永江二朗監督が贈る、都市伝説ホラーの第3弾『リゾートバイト』が、いよいよ10月20日より公開中だ。タイトルの通り、リゾート地にバイトで訪れた幼馴染3人が体験する恐怖を、リアルに描いた1作。ここでは、主役・内田桜を演じた伊原六花にインタビューを実施。ホラーは苦手という彼女に、出演の感想や役作りのポイントを聞いた。
――よろしくお願いします。今回は、苦手のホラー作へ出演されていますが、まずは、出演が決まった時のことを教えてください。
来たか! という感じでした(笑)。マネージャーさんには、前々からホラーは苦手ですというのは伝えてあったので、とうとう“ホラー映画が来たのか!”って。
――それは乗り越えられるものですか?
苦手とは言いつつも、ホラー映画とか小説は割と好きで、観たり読んだりしていたので、ホラー映画はどうやって撮っているんだろうという興味があり、すぐに(出演を)快諾させていただきました。ただ、体験型というか、リアルな心霊映像とか、お化け屋敷なんかは未だに苦手です。
――苦手だったホラー作への出演を経験して今、手応えはありますか?
最初に台本を読んだ時に、展開が激しく変わっていくところに魅力を感じて、とてもやりがいのある作品だと思えたので、撮影が楽しみでした。加えて、実際に撮っている時に監督のホラー愛がすごいんです! こういう撮り方がホラー的に怖くなるんだって、その判断力がすごく早いんです! だからホラーカットは特に監督に全幅の信頼をおいて、監督の指示に従ってやらせていただきました。撮っている時に監督が、これはいいぞ! みたいに言ってくれた時は嬉しくて、パワーをもらいながら楽しく撮影できました。ホラー作を観るのはちょっと怖いけど、出るのはもう大丈夫です!
――本作では、ちょっと引っ込み思案の内田桜を演じていますが、台本を読んだ時の感想と役作りについて教えてください。
作品に関してはまず、すごくお話が面白いなと感じました。ただ、このお話をどこまでエンターテイメントっぽくするのか、コメディっぽくするのか、その塩梅が分からなかったので、事前に監督とお話しさせていただきました。
そうしたら、芝居に関してはコメディチックで面白くしようとか、大げさにやって笑わせようというのではなくて、ド真面目にやってもらった方が怖いので、“真面目に演じてください”と仰っていただいたので、シンプルに、真面目に演じようと思って、本を読み込んでいきました。
桜は、受け身っぽく見えるけど、きちんと考えている子です。イメージと内面のギャップもありますけど、それは私ともそれほど遠くないだろうと感じたので、無理せず桜に合わせていけました。気弱ではありますが、幼馴染みのことを思って、怖いところにも自ら飛び込んでいく。そういった勇気を持つ子なので、ただただ2人の後についていくだけじゃない、というところも、役作りに活かせたと思います。
あと、後半に行くにつれて――観ないと分からないことですけど――いろいろな芝居をしているので、そこも見てほしいなって思います。ネタバレになるので詳しく話せませんが、そこは自分にとってチャレンジングな部分でしたし、上手く表現できたんじゃないかと思っています。
――内田桜の役作りについてもう少しお聞きします。引っ込み思案なこともあって、結構全編通して、常にビクビクしているように見えました。
肝試しをしようとなった時も、桜はすごく嫌がるので、怖いことは苦手という描写は結構多かったです。それもあって、(肝試しは)代わりに聡(藤原大祐)が行ってくれますが、そのせいでいろいろなことが起きてくるので、自分のせいだという後悔を持って、自分で決心して苦手なところに行くことになります。その後で、実は変わりたかったというセリフがありますが、それまでは2人の後ろを歩くとか、ちょっと行動が遅いという感じを、表現するようにしていました。
変わりたいと言ってもすぐに変われるわけではないので、その後もその役(性格)は引きずったままですが、そういう雰囲気が伝わればいいな、どちらかと言えば受け身な女の子でできたらいいなと思っていました。
――でも、ホラーって結構賑やかな雰囲気の現場が多いですよね。
撮影自体(現場)は和やかな雰囲気で、キャストの皆さんともすぐに仲良くなれました。藤原さんはムードメーカーで、フレンドリーな方だったので、すぐに和気あいあいとした関係性になれましたし、秋田汐梨さんは隣の部屋だったので、お互いの部屋を行ったり来たりして、一緒にご飯を食べたり、空き時間には一緒に散歩したりしていたので、そうしたことが、3人の幼馴染感というか空気感の表現につながったんじゃないかと思います。
出来上がった映像を観ても、このわちゃわちゃした感じだったり、楽しみながらリゾートでバイトをしている雰囲気はすごく出せたので、そこも見どころの一つになっていると思います。そういう何気ない日常も、撮影していて楽しかったです。
――ところで、永江監督は“間”をすごく大事にされますよね。
そうなんです。その感覚みたいなものは、撮影の後半になって、分かるようになってきました。例えば振り向く時に、あと0コンマ何秒速くとか、遅くと指示されるんです。監督ご自身の中に、怖さを感じる間(時間)があって、それは演じる側の感覚と、映像になったものを観る人の感覚の違いだと思いますけど、見え方としてはこうした方(間)がいいという指示が絶妙で、その場でチェック映像を見ると、より怖く感じるんです。
はじめは、(監督の指示する間は)感情――すぐに反応してしまう――とは別の話なので、(間を)合わせるのは難しかったのですが、その通りにやってみると、きちんと怖く見えるんです。だからもう、監督の指示を信頼していました。ただ、感覚的な部分なので、一回でOKになる時もあるし、タイミングを探りながら何回かやって、ようやくOKが出る時もありました。
――ところで、桜には変わりたいという意識があるにしても、よくもまあ真夜中に、アレをしましたね。
そうですよね、それは台本を読んだ時に感じました。怖いのになんで行っちゃうのとか、そこ絶対怖い人いるやん、やめときなみたいな(笑)。本当に臆病だとできないと思うんですけど、そうしたところからも、桜にはきちんと強い意志があるんだなって感じました。臆病だけど、大胆でもある。それもある意味、桜の魅力なのかなと思います。
――ネタバレになるので、あまり詳しくは書けませんが、最後には……。
本当に! ほんとちょっとの違和感を表現できるように頑張りました。今までも、初めて(やったことのない)の役を演じることはありましたが、一つの作品の中で、これだけ表情の変わる役というはあまり経験がなかったので、これは頑張るしかないと思って、台本をとにかく読み込みました。自分でも、役の想像がつき始めてからは面白かったです。
――前回、『明治東亰恋伽』でお話を伺った際は、役作りはたいへんと仰っていました。この4年で成長の実感はありますか?
私の感覚からすると、気づけるものが多い人って、周りにたくさんいるので、(自分は)まだまだと思ってしまうんですけど、デビュー当時に比べれば、セリフから読み取れる情報も多くなったし、いろいろな人の考え方に触れる経験を積んできたことで、その中から自分に合ったものを選択できるようになってきたことは、その役に近づくための手法が増えたんじゃないかなと思っています。
――ご自身に遠い役への苦手意識は?
一昨年ぐらいに出演させていただいた舞台で演じた役が初めてのもので、常に陰の憎しみがあって、経験のないような愛――ジメっとした陰湿な感じのもの――が詰め込まれている女の子だったので、そうした役を演じられることがすごく嬉しかったし、楽しかったので、自分に遠いところから(役を)作り上げていくのも、自分ではない人になるみたいで、すごく面白かったです。
――ちなみに、それはどこから持ってくるのですか?
まずは台本を読み込んで、監督や演出家さんの話を聞いて、っていうところから始めます。あとは自分の中で、これはこの人っぽいかなとか、あの作品のあの役っぽいなというものを探していきます。漫画が好きなので、似ているキャラを探して、そのキャラの仕草とか、考え方などを取り入れることもあります。
――すると、もっとバラエティに富んだ役も見てみたいですね。
この映画は10月に公開されますけど、同じ10月スタートのNHKの連続テレビ小説『ブギウギ』にも出演させていただいていて、その役柄が結構新しいもので、演じていてすごく楽しかったので、見比べてもらうのも楽しみの一つかと思います。
あとは、極めている人が好きなので、なにかの選手とか、アーティストとかも演じてみたいです。そういう役を通して、その道の極意みたいなものも身につけたいです。
映画『リゾートバイト』
10月20日(金)グランドシネマサンシャイン池袋、イオンシネマほか全国公開
<キャスト>
伊原六花
藤原大祐 秋田汐梨 / 松浦祐也 坪内守 / 佐伯日菜子 梶原善
<スタッフ>
監督:永江二朗 脚本:宮本武史 企画/制作:キャンター 配給:イオンエンターテイメント 製作:映画「リゾートバイト」製作委員会
(C)2023「リゾートバイト」製作委員会
ヘアメイク:面下伸一(FACCIA)
スタイリスト:米原佳奈
衣装協力:
・フーディードレス(¥66,000)
・スニーカー(¥46,200)
(共にMaison MIHARA YASUHIRO/Maison MIHARA YASUHIRO TOKYO)
・その他 スタイリスト私物
問い合わせ先
Maison MIHARA YASUHIRO TOKYO
東京都渋谷区神宮前4-12-10表参道ヒルズB1F
03-5770-3291