1970〜80年代に海外SFファンだった世代には、必読といわれるシリーズタイトルがあった。『宇宙英雄ペリー・ローダン』や『銀河帝国興亡史』『レンズマン』などがその筆頭で、全部読破することはできなかったにしろ、少しずつでもかじった経験はあると思う。
そしてもちろん、『デューン 砂の惑星』も忘れてはいけないシリーズのひとつだった。石ノ森章太郎氏による表紙イラストも相まって、書店で見かけると思わず手にとってしまう吸引力を備えていたのだ。当時は、それから半世紀後に本品が映画化され、しかも続編まで登場することになるとは想像もしていなかった(最初の映画化や、そのあたりのいきさつは置いておくとして)。
「【初回仕様】 デューン 砂の惑星PART2 <4K ULTRA HD&ブルーレイセット> (2枚組/ブックレット&キャラクターカード全12種セット付)」 ¥8,580(税込、7月3日発売)
●2024年アメリカ作品●片面3層●本編約166分+映像特典 約64分●映像:2160p Ultra High Definition●シネマスコープサイズ/16×9LB●音声:ドルビーアトモス(英語)、ドルビーデジタル 5.1ch(英語)、ドルビーデジタル 5.1ch(日本語)●映像特典内容:チャコブサ語の特訓、フレメンの世界を創る、“砂の惑星”での撮影、ソプター 新たなマシーン、サンドワーム乗り、フェイド=ラウサを演じる、衣装で作る世界観、進化したデューンの音楽
●発売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント●販売元:NBC ユニバーサル・エンターテイメント
「【初回限定生産】デューン 砂の惑星PART2<4K ULTRA HD&ブルーレイセット> スチールブック仕様(2枚組/ブックレット&キャラクターカード全12種セット付)」¥9,680(税込、7月3日発売、写真左)
「デューン 砂の惑星PART2 ブルーレイ&DVDセット (2枚組)」¥5,280(税込、7月3日発売、写真右)
2021年に公開された『DUNE/デューン 砂の惑星』は、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督らしい静謐な映像トーンと、ここぞという時の音響効果の凄まじさでホームシアター愛好家に強烈なインパクトを残した。その続編である『デューン 砂の惑星PART2』のパッケージソフトが7月3日にリリースされるということで、さっそく取材用ディスクを借用、ホームシアターで体験してみた。
今回視聴したのは、「ブックレット&キャラクターカード全12種セット付」のUHDブルーレイ&ブルーレイ2枚組で、他に同じ内容の「スチールブック仕様」や、「ブルーレイ&DVDセット(2枚組)」もリリースされている。
本作はIMAXシアターではアスペクト比1.43:1で公開されたことも話題になったが、UHDブルーレイは2.39:1のシネスコ画角(HDRはドルビービジョン)で収録、音声はドルビーアトモスという仕様になっている。
まず55インチ有機ELテレビでUHDブルーレイを再生してみる。ドルビービジョン映像はハイコントラストで案外力強い印象だ。高密度の情報が詰まった画面の圧が強く、砂漠の陽射しが照りつけるようで、熱波からくる息苦しさまで感じさせる。
ハルコンネンの惑星でのモノクロシーンはさらにコントラストが際立ってきて、ハルコンネン男爵(ステラン・スカルスガルド)やフェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)の真っ白い肌の無機質感をしっかり描き出す。情報量の豊富さも驚くほどで、輪郭を強調していないのに映像全体にはキレがあるのは、それだけディテイル再現が優れている証拠だ。
ディスクは3層100Gバイト仕様で、映像のビットレートは50〜70Mbpsほど。本編が2時間半を超える大作ながら、ビットレートもゆとりを持って収録されていることが高画質につながっているのだろう
続いてプロジェクターによる110インチスクリーン再生に切り替える。こちらはHDR10対応モデルなので、UHDブルーレイ再生機からはHDR10信号として出力されることになる。
画面サイズが4倍になったこともあるが、映像全体の押し出し感、力強さは少し控えめになり、映画らしい雰囲気に変化する。プロジェクターで再生した方が画面全体のグレインが増してくるようで(デジタル撮影のはずだけど……)、それも映画っぽい映像として感じられた一因かもしれない。
本作は全体を通して赤みの強い、色温度が低めのシーンが多いが、そういった中でも人肌のグラデーションが滑らかで、衣装の質感もていねいに再現されている。スティルガー(ハビエル・バルデム)の日焼けした肌や、後半のレディ・ジェシカ(レベッカ・ファーガソン)の入れ墨のような紋様もディテイルまで自然だ。
ドルビーアトモス音声は、移動感の演出は控えめながら、前作同様にここぞという時にはぐっと盛り上げる(冒頭の低音にはみんな驚くはず)。その意味ではチャプター6の巨大サンドワームの登場は期待を裏切らない迫力だし、砂粒の痛さを音で実感できる。これぞイマーシブオーディオの醍醐味といってもいいだろう。
音楽は耳慣れない音色も多く含まれているが、これについては特典映像でシリーズの音楽を手掛けているハンス・ジマーが、楽器を特注して(塩ビのパイプで管楽器を作ったとか)今までにない音を模索したと解説している。その不思議さもしっかり感じ取れるクォリティをUHDブルーレイは備えている。
近年ハリウッド作品はSFをテーマにしたものも多いが、本シリーズは原作の世界観を描き出しているという意味で、稀に見る完成度の高さだと思う。SFファンを自認している方は、噂されている『PART3』を含め、ぜひUHDブルーレイでコレクションしていただきたい。(取材・文:泉 哲也)
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