多くの笑顔を残してわずか12歳で早世した森上翔華さんの生き様を映画化した『神さま待って! お花が咲くから』が、2月2日より公開を迎える。笑顔が周囲の人にもたらすファンタジーな要素も盛り込み、プロデューサーを務めるとめぞう氏らしいコメディチックな雰囲気も併せ持ったヒューマンな1作。ここでは、森上翔華さんの主治医・脇坂和美を演じた北原里英にインタビューした。
――よろしくお願いします。1月26日の広島での先行公開を経て、いよいよ全国での公開を迎えます。今の心境をお聞かせください。
よろしくお願いします。撮影したのは、まだコロナ禍の中であった2022年の夏と秋でしたから、大変なこともありましたけど、こうして上映を迎えられることが感無量です。個人的には、監督から褒めてもらえたシーンがあって、すごく嬉しい言葉をかけていただけたことが、思い出に強く残っています。
――台本を読んだ時の感想は?
すごく温かくて、泣けちゃって。はじめは、実話を元にした作品ですから、実際に病気で亡くなっている子がいるということもあって、結構難しそうだなと思っていたんです。けど、同情を誘うような展開にはなっていないし、それこそ押し付けがましさはないし、自分自身でも、明日から元気に生きていこうって、自分を奮い立たせるような映画になっていたので、そこがすごくいいなと思いました。
――実話ベースの作品への出演は初めて?
そうなんです。森上翔華さんのご両親もご覧になると思うと、がっかりさせたくないという思いがとても強かったです。その分、気合も緊張も強く感じていました。ご両親を含めて、翔華さんをご存じのみなさんがどういう感想を持たれるのか、緊張します。
――演じられた脇坂和美(ワッキー)の印象、感想、役作りについて教えてください。
自分自身は、すごく明るい人間だと思っているので、自分とは違う役、クールな役とかを、ずっとやってみたいと思っていました。それが叶って今回、シビアでクールなワッキーを演じることができましたけど、彼女の人物像は自分に近いというか、心情はとても理解できましたので、そこに(芝居の)難しさは感じなかったです。ただ一方で、観て下さった方に、ワッキーの内面をきちんと届けられる芝居ができるのか、分かる芝居ができるのか、という点で、自分の技量が追い付いているのかという心配はありました。
――そこはこれからお聞きしますが、まずは、北原さんがこういう役を演じられているという新鮮な驚きがありました。
確かに(笑)。どちらかと言えば、お医者さまよりも、学校の先生の方が合っているかなって、自分で台本を読んで思いました。
――実際には、ただクールなだけでなく、心の中には何か人に言えない重荷を抱えている、押し殺しているものがある、という雰囲気は、その表情から感じました。
えー本当ですか、嬉しいです(喜)。そこは確かに、台本を読んでいる時から、今仰っていただいたように、(観て下さる方に)受け取ってもらえたらいいなと思っていたところなので、すごく嬉しいです。
――特に、終盤に見せる脇坂の表情は素晴らしかったです。
実はそのシーンが、監督に褒めていただいたところなんです。“心が動いた”と仰っていただきました。嬉しかったです。
――そのシーンの撮影は覚えていますか?
ちょうど前日まで舞台(千秋楽)をやっていたこともあって、その時期は感情を出すことのリミッターが外れていましたから、それがいい方向に働いて、いい雰囲気で感情が出せたのかなって思います。
普段はあまり感情的に生きていないので、お芝居であっても、実は感情を出すのは、“得意”な方ではないんです。けど、舞台のタイミングと重なっていたことで、いい感じで出せたという感覚はありました。
――泣き叫ぶのではなく、耐えて耐えて耐えて絞り出すという雰囲気が素晴らしかったです。
まあでも、その耐えて耐えて耐えてになるまで、感情(苦悩)を高めていかないといけないわけですから、その時期の感情のリミッターレスの具合は、すごく役立ちました。
あとは、共演の大関れいか(看護師の畑下園恵 役/ニックネーム:ハッシー)さんにも、すごく助けてもらいました。一緒にお芝居をしていて、自分(ワッキー)の気持ちがダイレクトに伝わった顔をしてくれていたので、とにかく有り難かったです。
――ところで脇坂は、本作の主人公である森上翔華(新倉聖菜)の主治医でもあります。新倉さんとの共演はいかがでしたか?
本当に翔華さんにしか見えなかったです。すごく明るくて、ぴったりだなって感じました。
――撮影はいかがでしたか?
私の出演パートは、本当に短期間の撮影でしたので、なかなか余裕が持てなくて……。実は子供が大好きなので、現場に小さい子供がいるだけで嬉しくなっちゃう人間なんですけど、それも感じられないぐらい緊張していました。しかも、役柄的に(翔華さんと)親しくするのも違うなと思っていましたから、本当はたくさんお話したかったのですが、(新倉さんとは)あまりコミュニケーションは取らないようにしていました。
――話は変わりますが、翔華さんの残した絵本のエピソードも、本編では描かれています。
撮影の前にいただきましたけど、私は感情移入が激しいので、読むことで芝居に影響が出てしまうかもしれない(どのシーンでも泣いてしまうかもしれない)と思って、撮影が終わるまで読むことができませんでした。
――撮影後は?
心が軽くなっていたのか、すっと読めました。大谷選手のグローブじゃないですけど、全国の学校に寄付して、図書館でいつでも読めるように、一緒に映画も観られるようになる。そういう展開になったらいいなと思います。
――ところで、本作には“ファンタジー”というキーワードがあります。北原さんは、どんなファンタジーを望みますか?
そうですね、大きな話になりますけど、世界が平和になったらいいなって思います。このところ物騒なことが続いているので、平和になってほしいと強く願います。
――今月(2月)は、出演作が2本公開されます。
ありがとうございます。(作品の)毛色は違うというか、両極端な気もしますけど、たくさんの方に自分の出演作を観てもらえる機会があるのは、すごく嬉しいです。
――2024年が始まりました。今年の目標があればお願いします。
引き続きの目標は、ドラマ「世にも奇妙な物語」に出演することです。それから、昨年に続いて小説を書きたいです。2作分のプロットはもう、頭の中にできているので、あとは文字に起こすだけなんですけど、なかなか時間がとれなくて……。今年はそれを形にしたいと思っています。
――では最後に、読者へのメッセージをお願いします。
いよいよ東京でも公開されますので、たくさんの方に映画館に足を運んで、観ていただきたいです。それが一番ですけれども、自分でも本当にいい映画になったと思うので、公開の後、将来的には全国の小中学校で上映する機会を設けて、親子で観てほしいです。私も学校で観た映画は強く記憶に残っていますし、そういう形で、末永く観ていたける作品になると嬉しいですね。とにかく、翔華さんと同年代の子供たちに観てもらって、世の中には病気で学校に行けない子がいる、幼くして亡くなってしまう子がいる、ということを知る、実感する機会になったらいいなって思っています。
映画『神さま待って! お花が咲くから』
2月2日(金)より池袋シネマ・ロサ ほか全国順次公開
<キャスト>
新倉聖菜
北原里英 / 布川敏和 渡辺梓 秋本帆華(TEAM SHACHI) 坂本遥奈(TEAM SHACHI) 大関れいか 夢空 城之内正明 とめぞう 小泉光咲(原因は自分にある。)上村佳里奈 / 曽我廼家寛太郎 高畑淳子 竹下景子
<スタッフ>
監督:松村克弥 プロデューサー:とめぞう、渡辺健一、城之内景子、亀和夫 脚本:桜風涼(渡辺健一) 音楽:長谷川哲史 主題歌:手嶌葵 「はなまる」 挿入歌:本田美奈子.「1986年のマリリン」 / 麻友 「今日が昨日より、素敵な今日で」 配給:フューレック 配給協力:LUDIQUE 企画・製作:一般社団法人 海と空キネマ 製作協力:株式会社フューレック、翔華ちゃんの映画を成功させる会
2023年|日本|96分|カラー
(C)海と空キネマ
北原里英SNS
https://www.ohtapro.co.jp/talent/kitahararie.html
ヘアメイク:熊谷美奈子
スタイリスト:山田梨乃