文化庁は、一般社団法人 私的録音録画補償金管理協会(sarah)から申請のあったブルーレイディスクの機器・媒体に係る補償金について、令和6年12月25日付けで文化庁長官が認可を行ったと発表した。今回認可された補償金の額は、“特定機器” が1台当たり¥200(税込)、“特定記録媒体” は当該特定記録媒体の基準価格に1%を乗じて得た金額になる。Sarahでは、令和7年4月1日からの本補償金の徴収開始を目指しており、具体的な徴収開始時期については準備が整い次第サイトで告知される。
本件についてはStereo Sound ONLINEでも、2022年7月4日に麻倉怜士さんによるリポートをお届けしているが、その際に麻倉さんが心配していた事態が起こってしまったことになる。
ここで言う “特定機器” とは、「デジタル方式の録画機能を有する機器であって、著作権法施行令第1条で定められたもの。」とのことで、もちろんBD/HDD(ブルーレイディスク)レコーダーを想定しているだろうが、解釈次第ではディスクドライブを持たないHDDレコーダーやPCも含まれる可能性はあるわけで、そのあたりが今後どこまで拡張されるのかは、注意が必要だろう。
もうひとつの “特定記録媒体” は、「特定機器によるデジタル方式の録画の用に供される記録媒体であって、著作権法施行令第1条の2で定められたもの。」だという。ここにある著作権法施行令第1条の2には、「デジタル方式の録画(デジタル方式の録音及び録画を含む。)の用に供される同項各号に規定する磁気テープ又は光ディスク(小売に供された後最初に購入する時に録画されていないものに限る。)とする。」といった記述があり、録画用ブルーレイディスクが含まれるのは間違いないだろうが、HDDやUSB、SSDも対象になるのかはっきりしない。
さらにHDDやUSB、SSDが対象になった場合、「録画用」を謳った製品に限るのか、PC用であっても録画ができれば対象となってしまうのかなど、どのようにして決定されるのかもいまひとつわからないのが現状だ。
補償金の徴収額は、先に書いた通りハードウェアが1台あたり¥200(税込)で、記録媒体は基準価格に1%を乗じて得た金額となっている。2層式50Gバイトのブルーレイディスクで1枚当たり3〜4円くらいと思われるが、ヘビーユーザーの場合使う枚数が多いのでそれなりの額になる可能性は高い(HDDやSSDならなおさら)。メーカーや販売店がこの金額を負担することはないだろうから、結局はユーザーが払うことになるわけで、今後はどの番組を残すかについてよりシビアに考える必要がでてきそうだ。
文化庁では、「本補償金の徴収に当たっては国民の理解が重要であることから、協会が中心となって、製造業者や消費者団体等と連携しながら、本制度の趣旨や意義等について国民の理解促進に向けた活動を継続的に推進することを申し添えます。」としているが、そもそもデジタル放送のダビング10との関係がどうなったのかも不明なわけで(日本レコード協会から「私的な規模や領域を超えてまでコピーが拡散することを抑止しているにすぎず、その範囲で行えるコピーに対する対価の還元の必要性がなくなるわけでもありません」といった見解が出てはいたが)、国民の理解促進に向けた活動が活発に行われているとは思えない。その点については、sarahに前向きな姿勢を期待したところだ。
近年は動画配信サービスの普及により、“放送を録画してメディアに残す” ことに熱心なユーザーは減っている。そんな状況下でブルーレイディスクレコーダーや録画用ブルーレイディスクを対象にしても、補償金の規模は限られている。うがった見方かもしれないが、今回の決定は、先に書いたようなそれ以外の機器やメディアまで視野に入れているようにも思えてしまう。オーディオビジュアルファンとしては、そんなことがないようにウォッチしていきたい。(文:泉 哲也)