珠玉の娯楽作品を一年間にわたって連続上映する特集企画『午前十時の映画祭』の最新『午前十時の映画祭13 デジタルで蘇る永遠の名作』が現在、全国67の劇場にて上映中だ。

 今年のラインナップでは、『ジュラシック・パーク』3部作や、『アラビアのロレンス/完全版』など、年齢を問わず人気の高い作品が挙げられているのは大いに注目だが、昨年の『空の大怪獣ラドン 4Kデジタルリマスター版』で盛り上がった特撮ファンに向けてはなんと、8月4日より『地球防衛軍』(1957)の上映がアナウンスされている。

画像: 4Kデジタル修復された映像

4Kデジタル修復された映像

 同作は、東宝特撮初のカラー、スコープサイズによるSFスペクタクル大作であり、日本初の巨大ロボット「モゲラ」が出てくることでも話題を集めたが、そのほかにも近未来を予感させる光線兵器といった“超兵器”の活躍も、特撮ファンの心をがっしりと掴んでいる。

 その『地球防衛軍』は、ラドンと同じく東現(東京現像所)の手によって4Kデジタル修復が行なわれ、66年前の作品とは思えない、超絶美麗な映像に生まれ変わっている。ここでは、そのインプレッションについて簡潔に紹介したい。

 『地球防衛軍』では、ラドンのように3色分解したフィルムが残されていたわけではなかったが、幸運なことに、当時の上映で使っていたタイミングデータ(色彩補正情報)が残されていたこともあり、今回の修復では、そのデータ(数値)を元にグレーディングを行なったのだという。やはり青系は褪色が起きやすく、比較画像のサンプルとしてもらったオープニングのタイトルバックのシーンを見て分かるように、ネガをスキャンしたママの映像では題字が黄色くなってしまっているが、修復後ではそれが白く映えていて、封切時にはこんなに色彩感に溢れた映像であったのかという感慨が湧き起こってくるほど。

画像: 恒例のビフォー、アフター比較画像。封切時は右の映像だったのかと、想像もたくましくなる

恒例のビフォー、アフター比較画像。封切時は右の映像だったのかと、想像もたくましくなる

 作品冒頭は暗いシーンが多いためか、修復による恩恵は少な目だが、日中の屋外のシーン、ファン垂涎のモゲラ登場シーン、後半の超兵器による攻撃、敵要塞内部の様子などなど、色彩と解像感にあふれた映像が、見事に再現(修復)されていた。平成ガメラが捧げていたオマージュの元ネタがここにあったのか! という感動も味わえた。

画像1: ファン垂涎の『地球防衛軍』が、超絶美麗な映像となって「午前十時の映画祭13」にて、8月4日より上映開始

 そして本作ではもう一つのトピックがある。それが「パースペクタ・ステレオ」。いわゆる疑似ステレオで、光学式サウンドトラックの中に専用の信号を埋め込み、対応機器で再生することで、一般的な劇場でスクリーン裏に設置されているフロントスピーカー、左・中央・右に対して、音量を振り分けることができ、映像(出演者)に、発話(発音)する声の位置を合わすことが可能なシステムとなる。今回、そのパースペクタ・ステレオ用の信号を読み出すことができたために、当時の仕様が再現できた、ということだ。

画像2: ファン垂涎の『地球防衛軍』が、超絶美麗な映像となって「午前十時の映画祭13」にて、8月4日より上映開始

 作品を観ると分かるのだが、映像のアスペクト比は東宝スコープ(≒シネマスコープ)で横長となり、出演者が横に並んで話すシーンが多く設定されている。おそらくは、あらかじめ東宝スコープ&パースペクタ・ステレオで上映することが決まっていたために、逆に撮影時の構図も、それを最大限活かすものになったのだろうと思われる。車の中や会議室での会話シーンなど、一見、不自然に見える横並びも(笑)、実際に再現されたパースペクタ・ステレオ(上映は3.0ch。サラウンドとウーファーchはなし)で観ると、映像と音声(発話)の一致が味わえ、3次元的な立体音響が全盛のいまの人間から見ても、効果的な演出を楽しむことができた。同時に、限られた資源の中でも、観客を楽しませようとして実現したそのシステムに、先人たちの偉大さを改めて感じた次第だ。

午前十時の映画祭13 『地球防衛軍』上映スケジュール

『地球防衛軍』
監督:本多猪四郎
出演:佐原健二、平田昭彦、白川由美、土屋嘉男 ほか
1957年/カラー/88分
(C)1957東宝

【グループA】8月4日(金)~8月17日(木)
【グループB】8月18日(金)~8月31日(木)
※上映開始時間は午前10時以外の場合もあり
※上映スケジュールの変更・休止などがある場合もあり
※上映開始時間と料金は各劇場に確認のこと

This article is a sponsored article by
''.