NHKは、本日6月12日(月)から14日(水)までの三日間、渋谷のNHK放送センター 正面玄関ロビーにて、各地の放送局の現場が、アイデアと工夫を凝らして開発した最新技術を展示・紹介する「NHK Tech EXPO 2023」を開催中だ。

 これは昨年まで「NHK番組技術展」として開催されていたもので、今年から装いも新たに、最新技術・機器の展示に加え、コンテンツ・サービス・DXなどへ向け、Tech(技術)を活かした取り組みを紹介する、ということで、Tech EXPOへと改称された。

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 今年の展示は、大きく4つ――「コンテンツ制作」「視聴者サービス体験」「放送確保・安定送出」「環境経営」という4つのカテゴリーが設けられ、その中に計24のブースが展開されている。ここでは、編集部が気になった展示を紹介したい。

(7)フォーカスアシストコントローラ

画像: ▲写真中央の円筒形のものがピントを合わせたい物体を指定する機器。画面で赤い楕円マークが付いたものにピントが合っている

▲写真中央の円筒形のものがピントを合わせたい物体を指定する機器。画面で赤い楕円マークが付いたものにピントが合っている

 4K/8K用のカメラになると、映像が高精細なだけに、ピント合わせはよりシビアになるし、外れてしまうと、せっかくの高画質が活かせなくなる。ということでカメラマンはこれまで以上にピント合わせに苦労しているそうで、それを軽減するために開発されたのがこのシステム。レンズの上にデプス(距離)センサーを装着し、物体検知AIと組み合わせて被写体を検知。カメラマンはカメラに追加された機器(上の写真)を使って、ピントを合わせたい物体・被写体を選択すると、上記距離センサーの結果と照合しながら、素早く指定の被写体にピントを合わせてくれる、というもの。機材を小型化し、カメラに内蔵するのが、最終目標という。

画像: ▲レンズの上に設置されている距離センサー

▲レンズの上に設置されている距離センサー

(8)クレーンカメラ用防寒カバー

画像: ▲クレーンカメラの、カメラを載せる雲台アーム部に、アームカバーの要領で着ける

▲クレーンカメラの、カメラを載せる雲台アーム部に、アームカバーの要領で着ける

 説明タイトル通りの展示。北海道のような寒い地域では、冬の屋外はマイナス20度近くまで気温は下がるそうで、そうするとアーム部のモーターが寒さのために動きが悪くなるそう。それを解消するためのカバーとなる。セラミックヒーターを内蔵している。北海道のアウトドア用品店・秀岳荘との共同開発になるそうだ。防水性能も持っている。

(9)ロケット打ち上げ撮影用マルチカメラシステム

画像: ▲下4台がマルチカメラシステム。上の1台は予備

▲下4台がマルチカメラシステム。上の1台は予備

 ロケットの打ち上げを撮影するためのマルチカメラシステム。6Kカメラを4台組み合わせることで、最終的に8K映像の切り出しが可能になるという。向きは固定で、打ち上がっていくロケットの追尾はせず、画面の切り出しで対応する。

(10)超高効率大出力LEDライト

画像: ▲ワンオフの試作機

▲ワンオフの試作機

 ドラマの撮影で使われるような大型照明は、1台あたり10kWもの電力を使うそうで、スタジオにはそれが6、7台も設置されているという。そこで、より効率のいい=電力の少ない照明が求められて開発されたのが、このLEDライトになる。展示してあったのは試作機で、この1台のみのワンオフモデルになるそう。内部には水冷式の強力な冷却システムが組み込まれていて、そのお陰でLEDの能力を遺憾なく発揮、従来のハロゲン式と同じ照明能力を持ちながらも、電力は1200Wなので、一般家庭のコンセントに挿して使うことができるのだとか。

(11)映像用リアルタイムノイズリダクション

画像: ▲ノイズリダクション用回路

▲ノイズリダクション用回路

 夜間映像など、光量不足によって現れるノイズを効率的に取り除く回路(FPGA)の展示。米国デイトン大学との共同研究となるそう。仕組みとしては、映像に含まれる(発生する)ノイズを解析して、そのノイズのみを効率的に除去できるといい、従来ノイズ抑制のために行なっていたスローシャッターにするなどの対策が不要となる。具体的には、カメラごと(センサーごと?)の特性を測定するそうで、カメラメーカー(センサーメーカー)がこの仕組みを取り入れれば、暗所でのクリアな映像が、より簡便に確保できるようになるだろう。

画像: ▲リアルタイム処理した作例

▲リアルタイム処理した作例

(19)ラジオ自動音声発生システム

画像: ▲気象庁からの電文を元にして、アナウンサーの声で発声させるコメントが作れる。手入力のコメントの発声もOKという

▲気象庁からの電文を元にして、アナウンサーの声で発声させるコメントが作れる。手入力のコメントの発声もOKという

 ラジオ局では夜間など、テレビ局と違ってアナウンサー(局アナ)が不在の時間があるそうで、そういった時間に災害が起きた場合、“聞きなれたアナウンサーの声”で防災情報を発信するためのシステム。予め、アナウンサーの声のレパートリー(日時、災害内容、行動指示などを話しているところ)を録音しておき、専用ソフト(ノートPCに入る)に発信したいコメントを入力すると、録音レパートリーの中から言葉を選び・組み合わせて、あたかもお馴染みのアナウンサーが話しているように、防災情報を放送できる、というものだ。気象庁からの電文を基にしてコメントを作ることができるそう。AI音声ではだめなの? と聞くと、聞きなれたアナウンサーの声で聞けるところがいいですよね、という返事。

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