12月9日に東京・青山にオープンした「KEF Music Gallery Tokyo」。ブランドアイコンでもあるUni-Qドライバーをモチーフにしたデザインを壁面いっぱいにあしらったビルには、ギャラリースペースや落ち着いた試聴ルームなど様々な空間が準備され、単なる製品ショウルームを超えた体験の場として育てていきたいという同社の思いが溢れている。
実際にオープン後も来場者がコンスタントに訪れているそうで、しかも青山という土地柄か、いわゆるオーディオファンではなくこれまでハイエンドオーディオにあまり触れてきていない層がふらりと訪れてくれることも多いそうだ。
女性のお客さんも増えているようで、実際に試聴室の予約をしてくれた方の中にも女性が多く、中にはヘッドホンとサブウーファーの組み合わせを聴きたいという方もいらっしゃったそうだ。
その試聴室としては、エントランスを入った場所にある「The Gallery」、その奥にある「The Ultimate Experience Room」、中2Fの「The Wireless High-Fidelity Lounge」、3Fの「The Extreme Theatre」が準備され、後者3ヵ所ではソファに座ってじっくり音を確認できる。今回その3部屋のそれぞれにセットされたオーディオビジュアルシステムの詳細がわかったので、お知らせしたい。
The Ultimate Listening Room
●レコードプレーヤー:トランスローター ZET1-M2
●SACD/CDプレーヤー:マッキントッシュ MCD550
●ネットワークトランスポート:ルーミン X1
●ミュージックサーバー:ルーミン L2
●プリアンプ:ブルメスター 088
●パワーアンプ:ソウリューション 511 mono×2
●スピーカーシステム:KEF MUON
エントランスを入ってすぐのThe Galleryの奥にある階段を降りた先にあるのが、The Ultimate Listening Roomだ。正面にはKEFのスピーカートップモデルである「MUON」が設置され、GBM,GBS,OBE,JP Chairman& Chief Exclusiveのビクター・ローさんが選んだハイエンド機器で、レコードやCD、ハイレゾ音源からストリーミングまで楽しめる。
ちなみにここを含めた3部屋すべてでハイレゾ再生用にルーミンの機材が使われているが、これは同社の香港オフィスとルーミンのオフィスがすぐ近くにあり、これまでも様々な展示等で協業してきたからとのことだ。The Ultimate Listening Roomではルーミンのフラッグシップモデル「X1」が、他の部屋でも「P1」「T3」の音が確認できるので、ハイレゾファンも要注目だろう。
部屋の広さは20畳ほどで、周囲の壁には防音・調音処理が施され、ドアを閉めると外来音もほぼ遮断されて、落ち着いて音楽に浸ることができる。天井高は2.5m強と一般的なマンションなどと違いはないが、それでも音が押さえつけられるような印象はなく、ヴォーカルなどの定位も明瞭で、眼前で演奏されているようなイマジネーションが描き出される。
上記のようにLPやSACD/CDなどの再生もできるので、お気に入りのソフトを持参すれば、最高級のオーディオ体験ができることだろう。
The Wireless High-Fidelity Lounge
<TVシステム>
●ディスプレイ:LG製65インチ液晶テレビ
●ワイヤレススピーカー:KEF LS60 Wireless
●サブウーファー:KEF KC62
<本棚設置>
●ワイヤレススピーカー:KEF LS50 Wireless II
<天井埋め込みシステム>
●ネットワークプレーヤー:ルーミン P1
●プリメインアンプ:マッキントッシュ MA5200
●インウォールスピーカー:KEF Ci160ER、Ci160QR、Ci160RR-THX
中2階のThe Wireless High-Fidelity Loungeはその名の通り最新ワイヤレススピーカーの実力を実感できる空間だ。まず65インチ液晶テレビと「LS60 Wireless」の組み合わせで、スマートなテレビシアターシステムが設置されている。
ARC機能を活用し、HDMIケーブル1本でつなぐだけで放送や動画配信、外部レコーダーなどをKEFサウンドで楽しめるようになっている。また小型サブウーファー「KC62」もつながれており、大迫力で映画やライブを楽しめるようになっていた。
ワイヤレススピーカーとしては背面の棚に「LS50 Wireless II」もセットされており、こちらではストリーミングやBluetoothを使った音楽再生も可能となっている。
もうひとつThe WirelessHigh-Fidelity Loungeで特徴的なのが、天井埋込みスピーカーの聴き比べもできることだろう。天井には16cmユニットを搭載した「Ci160ER」「Ci160QR」「Ci160RR-THX」という3モデルが設置されており、これらをスピーカースイッチで切り替えて比較試聴も行える。ソースにはルーミン「P1」を使い、マッキントッシュのプリメインアンプ「MA5200」でドライブするという豪華な内容だ。
天井埋込みスピーカーはリビングのBGM用やサラウンド再生用としても人気を集めているが、音を聴くチャンスはひじょうに少ない。内覧会で3モデルのサウンドを確認させてもらったが、天井設置の2ch再生でも音場感や低音再現などにそれぞれ違いが確認できた。リビングなどへのインストールをお考えの方はぜひその違いを体験していただきたい。
The Extreme Theater
<2chシステム>
●ネットワークプレーヤー:ルーミン T3
●SACD/CDプレーヤー:アキュフェーズ DP-750
●プリアンプ:アキュフェーズ C-3850
●パワーアンプ:アキュフェーズ A-250×2
●スピーカーシステム:KEF Blade One Meta
<ホームシアターシステム>
●プロジェクター:ソニー VPL-XW7000
●UHDブルーレイレコーダー:パナソニック DMR-ZR1
●AVプリアンプ:ヤマハ CX-A5100
●パワーアンプ:ヘーゲル C55×2、C54
●スピーカーシステム:KEF Ci-Referenceシリーズ、Ci200RR-THX
3FのThe Extreme Theaterでは、ふたつのシステムを体験できる。まず2chシステムは、スピーカーの「Blade One Meta」をアキュフェーズのセパレートアンプで駆動するというもの。ソースはハイレゾ音源とSACD/CDメディアに対応している。事前に相談すればBlade One Meta以外のスピーカーを聴かせてもらうこともできるようなので、意中のモデルがある方は予約時に確認してみてはいかがだろう。
もうひとつがスクリーンを使ったホームシアターシステムだ。こちらは壁・天井埋込みスピーカーの「Ci-Reference」と「Ci200RR-THX」を使った7.2.4システムが準備されており、ドルビーアトモスなどのイマーシブサラウンドが楽しめる。再生機の「DMR-ZR1」とプロジェクター「VPL-XW7000」とも4K/HDR対応モデルなので、絵・音ともに高品質なシアターを楽しめるのは間違いない。
アーキテクツの共同代表であるマーク・ダイサムさんが
「KEF Music Gallery Tokyo」の注目ポイントを解説
私はKEFのヘビーユーザーで、15年ほど前から同社のスピーカーを使っていました。自宅には「LS50」もあるし、「LSX」も2セット使っています。
今回のデザインについては、なによりまずこの建物のプロポーションが面白かった。「LSX」とだいたい同じ形状だったのです。だから、最初のスケッチで、壁面にUni-Qをあしらったスケッチを描いてビクター・ローCEOに見せました。
さすがにこのデザインはToo Muchだと言われると思っていたのに、なんと、ビクターさんから “やりましょう” と言われたんです。インパクトのある、アイコニックな建物を作りましょうということで意見が一致しました。
この建物はもともと天井が高いし、スペースもあったので、できるだけ明るい感じ、店内に入りやすい雰囲気にしたかったのです。1Fにはギャラリースペースがあり、ここで新しいアクティブスピーカーなどを紹介します。最初はヘッドホンで聴いてもらい、そこからだんだんオーディオにはまっていってもらいます(笑)。
2Fにはイベントスペースがありますが、ここはすごく大事な場所ですね。ここでは大型スピーカーなどの製品を紹介したり、色々なブランドやアーティストとのコラボレーションイベントなどが開催できます。今、音楽は様々な分野とつながって、幅広く広がっています。それだけに、このようなコラボレーションが実現できるスペースは必要だと思います。
その他に3つの試聴ペースもあります。地下1階はスピーカーの「MUON」が置かれた素晴らしい空間です。壁の色もちょっとダークで、落ち着いた雰囲気を作っています。中2階は、液晶テレビと「LS60 Wireless」で快適なリビングシアターを楽しんでいただけます。
もうひとつ、この建物の壁に設置された本棚はフレキシビリティがあって、全部動かせます。他のスピーカーを展示する場合は、自由な形に並べ替えることもできるんです。また壁の材料はペットボトルをリサイクルした吸音材です。皆さんのホームシアターでも活用できるアイデアですので、そのあたりもご覧になって下さい。