『リベリアの白い血』『アイヌモシリ』の福永壮志監督の最新作『山女』が、6月30日(金)より全国順次公開を迎えます。柳田國男の名著「遠野物語」に着想を得た本作は、18世紀末の寒村を舞台に、過酷な運命に翻弄される17歳の凛(りん)の生き様を描いたオリジナルストーリー。昨年の東京国際映画祭コンペ部門での上映を皮切りに、香港国際映画祭、ドイツ・フランクリンで行われるニッポン・コネクション、ニューヨーク・アジアン映画祭、カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭への出品も決定し、海外からも注目を集めています。

 この度、主演・山田杏奈と出演・森山未來、そして福永壮志監督が登壇する凱旋イベントが6月21日にアキバシアターで開催されました。

 人々から蔑まれながらも逞しく生きる主人公・凛を等身大で体現する山田さんは、凛の運命を大きく動かすキーパーソン“山男”役で人間ならざる存在感を見せつけている森山さんを見て「トトロのよう」と感じていたそう。今回のイベントでは、日本での劇場公開に先駆けて、貧困や差別など今の時代に繋がるテーマが描かれた本作への思いや、撮影中のエピソードなどをお話しいただく機会となりました。
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 18世紀末の東北の寒村で、17歳の凛は身分と性別を理由に人々に蔑まれながらも逞しく生きている。とある事件を機に、村を自ら去り、禁じられた山へ足を踏み入れる凛。そこで、伝説の存在として恐れられる“山男”と出会い、凛の運命が大きく動き出すーー。

 柳田國男の名著「遠野物語」に着想を得た本作。制作の経緯を尋ねられた福永監督は、「『遠野物語』を読んだ時に、当時、生きていた人たちが自然に対して抱いていた畏怖の念や、どういうことを心の支えに生きていたのか、そしてムラ社会のあり方のようなものが現代にも通じる日本人の源流のようなものに感じられ、それを映画化することで掘り下げたいというのが最初にありました。そんな思いのなかで脚本を書いていくうちに、現代に通じる問題を盛り込んでいきました」と述懐。

 運命に翻弄(ほんろう)される主人公・凛を演じた山田は、自身の役どころについて「想像もできないくらい、いろんなものを背負っている女性。生まれた環境からしてすでに、自分で解決しないといけないことがたくさんあって、でもそれを当たり前として生きているので、たくましい女性」だと感じたと説明。自身との共通点を「やってやるぞ精神はある気がします。わたしはよく気が強いと言われますけど、そういうところは凛の強さに通じるのかな」と照れながら語った。

 主演に初めてプロの役者を起用した福永監督は、そんな山田の魅力について「凛はものすごく重たいものを背負っているキャラクターですが、その中でもなんとか生きていけそうな、ひょうひょうとしたところがある。(山田は)気が強いというよりは、すごくマイペースで、迎合しない感じがある。それは物語もそうだし、観客を引っ張っていく力でもあり、だからこそこの設定の中で生きていくことができる」と称賛。

 一方、凛の運命を大きく左右させるキーパーソン“山男”役で、人間ならざる存在感を見せつけた森山は、出演の決め手を訊かれると、「もともと日本の神話や伝承、民話に興味があって。それは一見フィクションのように語り継がれているけれども、そこには元の何かがあるからこそ紡がれている。それは『遠野物語』も然り」と切り出し、「“山男”という、現実なのかフィクションなのか分からない存在をやってみたいという思いも同時にありました。それと福永さんの過去作を観たときに、この視点で、この作品を紡ぐ人とやってみたいと思ったのがモチベーションです」と明かした。

 また、その役づくりについては、「山の奥地で生きている人たちについて、この映画では“山男”という言い方ですが、場所場所によって、いろんな呼ばれ方をされているんですよね。それを自分でも調べていたからこそ、果たして僕なのだろうかという率直な問いを福永さんに投げて、そこから一緒にディスカッションをしながら、ここに生きる“山男”はどういう存在なんだろうと。ただ神格化された存在でなく、どういう出で立ちで、どういう居住まいなのか、といったことを話し合いながらつくりあげました」と解説。

 そんな森山が演じた“山男”を「セリフもない役なので、身体表現がまず必要になってくる。それだけでなく、神秘的なことや、生と死という、大きなテーマにもとから興味があって、探究心がある人じゃないと、追いつかない部分があると思う」と語る福永監督は、森山について「もともと下地がある方だと思っていましたし、一緒にやってみて、やはり“山男”の造形やバックストーリーを一緒につくりあげることができて、本当にお願いして良かった。森山さん以外だったら難しかったんじゃないかと思う」と太鼓判。
 森山の“山男”を一番身近で対峙してきた山田は「台本に“山男“と書かれていて、どういう風にやるんだろうと思っていたんですが、現場で歩いている姿や、呼吸をしているところを初めて見て、まるでトトロに出会ってしまったみたいな。大きい動物に会ったような説得力を感じました」と思い出し笑い浮かべながら述懐。“トトロ“に例えられた森山は「まあ…そう、なのかもしれない…ジブリじゃない”トトロ“で考えるとそういう精霊的な意味でも…ってことじゃないとは思うんですけど(笑)」と山田の意外な例えに困惑しながらも笑顔で答え「最初の出会いのシーンが衝撃的ですからね」と山田と二人で何かを食べるジェスチャーをして息のあった様子を披露した。

 その後も撮影中のエピソードやロケーションの魅力で話は盛り上がりを見せた3人。最後に、観客に向けて福永監督が「映画にはつらくなるようなシーンもありますけど、そういうことが描きたかったのではなく、それに屈しない強さ、たくましさを描きたかった。観た人の心に何かが残れば幸いです」と呼びかけると、続けて「『遠野物語』を下敷きにした物語ということで、フィクションのように受け止められることもあると思いますが、なぜ2023年にこの作品が上映されるのか。社会のあり方、人との関係性など、今に通じるものがたくさんあるので、そんなことを感じ取っていただけたら」と森山。そして、山田が「わたし自身は凛という、ひとりの女性の人生をたどりたいと思い演じましたが、皆さんの言う通り、今の時代背景にも通じるものがあります。凛という女性と一緒に、いろんな見方をしてくれたらうれしいです」とメッセージを送り、イベントを締めくくった。

映画『山女』

6月30日(金)より全国順次公開

【STORY】
この山でわたしは人間になれたーー
18世紀後半、東北。冷害による食糧難に苦しむ村で、人々から蔑まされながらも逞しく生きる凛。彼女の心の救いは、盗人の女神様が宿ると言われる早池峰山だった。ある日、凛の父親・伊兵衛が村中を揺るがす事件を起こす。家を守るため、村人達から責められる父をかばい、凛は自ら村を去る。決して越えてはいけないと言い伝えられる山神様の祠を越え、山の奥深くへと進む凛。狼達から逃げる凛の前に現れたのは、化け物なのか人間なのかもわからぬ不思議な存在であった…。

山田杏奈
森山未來 二ノ宮隆太郎 三浦透子 山中崇 川瀬陽太 赤堀雅秋 白川和子 品川徹 でんでん 永瀬正敏

監督:福永壮志
プロデューサー:エリック・ニアリ 三宅はるえ 家冨未央|脚本:福永壮志 長田育恵 撮影:ダニエル・サティノフ|照明:宮西孝明|美術:寒河江陽子|録音:西山徹 整音:チェ・ソンロク|編集:クリストファー・マコト・ヨギ|音楽:アレックス・チャン・ハンタイ 装飾:柴田博英|衣装:宮本まさ江|メイク:金森恵|かつら:荒井孝治|特殊メイクデザイン:百武朋|VFXスーパーバイザー:オダイッセイ
助監督:北川博康|制作担当:大村昌史|エグゼクティブプロデューサー:安田慎 中林千賀子 白田正樹|プロデューサー:白田尋晞 制作プロダクション:シネリック・クリエイティブ ブースタープロジェクト|国際共同制作:NHK|制作協力:CLIP PICTURES LA 製作:「山女」製作委員会|助成:文化庁文化芸術振興費補助金(国際共同製作映画)|配給:アニモプロデュース|配給協力:FLICKK
2022年/日本・アメリカ/98分/カラー/シネマスコープ/5.1ch
(C)YAMAONNA FILM COMMITTEE

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