今年9月で生誕90年を迎えるフランスの女優ブリジット・バルドーの特集上映『ブリジット・バルドー レトロスペクティヴ BB生誕90年祭』が、9月13日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町を皮切りに全国順次公開される。このたび、メインビジュアル2種と予告編が完成。あわせて全11作品の上映作品詳細も解禁された。
ブリジット・バルドー。愛称はBB(ベベ)。60年代を代表するファッションアイコンであり、タブーを打ち破るポジティブな官能性で、フランス女優として初の世界的大スターである。BBは社会による性的抑圧を軽やかに跳ねのける、自由奔放な女性像を体現。フェミニズムの草分けとされる『第二の性』を著した哲学者・作家のシモーヌ・ド・ボーヴォワールはBBのことを「女性史を推し進める機関車」と呼び、戦後フランスで最初の、そして最も解放された女性と紹介した。
BBは1973年、39歳のときに映画界を引退。このたびの特集上映ではバルドーの47本に上る出演作のなかから、貴重な50年代の初期作品から70年代までの主演作10本と、日本初上映となるドキュメンタリーの合計11本のラインナップで、その足跡をたどる。
このたび完成したメインビジュアルは2種。50年代モノクロver.では、『花嫁はあまりにも美しい』(1956年/ピエール・ガスパール=ユイ監督)、60年代カラーver.は『私生活』(1962年/ルイ・マル監督)のワンシーンを使用。
バレエで鍛えられた身体の美しさと、特徴的な表情がどこかコケティッシュなBBと、まるで素の生活を垣間見るかのようなBBを切り取ったビジュアルは、チラシでは両A面仕様となる。
予告編では、カラフルな50年代60年代のファッションとともに、BB主演作の印象的なシーンと、さまざまな表情やダンスをつなげ、現代によみがえるBBの魅力と存在感にあふれた内容となっている。
上映作品は下記の通り。特集上映の目玉は、4Kレストア版での上映となる『殿方ご免遊ばせ』、『私生活』。そして劇場初公開となる『恋するオペラ』、『花嫁はあまりにも美しい』、未ソフト化でなかなか観られる機会のなかった名優ジャン・ギャバンとの共演作『可愛い悪魔』、さらに日本初上映のドキュメンタリー『ブリジット・バルドー 誤解』など、BBのキャリアの初期から後期までを網羅。往年のファンから新たな観客への入門としても相応しいラインナップとなっている。
【上映作品】
※製作年順
※全作品サブスク未配信
★未ソフト化
①「恋するオペラ Futures vedettes」<劇場初公開>
監督:マルク・アレグレ
原作:ヴィッキー・バウム
脚本:ロジェ・ヴァディム、マルク・アレグレ
出演:ブリジット・バルドー、ジャン・マレー、イザベル・ピア
1955年/フランス/93分/モノクロ/スタンダード/字幕翻訳:橋本裕充
(C)1955 Regie du Film- Orsay Films / 2011 C. Roth-Meyer - Films du Jeudi
音楽学校に通う女学生たちの初恋を描く。ラストのシスターフッドの一幕が爽やかな余韻。監督はBBの映画界入りのきっかけを作ったマルク・アレグレ。ハンサムな教師役のジャン・マレーはジャン・コクトーの長年の恋人として知られる。
②「この神聖なお転婆娘 Cette sacree gamine」
監督:ミシェル・ボワロン
原案:ジャン・ペリーヌ
脚本:ロジェ・ヴァディム、ミシェル・ボワロン
出演:ブリジット・バルドー、ジャン・ブルトニエール
1956年/フランス/83分/カラー/スコープ/字幕翻訳:手束紀子
(C)1956 STUDIOCANAL
事件に巻き込まれたキャバレーオーナーに頼まれ、彼の愛娘ブリジットを自宅にかくまう歌手のジャン。彼女の正体がバレないようにあの手この手で大奮闘するが……。BBの才能を活かした多彩なダンスシーンとコメディエンヌっぷりは必見。
③「裸で御免なさい En effeuillant la marguerite」
監督:マルク・アレグレ
原案:ウィリアム・ベンジャミン
脚本:ロジェ・ヴァディム、マルク・アレグレ
出演:ブリジット・バルドー、ダニエル・ジェラン
1956年/フランス/102分/モノクロ/スタンダード/字幕翻訳:丸山垂穂
(C)1956 TF1 DROITS AUDIOVISUELS
自作の小説出版のためにパリに出てきた作家志望のアニエス。手違いで高価なバルザックの初版本を売りとばしてしまったため、やむなく賞金狙いでストリップ大会に出場することに。当時の夫であるロジェ・ヴァディムが脚本で参加。
④「花嫁はあまりにも美しい La mariee est trop belle」★<劇場初公開>
監督:ピエール・ガスパール=ユイ
原作:オデット・ジョワイユ
脚本:フィリップ・アゴスティニ、ジュリエット・サン=ジニエ
出演:ブリジット・バルドー、ルイ・ジュールダン、ミシュリーヌ・プレール
1956年/フランス/94分/モノクロ/スタンダード/字幕翻訳:橋本裕充
(C)1956 - PATHE FILMS - STUDIOCANAL
カトリーヌは田舎のカフェで編集長にスカウトされ、シュシュという芸名でモデルデビュー。瞬く間に売れっ子となるなかで、編集者のミシェルに恋心を抱く。ピエール・バルマンの手がけたウェディングドレスが可憐でエレガント。
⑤「殿方ご免遊ばせ 4Kレストア版 Une parisienne」
監督:ミシェル・ボワロン
脚本:アネット・ワドマン、ジャン・オーレル、ジャック・エマニュエル、ミシェル・ボワロン
出演:ブリジット・バルドー、シャルル・ボワイエ、アンリ・ヴィダル
1957年/フランス/89分/カラー/スタンダード/字幕翻訳:手束紀子
(C)1957- TF1 Droits Audiovisuels - Pretoria
大統領令嬢ブリジットは父の部下ミシェルに片思い。猛アタックの末、ついに結婚したものの、相変わらずプレイボーイの夫への対抗心に火がついて……。オープニング曲は映画音楽家ミシェル・ルグランの姉クリスチャンヌ・ルグランが歌う〈Paris B.B.〉。
⑥「可愛い悪魔 En cas de malheur」★
監督:クロード・オータン=ララ
原作:ジョルジュ・シムノン
脚本:ジャン・オーランシュ、ピエール・ボスト
出演:ブリジット・バルドー、ジャン・ギャバン
1958年/フランス/117分/モノクロ/スタンダード/字幕翻訳:橋本裕充
(C)1958 Production Raoul Levy / Les Films Marceau Concordia
恵まれない境遇から非行に走る若い女性と、彼女を自分のものにしようと危ない橋を渡る弁護士の姿を通してブルジョワの欺瞞や悲哀を映し出すクライムサスペンス。BBが名優ジャン・ギャバンとの共演で新境地を見せ、トリュフォーも賞賛した一作。
⑦「気分を出してもう一度 Voulez-vous danser avec moi?」
監督:ミシェル・ボワロン
原作:ケリー・ルーズ
脚本:ジェラール・ウーリー、ジャン=シャルル・タケラ、ルイ・C・トーマ、ミシェル・ボワロン、アネット・ワドマン
出演:ブリジット・バルドー、アンリ・ヴィダル、ドーン・アダムス、セルジュ・ゲンズブール
1959年/フランス・イタリア/92分/カラー/スタンダード/字幕翻訳:橋本裕充
(C) 1959 GAUMONT
夫にかかった殺人の嫌疑を晴らすべく、BB演じる妻ヴィルジニーは捜査を開始。ダンス教室に潜入捜査する一環で、さまざまなジャンルのダンスを披露するなど、BBの迷探偵ぶりが楽しい。『殿方?』に続きアンリ・ヴィダル&M・ボワロン監督とタッグ。
⑧「私生活 4Kレストア版 Vie privee」★
監督:ルイ・マル
脚本:ジャン=ポール・ラプノー、ルイ・マル、ジャン・フェリー
出演:ブリジット・バルドー、マルチェロ・マストロヤンニ
1962年/フランス・イタリア/104分/カラー/ヨーロピアンビスタ/字幕翻訳:松浦美奈
(C)1962 GAUMONT - STUDIO 37 - CCM
BB主演でBBの人生そのものを描こうとしたルイ・マル監督による傑作。常に群衆とパパラッチに追われるセレブであるがゆえの孤独という、SNS時代にも通じるテーマを映し出す。BBの表情を1分間以上捉え続けるラストショットが強烈。
⑨「ビバ!マリア Viva Maria!」
監督:ルイ・マル
脚本:ルイ・マル、ジャン=クロード・カリエール
出演:ブリジット・バルドー、ジャンヌ・モロー
1965年/フランス/116分/カラー/スコープ/字幕翻訳:長谷川圭子
提供:ファインフィルムズ
(C)1965 Nouvelles Editions de Films NEF (France) / Vides (Italie)
大女優ジャンヌ・モローと競演した、ふたりの“マリア”が活躍する陽気なドタバタ革命劇。アナーキストの父を持つ無敵のテロリストに扮したBBと、古典劇の素養もある歌手を演じたモローの艶っぽさが好対照。衣装はピエール・カルダン。
⑩「ラムの大通り Boulevard du Rhum」
監督:ロベール・アンリコ
原作:ジャック・ペシュラル
脚本:ピエール・ペルグリ、ロベール・アンリコ、トニ・レコーデル
出演:ブリジット・バルドー、リノ・ヴァンチュラ、ギイ・マルシャン
1971年/フランス/125分/カラー/ヨーロピアンビスタ/字幕翻訳:松浦美奈
(C) 1971 GAUMONT (FRANCE) / RIZZOLI FILMS (ITALIE)
アメリカ禁酒法時代のカリブ海を舞台に、酒密輸船の船長と映画スターの恋を描く。1920年代当時の“セックスシンボル”であった女優クララ・ボウをイメージした役で、スクリーン越しにリノ・ヴァンチュラを魅了するBBがチャーミング。
⑪「ブリジット・バルドー 誤解 (ドキュメンタリー) Bardot, la meprise」★<劇場初公開>
監督:ダヴィド・テブール
自伝朗読:ビュル・オジエ
出演:ブリジット・バルドー、セルジュ・ゲンズブール、ロジェ・ヴァディム、ジャン=ルイ・トランティニャン、ジャン=リュック・ゴダール
2013年/フランス/114分/カラー/フルHD/字幕翻訳:橋本裕充
(C)2013 Gaumont Television / Christian Davin Production / Arte France / Institut National de l'Audiovisuel
BBの熱狂的崇拝者であるダヴィド・テブール監督が多数のフッテージやプライベートショットを用いてビデオレターの形式で考察する、女優ブリジット・バルドーの肖像。同時代を生きたさまざまなフランスの映画・音楽界の重鎮の姿も登場する。
『ブリジット・バルドー レトロスペクティヴ BB生誕90年祭』
9月13日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
提供・配給:キングレコード
「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2024」にて先行上映
上映日:8月4日(日)
会場:新宿シネマカリテ
上映作品:『ブリジット・バルドー 誤解』『裸で御免なさい』
※12:25~の回『裸で御免なさい』上映後、小柳帝さん(ライター・編集者・翻訳者)によるトークイベント有り