこともあった。EAH-AZ100では相手の音声にも通話ノイズ除去を行うことで、快適な会話を可能するそうだ。リモート会議などで活躍するだろう。
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心地いい装着性を実現するために、様々な形状のエンクロージャーも試作している
音楽再生関連では、話題の空間オーディオに対応した。ドルビーアトモス対応スマホと組み合わせることで、同フォーマットを使った配信コンテンツを臨場感たっぷりに楽しめるわけだ(2chソースも擬似的なサラウンドとして再生可能)。ヘッドトラッキングにも対応しており、頭の向きに応じて音声位置を調整してくれる。
BluetoothコーデックはSBC、AACに加えてLDACとLC3にも対応。ハイレゾクォリティでの伝送も可能だ。その他再生時間は本体のみで約10時間(ノイズキャンセリングON/AAC)、充電ケースとの併用で約28時間にアップした。マルチポイント接続も3台まで可能なので、プライベートとビジネスで兼用しても心配ないだろう。
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新製品説明会でスマホと組み合わせた音を確認させてもらった。女性ヴォーカルやクラシックの大編成なども自然で聞きやすい音質で再現される。どのジャンルでも滑らかな質感で、「アーティストの奏でる音をありのままに伝える」という狙いが見事に達成されている。
なおパナソニックでは、EAH-AZ100デビューキャンペーンとして、購入者にイヤホンと充電ケーブルを収納できるオリジナルガジェットポーチをプレゼントする。EAH-AZ100を購入し、保証書/購入証明書を専用ページからアップロードするだけと応募も簡単だ。購入期限は2月28日、応募期限は3月14日まで。