1980年代、深夜テレビ(当時はアナログ放送しかなかった)でミュージックビデオが人気を集めていた。ちょうどビデオデッキが普及し始めた頃なので、StereoSound ONLINE読者諸氏の中には「ベストヒットUSA」を録画していたという方もいるかもしれない。当時は海外アーティストの歌唱シーンを見られること自体が貴重で、今でいうヘビーローテーションコンテンツだったわけだ。

『【初回限定生産】プリンス/パープル・レイン
<4K ULTRA HD&ブルーレイセット>(2枚組/豪華封入特典付)』 ¥8,580(税込)

画像1: 『プリンス/パープル・レイン』は、1980年代の音楽文化が詰まった一作だ。“殿下” の歌声と、UHDブルーレイで感動の再会【フィジカル万歳25】

●1984年製作●2枚組●4K ULTRA HD 片面2層●本編:約111分+映像特典 約64分●ビスタサイズ/16×9 FF●音声:DTS-HD MA5.1ch(英語)、DTS-HD MA 2.0ch(英語)、ドルビーデジタル 2.0ch(英語)●映像特典:ポップスのトップへ、ミュージック・クリップ集(Let’s Go Crazy、Take Me with U、When Doves Cry、I Would Die 4 U/Baby I'm aStar、Purple Rain、Jungle Love、The Bird、Sex Shooter)

 そんな中、かなりの頻度でオンエアされていたのがプリンスだった。特に「パープル・レイン」はあの印象的なヴォーカルもあり、映画を見ていない人でもこの曲だけは聴いたことがある、それくらいのムーブメントになっていたのだ。

 『プリンス/パープル・レイン』は、言うまでもなくプリンス本人が主演を勤めたミュージカル映画で、同曲はそのサントラに収録されている。本作は第57回アカデミー賞でアカデミー歌曲・編曲賞を受賞しており、やはり音楽が大きな話題になっていたのは間違いない。

画像2: 『プリンス/パープル・レイン』は、1980年代の音楽文化が詰まった一作だ。“殿下” の歌声と、UHDブルーレイで感動の再会【フィジカル万歳25】

 そんな懐かしい作品がUHDブルーレイで発売されたということで、数十年ぶりに見直してみた(2016年のブルーレイの時は見逃していました)。1984年公開とのことで35mmフィルム撮影作品、音はドルビーステレオで公開されていた模様。

 110インチスクリーンに投写した映像は、いかにもフィルムらしい味わいがあり、グレインも全体に残ってはいるが、1980年代らしい色乗りが楽しめる。明るいシーンではきりっとしたビデオっぽい印象なんだけど、プリンスやアポロニア・コテロの肌や衣装など、どことなく柔らかい質感が漂っている。同梱されているブルーレイの映像はグレインが大きめで、描写がやや大味に感じる。

 UHDブルーレイはハイダイナミックレンジ(HDR10)で収録されており、チャプター5〜6の湖面の反射や木もれ陽、アポロニアの衣装のレザーの質感が綺麗だ。ライブの薄暗いステージやスポットライトの表現にも、HDRらしい輝き、輝度ダイナミックレンジの広さが感じられる。演出や編集のカッティングは、1980年代らしくミュージックビデオっぽい印象もある。

画像3: 『プリンス/パープル・レイン』は、1980年代の音楽文化が詰まった一作だ。“殿下” の歌声と、UHDブルーレイで感動の再会【フィジカル万歳25】

 サウンドはDTS-HDマスターオーディオ5.1chと同2.0chを収録。今回はDTS-HD MA5.1chで視聴したが、セリフ、ヴォーカルなど聴きやすいまとまり。ライブシーンもステージ中心のバランスで、サラウンド感を主張した音作りというよりは、臨場感、包まれ感を狙っているようだ。1984年の音源とのことだが、S/Nもよく、音楽がしっかり楽しめるのは本作ではとても重要だ。

 『パープル・レイン』はミュージックビデオという80’s文化が生み出した、メモリアルな作品と言っていいだろう。昨今は映画、音楽とも日本作品の方が人気で、洋画・洋楽を聴く機会が減っているという若い層も多いようだ。そんな方にこそ、高品質なUHDブルーレイで “初見” してもらいたい。
(取材・文:泉 哲也)

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