顔のない眼【世界映画Hakken伝 from HiVi】

海外盤発売情報
豪州盤『顔のない眼』2024年11月6日リリース

THE EYES WITHOUT A FACE - 4K UHD BLU-RAY with DOLBY VISION
4K DIGITAL RESTORATION

豪インディーズ･レーベル、アンブレラ･エンターテイメントから届いた4K UHD BLU-RAY『顔のない眼』（1960）リリース･アナウンス。2018年4KレストアDSM（デジタルソースマスター）採用／最新4Kリマスター／最新HDRグレード。HDRはHDR10とドルビービジョンをサポート。スタンダード･エディションとコレクターズ･エディションで登場予定。

メスが女の顔を剥ぐ･･･『顔のない眼』は、美貌を失った娘の顔を元に戻すため、狂気の外科手術に走る医師の物語。『ジュデックス』『山師トマ』で知られる寡作家ジョルジュ･フランジュの代表作であり、生々しい手術シーンでホラー映画のショック基準を一気に引き上げた。本作に影響を受けた映像作家も数多く、冷酷な知性と身の毛もよだつリリシズムはいまも他の追随を許さない。

撮影は『霧の波止場』『ハスラー（オスカー受賞）』のユージェン･シュフタン。シュフタンは、合成撮影技術シュフタン･プロセスの開発者として知られる。1920～30年代にかけてフリッツ･ラングの『メトロポリス』、ヒッチコックの『恐喝』などに用いられたシュフタン･プロセスは、鏡を使ってミニチュアや背景を人物と合成することで、人物が大きなセットの中にいるような効果を生み出す合成技術である。その後はブルーバックなどの合成技術に置き換えられたが、近年ではピーター･ジャクソンが、自作『ロード･オブ･ザ･リング／王の帰還』 で採用して話題となった。

音楽は『アラビアのロレンス』『ドクトル･ジバゴ』のオスカー劇伴作家モーリス･ジャール。舞台音楽家から転身した50年代後半を代表する作品で、旋律の美しさや舞台音楽経験で培われたドラマの起伏に対する鋭い感受性を聴取できる。音響エンジニアは『望郷』『霧の波止場』のアントワーヌ･アルチンボー。

当時、フランス映画のプロデューサーやスタジオは、ジャンル映画としてのホラー製作に乗り気ではなかった。一方でハリウッド製怪奇映画の影響を受け、ホラー映画の製作への熱意をみせていたジュール･ボルコンは、ジャン･ルドンの怪奇小説の権利を取得、いよいよ製作に乗り出すことになった。ヨーロッパの検閲基準を考慮して、ボルコンは監督フランジュに、流血シーンを抑えること（フランスの検閲官に対して）、動物の拷問シーンを控えること（英国の検閲官に対して）、マッドサイエンティストの登場人物を登場させないこと（ドイツの検閲官に対して）を指示した。これら3つの要素はすべて小説に登場するが、映画表現いおける適切なトーンを見つけることが課題とされた。映画は検閲をクリアしたものの、それでもヨーロッパでの公開は論争を巻き起こした。批評家の反応は賞賛から嫌悪まで多岐にわたる。

1962年、アメリカでは『双頭の殺人鬼』と二本立てで公開。『フォースタス博士の恐怖の部屋（THE HORROR CHAMBER OF DR.FAUSTUS）』と改題された短縮編集･吹き替え版であった。当初、批評家からあまり好意的に受け止められなかったが、その後劇場やホームビデオで再公開されて評判が高まった。近年、多くの評論家が『顔のない眼』の詩的なムードや、多くの映像作家に影響を与えた点から賞賛の言葉を贈っている。

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