2023年12月1日から、NHKのBSチャンネルが再編成された。2チャンネルあった2KのBSチャンネルはNHK BSに統合。それに伴い、BS4KチャンネルはNHK BSP4Kとチャンネル名も変更になった。この再編成によって、映画の4K放送はどうなるのか?NHKに出向き、これからのNHK BSチャンネルについてお話をうかがってきた。

 インタビューに応じて下さったのは、メディア戦略本部/エグゼクティブ・リードの斉藤 潤さん。そもそも今回のBSチャンネルの再編成はどういう目的で行われたのであろうか。

画像: NHKのBSチャンネル再編成で、4Kの映画放送はどうなる? 今回の再編成の目的と、これからのBSP4Kのお薦め番組を担当者にインタビュー

斉藤 これまで続いてきたBSチャンネルの放送形態の効率化を図る、というのが大きな目的です。主にスポーツ中継やドキュメンタリー、ニュースなどをオンエアしてきたBS1と、ドラマや映画などをオンエアしてきたBSプレミアム。この12月から2つのチャンネルをひとつに統合、総合的なエンタテインメントチャンネルにしよう、というイメージです。

 2Kのハイビジョン放送だけでなく、BS4KチャンネルもBSP4Kチャンネルとして生まれ変わった。4K放送もいよいよ24時間編成になっている。4K放送の開始から、視聴者の4K視聴環境もますます整ってきていることを実感しているそうだが、課題もあるという。

斉藤 もっと4Kチャンネルを“普段使い”にしていただけるようにアピールしていきたいと考えています。たとえば花火中継の番組など、ハイビジョンチャンネルの放送に「4K放送でもご覧になれます」と告知を入れると、普段の数倍の方が4Kチャンネルを見て下さるんです。……が、まだまだそのまま日常的に4K放送を、地上放送やハイビジョン放送と同じように視聴いただけてはいないようですので、そこをどうすればいいのか。目下の課題だと捉えています。

 また特に2025年度はNHK放送開始100周年を迎えます。そのタイミングに向けて、これまでNHKで保存・保有している映像資産をどういうかたちで視聴者の方にご覧いただけるのか、それがこれから取り組む大きなテーマになります。

画像: 日本放送協会 メディア戦略本部/エグゼクティブ・リードの斉藤 潤さん

日本放送協会 メディア戦略本部/エグゼクティブ・リードの斉藤 潤さん

 テレビなどの4K放送を試聴出来る環境は整い、増えてもいるが、視聴者サイドの意識も含め、乗り越えていくべきハードルはまだあるというところだろう。

 さて、映画ファンとして気になるのは新生NHK BSP4Kではどんな映画を観ることが出来るようになるのか。映画の放送について答えて下さったのは、以前もStereo Sound ONLINEの記事に登場していただいた、編成局/展開戦略推進部 チーフプロデューサーの坂本朋彦さんだ。

坂本 4Kで映画を放送する、ということについては、BS4Kで映画の放送が始まってからこれまで、映画会社が(4Kマスターを)制作する作品の幅もかなり広がってきているな、と感じています。特に洋画ですね。それに伴い、放送用にNHKが購入する作品の選択肢が増えているのを実感しています。

 新しいBSP4Kではどんな作品を放送していくのか。従来までの考え方に変わりはなく、4Kならではのクォリティを分かり易く味わっていただける作品や、映画史的に重要な作品で4Kに対応した作品があれば、放送していきたいと考えています。

画像: 日本放送協会 編成局/展開戦略推進部 チーフプロデューサーの坂本朋彦さん

日本放送協会 編成局/展開戦略推進部 チーフプロデューサーの坂本朋彦さん

 来年4月からスタートする2024年度のラインナップについては、目下編成中という。映画については、まだまだハイビジョンチャンネルでのオンエアの方が視聴される機会も多く、映画放送の軸足はNHK BSになる。ただし、そのなかでも選りすぐりの作品についてはBSP4Kでも放送していきたい、というのが坂本さんのイメージするプランのようだ。さて、これから12月いっぱいにかけて坂本さんがお薦めする映画作品は?

坂本 『戦場のメリークリスマス 4K修復版』です。今年は坂本龍一さんがお亡くなりになったこともあり、追悼の意味でも是非オンエアしたい、出来ることならばクリスマスの時期に、と考えていた作品です。NHKでは初めて4K放送する4K修復版ですし、BSP4Kでは5.1chサラウンド放送です。映像だけでなく音声での没入感も素晴らしいので、是非4Kのクォリティでご覧いただければ、と思います。

 地上放送で見ることの出来る洋画劇場がほとんどなくなってしまった今、BSチャンネルで毎日、映画を放送していることは改めて考えると素晴らしい取り組みだ。NHKでは現在も小津安二郎監督の生誕120年・没後60年記念の一環として、代表作品の放送が続いている。このようなスタンスで、たとえば映画館で上映される新作映画とリンクさせた特集を組むなど、(NHKという放送局の性格上、難しい部分もあるかもしれないが)映画ファン、とりわけ洋画ファンの底上げといった意味でも、もっと果敢なプログラム編成があってもいいと思う。

画像: インタビューを終えて。BS放送の今後について具体的なお話を聞かせていただきました

インタビューを終えて。BS放送の今後について具体的なお話を聞かせていただきました

 映画に限らず、番組を編成するうえで大事なものは? と最後にうかがうと「社会の空気や気分を読むことです」。斉藤さん、坂本さん両名から答が返ってきた。番組の編成作業も必ずしも先に先に、前倒しで行わけではなく(編成作業はたいへんにはなるが)、BS放送の場合は特にそのことを意識するという。テレビ放送というメディアならではの立ち位置で “風を読む” わけだ。このお話がとても興味深かった。

 年末年始を迎えるにあたって、これから自宅で過ごす時間も増える。年が明けてお正月、年始の放送になる映画タイトルについても間もなく発表になるはずだ。新生BSP4K、これからもあっと驚くような嬉しい映画作品の4K放送を心待ちにしていよう。

年末年始にチェックしたいNHKの映画プログラム

【プレミアムシネマ4K】(NHK BSP4K)
12月27日(水)9:30〜 「サイコ」
12月28日(木)9:30〜 「裏窓」
12月29日(金)22:30~ 「戦場のメリークリスマス 4K修復版」
12月30日(土)13:00〜 「東京物語 4Kデジタル修復版」
12月31日(日)13:00〜 「ローマの休日4K版」
2024年1月3日(水)13:55〜 「ニュー・シネマ・パラダイス【インターナショナル版】」

【プレミアムシネマ】(NHK BS)
12月25日(月)13:00〜 「戦場のメリークリスマス」
12月26日(火)13:00〜 「秋刀魚の味 デジタル修復版」
12月27日(水)13:00〜 「湯を沸かすほどの熱い愛」
12月28日(木)13:00〜 「ジュラシック・ワールド」
12月29日(金)13:00〜 「ジュラシック・ワールド/炎の王国」
12月31日(土)17:00〜 「ジャイアンツ」
12月31日(日)20:22〜 「荒野の決闘」
12月31日(日)22:00〜 「不死身の保安官」
12月31日(日)23:46〜 「ブルース・ブラザース」
2024年1月2日(火)8:00〜 「十戒」

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